プロローグ2
午後の最後の授業の終わりを告げるチャイムが教室に鳴り響くと、立ち上がって伸びをする者や部活着に着替える者、皆様々な動きを見せる。
帰りのホームルームはざわざわとしていて担任が話を聞けと注意をしても静かになる様子は一向にない。
[早く帰りたいんだよな、静かにしてくれないかな。]と心の中で念じるがそれと裏腹に教室内は生徒の喋る声と担任の注意で不協和音を奏でている。
「金曜だから部活ない組は明日、明後日と遊ぶらしいから皆予定をたててるみたい。」
千紗が俺の表情を読み取ったのか説明してくる。
「頼むからホームルームが終わった後にしてほしいね」
と返しておいた。
「まったくだね」
と千紗が言ったときに、担任が静かにならかい生徒にしびれを切らせたのか強引に号令をしてホームルームを終わらせた。
俺と千紗は一目散に昇降口に向かいローファーに履き替えて
「やっと一週間終わったよ。今日も疲れたわ」
「明日はゆっくり寝れそうだね」
「そうするよ」
と週末トークをして別れた。
しかも今日は一段と疲れた。
なぜならずっと見られてた気がするからだ。
今も視線を感じている。もう慣れ始めてはいるが。
校門を出て家まで歩きだす。
人の流れは大きい。家に近づくほどその流れは小さくなっていく。小さくなればなるほど違和感は大きくなっていった。
そして帰り道での最後の信号で視線を感じなくなった。それに気づいて意識が信号からそれていた。そのせいで運悪く信号が赤になってしまった。
「ツイてな」
と言った瞬間、女の子が目の前で赤信号を渡ろうとした。
すぐそこにはバスがこっちに向かって走ってきた。
「え!! ヤバ……」
まだ間に合うと思って彼女の手を力いっぱい引いた。
間一髪のところであわや大惨事を逃れることができた。
寿命が10年くらい縮まった気がした
手を引いた勢いで彼女が振り返って倒れて込んできた。
俺も勢い余ってしりもちをついた。心臓はバクバクいって破裂しそうだ。
丁度その子が俺に覆い被さる形になった。
彼女は笑みを浮かべながら
「やっぱり」
とつぶやいた
「な、何が?」
と動悸を抑えられないまま聞くと
「やっぱり助けてくれた」
彼女は俺の腰に手を回して胸に頬をうずめながら、あたかも俺が助けることがわかっていたかのようにその言葉を発した。
そして
「助けてもらちゃったし、お礼しなきゃね。あなたのおうちに連れて行って」
と言って今度は俺の顔を覗きこんで満面の笑顔を見せた。
状況をまったく読みこめないまましばらく間、時が止まったように動けなかった。