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第11話 特秘依頼

昨夜の宴会の余韻が少し残る早朝。

辺境のあばら家に、冒険者ギルドからの使いがやってきた。昨日の受付嬢が、ひどく強張った顔で一枚の羊皮紙を差し出してきたのだ。


ギルドマスターからの直接の呼び出しだった。


俺たちは身支度を整え、足早に辺境都市ランカのギルドへと向かった。

まだ開館前の薄暗いギルドの奥、厳重な扉の向こうの執務室で、メリルは険しい顔をして巨大な地図を睨みつけていた。

口には大きなキャンディを咥えているが、その小さな体から発せられる魔力の圧は昨日よりも重い。


「よく来たね、ガキども。さっそく本題に入るよ。」

メリルは地図の一点を小さな指でトントンと叩いた。


「昨日お前たちが持ち帰った王都の武器の件だ。ギルドの暗部を使って徹夜で調べさせた結果、ひどくきな臭い事実が浮かび上がった。」


メリルが顎で促すと、テオが地図を覗き込んだ。


「王都からこの辺境へ至る主要な街道……ここ数ヶ月、王都の鍛冶ギルドから大量の武具が定期的に買い上げられている記録があった。だが、奇妙なことに買い手の商会の名前が毎回違うんだ。」


テオが商人としての鋭い目を細め、言葉を継いだ。


「なるほど。資金の出所と武器の流通経路を隠すための、典型的なダミー商会ですね。」


「ああ。しかも調べを進めると、それらの商会はすべて最近設立されたばかりで、実態のないペーパーカンパニー、いわゆる特定の取引だけを目的としたダミー会社だった。」


メリルとテオの会話に、ステラが不安そうに首を傾げる。


「えっと、つまりどういうことなの?」


「王都の力を持った誰か……おそらくは高位の貴族が、自分とは全く関係のない会社をいくつも経由させて、辺境の魔物たちにこっそり武器を横流ししているってことさ。バレた時のトカゲの尻尾切りも完璧に用意してね。」


テオの解説に、メリルが感心したように鼻を鳴らした。


「その通りだ、商人見習い。ただの武器の横流しじゃない。辺境の魔物を意図的に武装させ、軍事拠点を作ろうとしている大馬鹿野郎が王都にいる。」


俺は黙って話を聞いていた。

王都の貴族。魔物の武装化。

もし俺を追放した父や、ガルス兄が関わっているのだとしたら、随分と回りくどいことをするものだ。魔法至上主義のあいつらが、なぜわざわざ物理的な武器を集めて魔物に持たせているのかは謎だが。


「それで、俺たちを呼んだ理由はなんだ。」

俺が尋ねると、メリルは地図のバツ印がつけられた場所を指差した。


「ダミー商会の馬車が向かった最終地点が割れた。この街から北にある、数十年前に放棄された廃砦だ。おそらくそこが、武装した魔物たちの拠点であり、武器の貯蔵庫になっている。」

討伐依頼、ということか。


「ああ。これはギルドの特秘依頼だ。王都の貴族が絡んでいる以上、正規の討伐隊や騎士団は動かせない。上層部に内通者がいる可能性が高いからね。だが、この街の連中じゃ手に余る。」


メリルはキャンディをガリッと噛み砕き、俺を真っ直ぐに見上げた。


「お前ならやれるだろ。あの鋼の鎧を着たホブゴブリンを、木の枝一本で即死させた異常な腕力があるならね。」

俺は腰の黒狼にそっと手を触れた。

テオが作ってくれた最高の剣。その真価を試すには、ただのゴブリンでは物足りなかったのだ。

武装した魔物の軍勢。そして、その後ろにいるかもしれない王都の陰謀。

これほどやりがいのある的は、辺境ではそうそう見つからない。


「いいだろう。引き受ける。」

俺が即答すると、テオがやれやれと肩をすくめ、ステラが小さく両手を握りしめて頷いた。


「報酬は弾むよ。ただし、くれぐれも死ぬんじゃないよ。お前たちみたいな面白い連中が消えるのは、この街にとっても損失だからね。」


「心配ない。相手がどんな軍勢だろうと、俺が全部斬る。」


メリルとの密約を交わし、俺たちは執務室を後にした。

廃砦に巣食う武装魔物の軍団との激突が、静かに迫っていた。

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