第17話:先輩(田中)の末路。「仕事? 僕できません」無能さがバレて懲戒解雇。借金取りに追われる人生へ(※他人に押し付けたツケだね)
「ひっ……! こ、来ないでくれ……!」
ステージの隅でガタガタと震えていた田中先輩は、俺が視線を向けた瞬間、脱兎のごとく逃げ出そうとした。 だが、すでに会場の出入り口は、興奮したメディア関係者と、俺の指示で動いたホテルの警備員によって封鎖されている。
「逃げるのか? 田中先輩。さっきまで『次期幹部候補』だと胸を張っていた威勢はどうしたんです?」
俺はマイクを通して、逃げ場のない彼に声をかけた。
「さ、佐藤くん! い、いやゼウス様! 僕は違うんだ! 僕はただ、鬼瓦部長に命令されていただけなんだ! 心の中では君を応援していたんだよ!?」
田中は涙目で必死に弁解する。 鬼瓦部長が連行された今、全ての罪をあの上司に擦り付ければ助かると思っているらしい。浅はかだ。
「応援、ねぇ……。じゃあ、これは何ですか?」
俺がスクリーンに映したのは、パーティー開始前に田中が俺に押し付けた、あの分厚い『ゼウス様接待マニュアル』だった。
「『ゼウス様は気難しいから目を合わせるな』『水はフランス産以外出すな』……。これ、あんたが徹夜で作ったって自慢してましたよね?」
「あ、あぁ、そうだよ! 君のために、僕が一生懸命……」
「嘘をつくな」
俺は冷たく遮った。
「このマニュアル、ネット上の『デマまとめサイト』のコピペですよね? 作成履歴を見ましたけど、所要時間はたったの5分でしたよ」
「うぐっ……!」
「あんたは徹夜なんてしていない。昨日の夜、キャバクラで『部下に面倒な仕事全部押し付けてやったわw』ってインスタに投稿してましたよね? これ、証拠のスクショです」
ドンッ! スクリーンに、酒を片手に調子に乗っている田中の自撮り写真が表示される。
『うわ、こいつマジでクズだ』 『仕事しないで飲み歩いてたのかよ』 『顔がキモい上に無能とか救いようがない』
コメント欄に嘲笑が溢れる。 田中の顔が真っ赤に染まる。
「そ、それは……付き合いというか……」
「百歩譲って、それはいいとしましょう。問題はこっちです」
俺はさらに深刻なデータを表示させた。 それは、社内システムの『ログイン履歴』と『業務処理ログ』だ。
「田中先輩。あんた、ここ3年間、社内システムで『承認ボタン』以外を押したことがありますか?」
「え……?」
「あんたのIDでの作業履歴、ほぼゼロなんですよ。企画書の作成、顧客データの管理、見積もりの計算……全部、俺のIDで行われています」
俺は冷酷な事実を突きつけた。
「つまり、あんたはこの3年間、会社に来て、俺に仕事を丸投げし、俺が作った成果物に『田中』のハンコを押していただけだ。……自分じゃパソコンの使い方もろくに分からないんじゃないですか?」
「な、失礼な! 僕だってエクセルくらい……!」
「じゃあ、この関数、どういう意味かわかります?」
俺は画面に、業務で日常的に使っている簡単な計算式を表示した。 田中は目を白黒させ、冷や汗をダラダラと流すだけだ。
「わ、わかるわけないだろ! そんなの、部下が知っていればいいことで……管理職の仕事はマネジメントであって……!」
「マネジメントもできてないから、俺がこうして反乱を起こしてるんでしょうが」
正論のパンチに、田中がぐうの音も出ずに黙り込む。
「佐藤くんの言う通りだ……」
その時、床にへたり込んでいた権田社長が、よろよろと立ち上がって叫んだ。
「田中! 貴様、私の目をごまかしていたのか! 『佐藤は使えないから私がフォローしています』と報告していたのは嘘だったのか!」
社長は、自分への責任追及を逸らすために、ここぞとばかりに田中に噛みついた。
「く、クビだ! 貴様のような給料泥棒は懲戒解雇だ! 退職金など出ると思うなよ!」
「えっ……!?」 田中の顔色が死人のように白くなる。
「しゃ、社長! 待ってください! クビは困ります! 僕、先月タワマン買っちゃったんです! 35年ローンなんです!」
田中が泣き叫ぶ。 そうだ。こいつは「次期幹部候補」という妄想を前提に、身の丈に合わない高級マンションや外車をローンで購入していた。
「ポルシェのローンもあるんです! ボーナス払いがあと20年残ってるんです! 今クビになんてなったら、破産しちゃいますぅぅ!!」
「知ったことか! 消えろ!」
社長に蹴り飛ばされ、田中は無様に転がった。
「あ……あぁ……終わった……僕の人生……」
田中は白目を剥き、よだれを垂らして呆然としている。 無能な人間が、他人の成果を盗んで虚栄心を満たし続けた末路。 職を失い、莫大な借金だけが残る地獄の人生が確定した瞬間だった。
『メシウマすぎるwww』 『自業自得』 『タワマン没収で草』 『これからは日雇いで頑張ってねw』
視聴者からの容赦ない「ざまぁ」コメントが、彼への手向けの花となった。
俺は、抜け殻のようになった田中に一瞥もくれず、最後のターゲットに向き直った。
「さて……」
俺はコツコツと靴音を鳴らし、権田社長へ歩み寄った。
「トカゲの尻尾切りはお上手ですね、社長。……でも、まさかそれで、自分が助かるなんて思ってませんよね?」
「ひっ……!」
社長が喉を引きつらせて後ずさりする。 部下たちを次々と見捨て、自分だけ生き残ろうとした諸悪の根源。 この会社の腐敗の頂点。
「さあ、ラストはあんただ。権田剛造」
俺はマイクを捨て、地声で告げた。 ここからは、言葉ではなく「絶望」を与える時間だ。




