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第19話:会社消滅。俺は『神配信者』として独立し、莫大な資産と名声を独り占めする(※最高の気分だ)

『――速報です。株式会社GDソリューションズが、本日付けで東京地裁に破産を申請しました。負債総額は――』


都心を見下ろすタワーマンションの最上階。 その広々としたリビングで、俺は優雅にコーヒーを飲みながら、壁一面の大型モニターに映るニュースを眺めていた。


あの日――「崩壊記念パーティー」から、わずか一週間。 GDソリューションズは、俺の予言通り、あっけなく消滅した。


銀行は即座に融資を引き揚げ、取引先は一斉に手を引いた。 さらに、俺が公開した内部告発データをもとに、労働基準監督署と国税局の合同捜査が入り、とどめを刺された形だ。


権田社長は特別背任の疑いで捜査対象となり、今は弁護士と共に逃げ回っているらしい。 鬼瓦部長は横領罪で起訴が確定。 田中先輩は……まあ、自己破産の手続きでもしている頃だろう。


「……あっけないもんだな」


俺はカップを置き、ふかふかの革張りソファに身を沈めた。


あの日、会場を後にした俺は、二度と会社には戻らなかった。 翌日、弁護士を通じて「退職届」を叩きつけ、同時にこれまで溜まりに溜まっていた未払い残業代と、精神的苦痛に対する慰謝料を請求した。 会社側に拒否する力など残っておらず、彼らはなけなしの資産を切り崩して、俺に支払うしかなかった。


もっとも、そんな金は今の俺にとっては端金だ。 俺の懐には、あの配信で稼ぎ出した莫大なスパチャと、これまでの配信活動で蓄積した資産がある。


「さて、仕事するか」


俺はリビングの奥にある、防音完備の専用スタジオへ向かった。 以前の狭いアパートとは比べ物にならない、プロ仕様の機材が並ぶ城だ。


PCを起動すると、SNSの通知が滝のように流れてきた。


『ゼウス様、独立おめでとうございます!』 『会社潰して正解! 一生ついていきます!』 『今日の配信も楽しみにしてます!』


フォロワー数はあの一件でさらに爆増し、今や国内トップクラスのインフルエンサーとなっていた。 企業案件の依頼メールも山のように届いている。 もう、誰も俺を「無能な佐藤」とは呼ばない。 ここにいるのは、世界を熱狂させるカリスマ、『ゼウス』だけだ。


「……ふぅ」


俺はマイクの前に座り、大きく息を吸い込んだ。


かつては、会社に行くのが憂鬱で仕方なかった。 毎朝、吐き気を抑えながら満員電車に揺られ、理不尽な上司に頭を下げる日々。 だが今は違う。 好きな時に起き、好きな場所で、好きなことをして生きていく。


誰にも縛られない。 誰にも命令されない。 俺の言葉一つで世界が動き、富が生まれる。


「これが……本当の自由か」


俺はマイクのスイッチを入れ、慣れ親しんだ挨拶を口にした。


「――よう、愚民ども。待たせたな」


モニターには、爆発的な勢いでコメントが流れ、同接数が跳ね上がっていく。 画面の向こうにいる何百万もの人間が、俺の声を待ち望んでいる。


会社の連中は、この景色を知ることは一生ないだろう。 彼らは狭い井戸の中で、互いの足を引っ張り合って沈んでいった。 俺はそこから飛び出し、天上の座を手に入れた。


「今日は、とっておきの報告がある」


俺はニヤリと笑い、視聴者に向けて語りかけた。


「俺は新事務所を立ち上げた。……もう、誰かの下で働くのは懲り懲りだからな。これからは俺がルールだ」


『社長就任おめ!』 『一生ついてく!』 『ゼウス帝国建国だああああ』


沸き立つコメント欄を見ながら、俺は確信した。 俺の人生は、ここからが本番だ。 邪魔な過去はすべて清算した。 あとは、この栄光の道を突き進むだけだ。


……ただ一つだけ。 まだ「清算」しきれていない、小さな「燃えカス」が残っていたか。


俺はふと、スマホの着信履歴に目をやった。 そこには、『莉奈』の名前で、数百件もの不在着信が残されていた。


「……しつこいな」


俺は冷めた目で画面を見つめた。 会社も元カノも片付けた。 あとは、この愚かな妹との関係を終わらせれば、俺の「断捨離」は完了する。


「ま、最後に引導を渡してやるか」


俺は配信を続けながら、心の中で最後の仕上げを画策した。

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