第38話:『もっと私に印をつけて』莉奈の願い。消えない所有の証(タトゥー)を刻む(※もう二度とカタギには戻れません)
外での「ゴミ掃除」を終え、俺はタワーマンションの最上階にある自室へと戻った。 重厚なドアを開けると、広いリビングで待っていた妹の莉奈が、即座にその場に平伏した。
「おかえりなさいませ……ご主人様」
薄いネグリジェ姿の莉奈の首には、俺が以前買い与えた革製の首輪が巻かれている。 かつて俺を「汚物」扱いしていた彼女だが、今ではこの首輪を「宝物」のように大切にし、家の中でも片時も外そうとしない。
「……ただいま。準備はできているようだな」
俺はソファに腰を下ろしながら、冷ややかに告げた。 帰宅直前、莉奈から届いたメッセージ――『私に印を刻んで』。 その意味を問うまでもない。テーブルの上には、通販で購入させたタトゥーマシンとインクが、儀式のように並べられていた。
「はい。……お風呂で身体を清めて、ずっと待っていました」
莉奈は膝行して近づき、俺の革靴を脱がせながら、上気した瞳で俺を見上げる。 そこには恐怖などない。あるのは、これから施される「不可逆の所有」への期待と興奮だけだ。
「この首輪だけじゃ……もう我慢できないんです」
莉奈は震える手で、自身の首元のベルトに触れた。
「首輪は……外そうと思えば、外せてしまいますから。私、怖いんです。いつかご主人様が私に飽きて、これを外して『出ていけ』って言うんじゃないかって……」
彼女はネグリジェの胸元を寛げ、白く華奢な鎖骨を露わにした。
「だから、お願いです。……私に『一生消えない印』を刻んでください」
懇願するその目は、完全に理性を失っていた。
「服を着ても、お風呂に入っても、死んでも消えない『ゼウス様の所有物』だっていう証拠が欲しいの。……そうすれば、私はもう二度と他の誰のものにもなれないし、カタギの世界にも戻れない。誰が見ても『奴隷』だと分かるようにしてください」
狂っている。 だが、それこそが俺の求めていた「完全なる屈服」だ。 かつて俺の尊厳を踏みにじった妹が、自ら人間としての未来を捨て、モノとしての幸福を乞い願っている。
「……後戻りはできないぞ。これを入れたら、就職も、結婚も、普通の幸せな人生も、全部ドブに捨てることになる」
俺があえて確認すると、莉奈は恍惚とした表情で首を振った。
「いりません! ご主人様に捨てられる可能性があるなら、普通の未来なんていらない!」
その覚悟を確認し、俺はタトゥーマシンを手に取った。 重みのあるグリップ。針先が鈍く光る。
「いいだろう。……望み通り、たっぷり刻んでやる」
「はい……っ! ありがとうございます……!」
俺は莉奈をソファに仰向けに寝かせた。 白い肌。脈打つ喉元。そこに容赦なく針先を当てる。
ジジジジジ……!
機械的な振動音と共に、針が皮膚を突き破り、真皮にインクを流し込んでいく。
「あぐっ……! んぅッ……!」
莉奈が痛みに身体を跳ねさせるが、逃げようとはしない。 むしろ、痛みと共に刻まれる「束縛」を噛み締めるように、快楽に満ちた表情で俺を見つめ続けている。
インクが滲み、鮮血が少しだけ浮かぶ。 俺が刻んでいるのは、デザインされた『ZEUS』のロゴと、商品管理用の『バーコード』だ。 もはや人間ではない。 彼女は、俺の「所有物」として管理される存在へと、物理的にも堕ちていく。
「はぁ……はぁ……ご主人様、痛い……痛いよぉ……♡」
「動くな。線が歪む」
「ごめんなさい……もっと、もっと深く所有って……♡」
一時間後。 莉奈の胸元には、黒々とした刻印が完成していた。 一生消えることのない、隷属の証。 首輪と違い、これは死ぬまで彼女の体から離れることはない。
「……できたぞ」
俺が告げると、莉奈はふらつく足取りで鏡の前に立った。 そして、赤く腫れ上がったその刻印を見て――とろけるような笑顔を浮かべた。
「あぁ……すごい……。私、本当にご主人様のモノになったんだ……」
莉奈は鏡の中の刻印に口づけを送るように、指で愛おしそうになぞる。
「見て、ご主人様。私、もうお嫁に行けないね。……一生、ご主人様の玩具だね」
「ああ、そうだな。お前は一生、俺の『信者』であり『奴隷』だ」
「嬉しい……! 愛してる、ゼウス様……!」
莉奈は俺の足元に崩れ落ち、靴のつま先に頬ずりをした。 これで、個人的な復讐と支配はすべて完了した。
会社を潰し、裏切り者を断罪し、妹をペットにした。 だが、俺の野望はこれで終わりではない。 このタワーマンションの一室で妹を飼う程度で満足する俺ではない。
「……さて」
俺は窓の外、煌びやかな東京の夜景を見下ろした。 会社を社会的に抹殺し、数億の資産を動かす俺の影響力は、今や一つの企業を揺るがすレベルを超えている。 世論、経済、そして政治。 すべてを動かす力が、今の俺にはある。
「次は、この国そのものを『ゼウス色』に染め上げてやるとするか」
俺は不敵に笑い、次なるステージ――世界征服へと意識を向けた。




