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第27話: 奴隷生活1日目。俺の世話をしながら、裏方として馬車馬のように働く元・妹(※24時間労働です)

「……朝だぞ。起きろ、奴隷」


冷徹な声と、ドアを蹴る音で目が覚めた。 莉奈は狭い納戸の中で、段ボールにまみれて飛び起きた。


「は、はいっ! おはようございますっ!」


スマホの時計を見ると、朝の6時。 昨晩言いつけられたリビングの雑巾掛けが終わったのが4時だから、睡眠時間は2時間もない。 身体中が軋むように痛いし、自慢のネイルはボロボロに剥がれている。


「遅い。コーヒーを淹れろ。豆から挽けよ」


「は、はい……ただいま……」


莉奈は重い身体を引きずり、メイド服のスカートを翻してキッチンへ走った。 かつては昼過ぎまで寝ていて、兄に「ご飯まだ?」と文句を言っていた自分が、今は早朝からこき使われている。


(眠い……帰りたい……)


だが、帰る場所はない。 ここを追い出されれば、待っているのは冷たい鉄格子の部屋だ。


「ぬるい」


リビングのソファで優雅にニュースを見ていた俺は、莉奈が淹れたコーヒーを一口飲み、眉をひそめた。


「淹れ直せ」


「えっ……でも、ちゃんとマニュアル通りに……」


「口答えするのか? 時給下げるぞ」


「す、すみません! すぐ淹れ直します!」


莉奈は顔面蒼白になり、カップをひったくってキッチンへ戻っていった。 俺はその背中を見ながら、鼻で笑った。 かつて俺が仕事で疲れて帰ってきた時、彼女は「お兄ちゃんの足音がうるさい」と文句を言った。 その程度の理不尽など、これからの彼女には『当たり前の日常』になるのだ。


午前中は、地獄の家事ラッシュだ。 広大なタワマンの全室掃除、大量の洗濯物(手洗い指定あり)、そして買い出し。


「おい、トイレットペーパー買ってこい。ダブルな」 「重い荷物が届くから受け取っておけ」 「昼飯はカツ丼が食いたい。肉屋まで走ってこい」


俺はソファから一歩も動かず、指図だけをする。 莉奈は汗だくになりながら、広い部屋の中を走り回っていた。


「はぁ、はぁ……ご、ご主人様……カツ丼、買ってきました……」


昼過ぎ。 乱れたメイド服とボサボサの髪で、莉奈がカツ丼を差し出した。


「ご苦労。……ああ、お前の飯はそこにあるぞ」


俺が指差したのは、キッチンの隅に置かれたカップ麺(特売品)だ。


「え……私はこれだけ……?」


「食費も借金から天引きだ。カツ丼なんて食ったら返済が1年伸びるぞ?」


「うぅ……いただきます……」


莉奈はキッチンの床に座り込み、すすり泣きながらカップ麺を口にした。 俺が目の前でサクサクのカツを頬張る音を聞きながら、惨めさと空腹に耐える。 これが、彼女の新しい日常だ。


「さて、夜は配信だ。準備しろ」


夕方。 俺はスタジオへ向かった。ここからが本番だ。


「機材のセッティング、照明の調整、マイクのテスト。全部マニュアル通りにやれ」


「ええっ!? こんなに配線あるの!? わかんないよぉ!」


莉奈が大量のコードを見て悲鳴を上げる。 彼女自身の配信はスマホ一つで適当にやっていただけだが、俺の配信はプロ仕様だ。 機材の重量も複雑さも段違いだ。


「『配信なんて楽して稼げていいよね』って言ってただろ? 楽なんだからさっさとやれ」


「ぐぬぬ……!」


かつての自分の暴言が、呪いのように降りかかる。 重い照明機材を運び、這いつくばって配線を整理し、莉奈は埃まみれになった。


「よし、本番5分前だ。お前はカメラに映らない位置で、カンペ出しと飲み物の補充をしろ。音を立てたら殺す」


「は、はい……」


配信が始まる。 俺はカメラに向かって、「神」としての笑顔を作った。


「――よう、愚民ども。今日のテーマは『努力しない馬鹿の末路』についてだ」


画面の向こうで数百万人が熱狂する。 そのカメラの裏側では、かつて人気者気取りだった妹が、膝立ちで待機し、俺の飲み物が減るたびに震える手で水を注ぎ足していた。


2時間の配信が終わる頃には、莉奈は魂が抜けたようにへたり込んでいた。


「お疲れ。……片付け終わったら、明日の準備な」


俺は冷酷に告げ、スタジオを出ようとした。


「あ、それと」


俺は振り返り、床に転がる妹を見下ろした。


「勘違いするなよ。お前は俺の配信の『黒子』だ。絶対に画面に映り込むな。汚いものが映ると数字が下がる」


「……っ、はい。申し訳ありません……」


莉奈が唇を噛み締め、深く頭を下げる。 かつては「私が映れば再生数が伸びる」と自惚れていた女が、今は「映る価値もない汚物」として扱われている。


俺はその惨めな姿を一瞥し、部屋を出た。


24時間365日。 逃げ場のない労働地獄。 まずは徹底的にプライドを粉砕し、俺がいなければ生きていけない身体にする。 「出演」させてやるのは、彼女が完全に壊れてからでいい。

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