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第34話:親戚襲来。「お前は一族の誇りだ」と擦り寄る叔父夫婦。葬儀の時に俺を見捨てたの、忘れたか?(※絶縁&社会的抹殺)

いじめの主犯格・鮫島を海外へ追放してから数日後。 俺のオフィス(タワーマンションの一室を改装したスタジオ兼事務所)のインターホンが、執拗に鳴らされた。


かけるくん! いるんでしょ!? 開けてちょうだい!」 「翔くん! 叔父さんだぞ! 大事な話があるんだ!」


モニターに映っているのは、中年男女の二人組。 亡き父の弟である叔父・健二けんじと、その妻の淑子よしこだ。


「……チッ、嗅ぎつけるのが早いな」


俺は舌打ちをした。 俺が『帝都商事』の筆頭株主になったニュースや、配信者『ゼウス』としての成功が広まったことで、ハイエナのように寄ってきたのだろう。


「莉奈。客だ。お茶を出せ」


「は、はい……」


莉奈の顔色が悪い。 彼女にとって、この叔父夫婦はトラウマの一種だ。 両親が事故で亡くなった時、遺産だけをハイエナのように持ち去り、借金の残った俺たち兄妹を「疫病神」と罵って追い出した張本人だからだ。


「おお、翔くん! 久しぶりだねぇ!」 「立派になって……! おばさん、涙が出ちゃうわ!」


応接ソファに座るなり、二人は猫なで声で擦り寄ってきた。 服装こそ小綺麗にしているが、その目は欲望でギラギラと濁っている。


「単刀直入に聞きますが、何の用ですか?」


俺が冷たく問うと、叔父は揉み手をしながら言った。


「いやぁ、水臭いなぁ! 親戚が可愛い甥っ子の成功を祝いに来ただけだよ!  聞いたぞ? 大会社のオーナーになったんだって? 配信でも稼いでるらしいじゃないか!」


「おばさんね、鼻が高いのよ! 近所の人にも自慢してるの。『あれはウチが手塩にかけて育てた子だ』って!」


「……育てた?」


俺は失笑した。


「俺の記憶が確かなら、両親の葬式の時、あんたたちはこう言いましたよね。  『金のないガキなんて引き取れるか』『施設にでも行け』と。  香典とわずかな遺産だけ持ち逃げして、俺たちを路頭に迷わせたのを忘れたんですか?」


空気が凍りつく。 だが、叔母は厚顔無恥にも笑ってごまかした。


「やだわぁ、昔のことじゃない! あれは『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』っていう愛の鞭よ!  そのおかげで、翔くんはこんなに立派になれたんじゃない!」


「そうそう! 結果オーライだろ? ……で、だ。翔くん」


叔父が身を乗り出し、本題を切り出した。


「実はお前の従兄弟いとこのタカシなんだが、事業に失敗してな……借金が5000万ほどあるんだ。  大成功した翔くんにとっては端金はしたがねだろ? 『育ての親』への恩返しだと思って、肩代わりしてくれないか?」


やはり金か。 育ててもいない恩を売りつけ、金の無心。予想通りのクズっぷりだ。


「……なるほど。家族の情、というわけですね」


「そう! 家族は助け合わないとな!」


叔父がニヤリと笑う。 俺はコーヒーを一口飲み、静かに言った。


「分かりました。助け合いましょう」


「おお! さすが翔くん! 話が分かる!」


「ですが、その前に一つ、解決しなければならない問題があります」


俺は指を鳴らした。 控えていた莉奈が、一枚の書類を持って震えながら前に進み出る。


「あ? なんだ莉奈か。……フン、相変わらず陰気な顔しやがって」


叔父が莉奈を一瞥し、鼻で笑った。 彼らにとって莉奈は「金にならないゴミ」でしかない。


「叔父さん、叔母さん。そこにいる莉奈ですが……現在、俺に対して多額の『損害賠償』を抱えています」


「は? 賠償?」


「彼女は俺の名前を勝手に使って詐欺を働き、俺の会社に損害を与えました。その額……5億円です」


俺は嘘の(しかし法的効力のある形式で作った)借用書を提示した。


「ご、5億ぅ!?」


二人が素っ頓狂な声を上げてのけぞる。


「現在、彼女は俺の使用人として働いて返済していますが、これでは一生かかっても返しきれません。  そこで相談です」


俺はニッコリと微笑み、二人に迫った。


「あなた方は『家族』ですよね? 『助け合い』がモットーでしたよね?  どうでしょう、莉奈を引き取って、この5億円の連帯保証人になっていただけませんか?」


「は……?」


「5000万なんてケチなこと言わず、可愛い姪っ子の5億を背負ってあげてください。そうすれば、俺は莉奈を解放しますし、タカシくんの借金の件も考えてやりますよ」


俺の提案に、叔父夫婦の顔色が青を通り越して白くなった。


「ふ、ふざけるな! なんで俺たちがそんな大金を!」 「そうよ! その子は昔から嘘つきで、疫病神だったじゃない! 勝手に借金作ったなら、勝手に野垂れ死ねばいいのよ!」


叔母がヒステリックに叫び、莉奈を指差した。


「翔くん! こんなクズ、今すぐ追い出しなさい! 縁を切りなさいよ!  私たちのような『まともな親戚』とだけ付き合うべきよ!」


その言葉を聞いた瞬間、莉奈の肩がビクンと跳ねた。 彼女は絶望の表情で、叔父夫婦を見つめていた。


(ああ、やっぱり……)


莉奈の中で、最後の甘えが消え失せた。 血の繋がった親戚ですら、自分を「疫病神」「クズ」と呼び、見捨てるのだ。 この世界で、自分を置いてくれているのは、目の前の「ご主人様()」だけなのだ。


俺は満足げに頷き、叔父夫婦に冷たい視線を戻した。


「……聞こえたか、莉奈。それが『世間の評価』だ」


「……はい、ご主人様」


「叔父さん。あんたたちの本性はよく分かった。  金が欲しいならくれてやるよ。……ただし、『手切れ金』としてな」


俺は財布から1万円札を一枚抜き取り、ヒラヒラと床に落とした。


「今のあんたたちには、これがお似合いだ。拾って帰れ」


「なっ……バカにするな!」


叔父が激昂し、顔を真っ赤にした。


「ふざけんなよ翔! 誰に向かって口きいてんだ! 年長者を敬え!」 「そうよ! ちょっと金持ったからって調子に乗んじゃないわよ!」


金にならぬと悟った瞬間、これだ。 もう「翔くん」と媚びる余裕すらなくなっているらしい。


「拾わないなら、それもなしだ。……不法侵入で警備員を呼ぶぞ?」


俺がインターホンに手を伸ばすと、叔父は「チッ!」と舌打ちをし、慌てて床の1万円札をひったくった。


「く、くそっ……! 覚えてろよガキが!」 「人でなし! 冷血漢!」


捨て台詞を吐いて、二人は逃げるように去っていった。 5000万の無心に来て、たった1万円を拾って帰る惨めな背中。 二度と俺たちの前に現れることはないだろう。


静まり返った部屋で、莉奈がポツリと言った。


「……私、本当に一人ぼっちなんですね」


「違うな」


俺は莉奈の顎を持ち上げ、その虚ろな瞳を覗き込んだ。


「お前には俺がいる。……借金を返し、俺のペットである限り、ここがお前の居場所だ」


「……あ……」


莉奈の瞳に、暗い光が宿る。 それは、依存と執着の光だ。


「はい……ありがとうございます……ご主人様……。私を捨てないで……」


莉奈は俺の足に縋り付き、安堵の涙を流した。 親族にすら見捨てられた彼女にとって、俺という「支配者」だけが、唯一の世界になったのだ。

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