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第12話 ステラの装備

メリルから特秘依頼を受けた俺たちは、廃砦へ向かう前に辺境都市ランカの武具店へ立ち寄った。

まずは武装した魔物の軍勢に挑むための、最低限の準備だ。

特に急務なのは、ステラの魔法を補助するための杖だった。全属性の暴走を少しでも抑え込み、威力をコントロールするためには、魔力の通り道となる触媒が必要になる。


「うわあ……辺境の街なのに、色々な武具があるんだね」


ステラが物珍しそうに店内を見渡す。

俺にはテオが打った黒狼があるし、テオ自身も自作の魔道具を多数隠し持っている。今日の目的はステラの装備選びだ。


「ステラちゃん、好きなのを選んでいいよ」

テオに促され、ステラは杖のコーナーを見て回る。


ふと、彼女の足がピタリと止まった。

店の一番奥、頑丈なガラスケースの中に飾られた一本の杖。純白の滑らかな木材に、先端には六色の光を微かに放つ透明度の高い宝玉が埋め込まれている。


「……きれい。全属性に対応した宝玉石に、世界樹の枝の端材かな……」


ステラがケースにへばりつくようにして見入っている。彼女の膨大な魔力と全属性を同時に受け止めるには、まさに理想的な杖だろう。


「お目が高いね、お嬢ちゃん。それは王都の没落貴族が持ち込んだ業物だ。辺境じゃオーバースペックすぎてずっと埃を被ってるがね」

奥から顔を出した店主が、自慢げに声をかけてきた。


「テオくん、これ、いくらくらいするのかな」

ステラが尋ねると、テオは値札を確認し、ケラケラと笑った。


「白金貨五十枚だって。昨日のゴブリン討伐を、あと千回くらいやらないと買えない額だね。今の僕たちには逆立ちしても無理だ」


その言葉に、ステラは「だよねー」とあっさり苦笑いをして、ガラスケースから離れた。


「流石に高すぎるし、今の私が使ったら宝玉ごと爆発させちゃいそうだから、もっと普通のでいいや」


彼女は入り口付近にあった安価な杖の山から、装飾のない素朴な樫の木の杖を引き抜いた。

先端に小さな魔石がついているだけの、新米魔法使いが使う一番ありふれた杖だ。


「私、とりあえずこれで十分。練習用にはこれくらい軽くてシンプルな方がいいしね」

「まあ、最初はそんなもんだろ。店主、その樫の杖をもらう」


俺が銀貨を数枚支払うと、ステラは嬉しそうに素朴な杖を握りしめた。

本当にただそれだけの、ありふれた買い物の光景。

だが、その時、俺とテオの視線が一瞬だけ交差した。

言葉は交わさない。ただ、互いの目を見て小さく頷き合っただけだ。


装備の調達を終えた俺たちは、店主に見送られて武具店を後にした。

向かう先は、街の北にある放棄された廃砦。

王都の陰謀と、武装した魔物の軍勢が待ち受ける特秘依頼の始まりだ。


俺は魔導車に乗り込みながら、これから出会うであろう大量の的に思いを馳せ、静かに魔力を練り上げ始めた。

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