第13話:部長の末路①。「俺の手柄は全部お前のもの?」過去の横領証拠をライブで全晒し(※言い逃れ不可)
「……う、うう……」
ステージの端で伸びていた鬼瓦部長が、呻き声を上げて身じろぎした。 どうやら意識を取り戻したらしい。 腫れ上がった頬を押さえながら、よろよろと上半身を起こす。
「……な、なんだ……俺は……」 「お目覚めかな、鬼瓦」
俺が冷ややかに声をかけると、鬼瓦は弾かれたように顔を上げ、俺を睨みつけた。
「さ、佐藤ぉぉ……! 貴様、よくも俺に恥をかかせやがったな!」
状況が理解できていないのか、それとも怒りで麻痺しているのか。 鬼瓦はよろめきながら立ち上がり、マイクを持つ俺に向かって指を突きつけた。
「いいか! お前がゼウスだろうが何だろうが、この会社の部長は俺だ! 上司だぞ! その口の利き方はなんだ!」 「まだ上司気取りか。……西園寺会長に契約を切られ、会社はもう終わりだぞ?」 「う、うるさい! そんなもん、俺の知ったことか! 俺には実績がある! この会社で一番売上を作ってきたのは俺だ! どっかの他社に転職すればいいだけの話だ!」
鬼瓦は唾を飛ばして喚き散らす。 なるほど。会社が潰れても、自分だけは「有能な営業マン」として生き残れると思っているわけか。 どこまでもめでたい男だ。
「実績、ねぇ……」
俺は鼻で笑い、カメラに向かってウインクした。
「じゃあ、その『輝かしい実績』の裏側を、少し覗いてみようか」
俺がタブレットを操作すると、背後の巨大スクリーンに新たな画像が表示された。
『裏金管理表.xlsx』 『架空発注リスト』
「……あ?」 鬼瓦の動きが止まる。
「鬼瓦部長。あんた、ここ数年、取引先の『株式会社ヤマダ』に、相場の2倍の価格で備品を発注してたよな?」
「な、なんだ急に……それがどうした……」
「その差額の50%を、あんたの個人口座に『コンサル料』名目でキックバックさせてただろ?」
ドンッ! 決定的な証拠画像――鬼瓦の個人通帳の入金履歴と、裏取引を指示するメールのキャプチャが表示される。
「なっ……!?」 鬼瓦の顔から血の気が引いていく。
「これ、立派な『業務上横領』であり『背任行為』だ。過去3年間で……総額1500万円。結構抜いたな?」
「ち、違う! これは……その、正当な報酬で……!」 「正当? 会社の金を個人的に懐に入れておいてか? ……まあいい、次だ」
俺はさらにスライドを切り替えた。 今度は、過去の営業成績グラフと、数々のプロジェクト資料が表示される。
「あんたはさっき『一番売上を作ってきた』と言ったな。……例えば、去年の『A社大型案件』。あれもあんたの実績になってる」
「と、当然だ! 俺が足で稼いだ契約だ!」 「嘘をつけ」
俺は冷たく言い放ち、一本の音声データを再生した。
『――おい佐藤! A社の企画書、明日までにやっとけよ! 俺はキャバクラ行ってくるからな! あ、契約取れたら俺の名前で報告しとくから、お前は黙ってろよ? 無能のお前がやったってことにしても、誰も信じねえからな! ギャハハ!』
会場に響き渡る、鬼瓦の下品な笑い声。 それは、彼が俺に仕事を押し付けた時の盗聴データだ。
「……え?」 鬼瓦が硬直する。
「A社だけじゃない。B社のシステム導入も、C社のコンサル契約も。……全部、俺が資料を作り、俺が裏で根回しをして決めた案件だ。あんたは最後に判子を押して、『俺の手柄だ』と社長に報告しただけだろうが」
俺は鬼瓦を指差した。
「俺の手柄は全部あんたのもの。……そして、あんたのミスは全部俺のもの。そうやって築き上げたのが、あんたの『実績』の正体だ」
会場からは、軽蔑と嫌悪の混じったざわめきが起きる。 権田社長も、信じられないという顔で鬼瓦を見ていた。
「お、おい鬼瓦……本当か? あの大型契約も、佐藤が……?」 「ち、違います社長! これは捏造だ! AIで作った音声だ!」
往生際悪く叫ぶ鬼瓦。 だが、俺は追撃の手を緩めない。
「捏造? じゃあ、A社の担当者に今すぐ電話してみるか? 『実際に提案を持ってきたのは誰でしたか』って。……俺、ゼウスとしてなら、A社社長ともすぐに繋がれるけど?」
俺がスマホを取り出す素振りを見せると、鬼瓦は「ひいっ!」と悲鳴を上げて後ずさりした。 それが何よりの自白だった。
『うわぁ……ダサすぎ』 『無能はお前じゃねーか』 『横領に手柄横取りとか、救いようがないクズ』 『警察案件キタコレ』
背後のスクリーンには、視聴者からの罵倒コメントが滝のように流れている。 鬼瓦は顔を真っ赤にし、プルプルと震え出した。
「お、おのれ……佐藤ォ……! 俺を……ここまでコケにしやがって……!」 「コケにしたのはどっちだ。長年、俺の生き血を啜って肥え太ってきた寄生虫が」
俺はマイクを下ろし、冷徹な死刑宣告を突きつけた。
「横領の証拠は、すでに警察と国税局に送信済みだ。……言い逃れができると思うなよ?」
その言葉を聞いた瞬間。 遠くから、ウゥゥゥゥ……というサイレンの音が近づいてくるのが聞こえた。
「あ……あ……」
鬼瓦の膝がガクガクと震え出し、股間からじわりと染みが広がっていく。 恐怖のあまり、失禁したのだ。
「さあ、お迎えが来たみたいだぞ? 『有能な営業マン』さん」
俺はニッコリと笑って、出口の方角を指差した。




