〈6〉当分はネタには困りません...(ぬへへっ...へへっ...)
ガッチャ…
家に帰りたくなさすぎるあまり、自然とドアの開け方が泥棒のそれになってしまいました。
「あっ!おかえり~おじさん!」
「あっ…た、ただいま…です…」
パジャマ姿ですね。
夕方にあれから買いに行ったのでしょうか…。
出かけるのであれば戸締りはしっかりとしていただきたいですからカギの場所を…。
ではなくて…。
「リンさん……」
「ん?いつもより暗い顔しちゃってなんかあった?
ってか酒臭っ」
……。
「はあ......」
「え?急にどした?w
お風呂湧いてるから入ってきていいよ~?」
「あっ、じゃあ…」
リンさんは私が気づいていないように思っているのですものね…。
あのニュース...そうなればファミレスや庶民食…ニュースの件にも合点がいきますね…。
「ほらほら
酒臭いんだからさっさと入る!」
「はいはい…」
まあ、とりあえずはお風呂でゆっくり考えますか…。
ちゃぽん
ザパー
あーああ。
お湯入れすぎですよ。
もったいないです。
この量で3回は行けますよ。
「あっおじさん~?」
ぬふぉ?
入ってきてくれるんですか??
マンガでよくあるようなあれですか?
「お世話になってる身だし…(照れ)
お背中…」
「こっちも溜まっているんだ!(キリッ)
君の胸で洗ってくれないか?(イケボ)」
ってやつですかああああ!!
(マンガはほとんど読みませんけれど…)
「はい…」
「私もう入ったから流していいよ~」
……はあ…そうでしたか…。
つい自分で自分の自分を綺麗にしようとしていたのが恥ずかしいですね。
………って。
ゴクゴクゴクゴク
美少女汁たまらんです。
流すなんてリンさんなに言っとるのですか。
空いたペットボトルにでも入れて当分の間は、水筒と料理にはこれ使いましょう。
ゴボゴボ…
私も浸かってしまいましたし、今回は見逃してあげましょう。
結局何も考えられませんでした。
ただただ鎮めるのに必死でしたね。
一人であれやこれやと妄想を巡らせてしまいましたから…お恥ずかしい…。
もちろん至ってはおりませんよ。
いつでもフルマガジンですので。
「お風呂ありがとうございました…」
「うんっ!これくらいはしないとね
って~まさか私が入ったからって飲んだりしてないよね~」
「あは…あははは…」
「キモ~~www」
飲みました。
これで私もリンさんと一緒になれましたね。
「分かってる分かってる
おじさんはそんなことしないもんね
する勇気がないのかww」
あります。
「あ…そういえばこれ…」
「えーっ!!なんこれ!!」
「デパートで売られていた…」
「デパ地下のスイーツってこと?????」
「はい…人気ナンバーワンと書かれていたので恐らく外さないかと…」
「マジでえええええ!!!!おじさんありがとっ!!」
テンション高いですね…。
買ってきた甲斐があったようです。
微笑ましいですね。
ガサゴソ
「あれー?おじさんの分は?」
「私はいいですよ」
「えーでも…」
「甘いものはあまり好みではないので…ご遠慮なく…」
「ふーん…そう?
じゃあ遠慮なく
いただきまーす」
実を言うと甘い食べものは嫌いではないのです。
なのでリンさん、貴方の口から咀嚼済みのそれを直接移してやってください。
この寂しい…寂しかったおじさんに……。
「あの…リンさん…お話が…」
モグモグ...
ゴクッ
「ん?」
「…あ、いや…何でもないです…」
違いますね。
私は都合のいい宿り場になっていればいいのです。
リンさんにどんな事情があるかは分かりませんが
それを私が聞きだす必要はないでしょう。
他に頼れる人も居ないからあんなことをしようとしていたのでしょうし、
せっかくリンさんもくつろいでくれているようですしね。
私には失いたくないものなんてありませんからね。
「あ~もしかして本当はこれ食べたかったんだ~」
「え…っと…」
「んも~
そうならそうと早く言ってよ~」
「ああ……」
「はいあ~ん」
……。
パクッ
あんま。
リンさんの唾液…。
へへ、へへへへへへ……。
「よいしょっと」
ああ、新しいフォークに変えるのですね。
少し残念です。
では私は今日はリンさん使用済みのこのフォークをお尻の穴に差し込みながら寝ようと思います。
「さあ、運命のラストチャレンジです!」
二人きりでしーんとしているとなんだかエッチぃ…気まずいのでテレビをつけてみました。
よく分からない選手と芸能人らによるスポーツ系のバラエティですね。
運動は苦手なので羨ましいです。
「あっちゃ~もっと右だろ~
さっきもそのミスしてんじゃん~」
「あはは…」
楽しんでくれているようで何よりです。
ところで私は仮説を立ててみました。
リンさんの自殺の原因というのは虐待ではないのではないでしょうか。
(学生の自殺と言えば虐待かイジメかと勝手に...)
むしろその逆といったような…。
いわゆる"普通"を望んでいる…的な感じでしょうか。
であれば学校とかにも行きたいのでしょうか…。
"普通の生徒"として……。
――オンライン授業だけで単位取得、卒業まで!
○○高等学校の制度とカリキュラム…――
へえぇ。
今はそういったものまであるのですね。
……。
「リンさん…」
「ん~?
あ、ご馳走様
美味しかった
ありがとっ」
「あっ…はい…」
ジャーー
「んっふふっふふ~~♪」
グッ……。
なんだこの新婚感…。
自然と家事してる…いい女…。
私だけのものにしてしまいたい。
「リンさん…」
「ん~?」
「あいや…何でもないです…」
「も~何~?構ってほしいの~?
(ちょいちょい)」
うっ…。
肘でっ...。
あ、イクッ...//
スン
まだ二日目です。
学校は早すぎますね。
もう少し調べてみましょう。
学校のことも、リンさんのことも…誘拐罪のことも……(ううぅ…)。
「部屋…入っていいですか…?」
「えーーーっとね……おっけ~!!」
「ありがとうございます…」
なんの間でしょうか。
まあ本人がいいと言っていることですし…。
ガチャ
うわあ…下着…そのままなのですね。
さっきの間はこれでしたか…。
油断してますね。
危機察知のうりょ...
ブフォッ
「はあ…はあ…ここにリンさんの……フゥ…フゥ…」
スゥハァスゥハァ…
クンカクンカ…
ぺロぺロ…
よし。
これで一週間は生きていけそうです。
部屋に籠ったのはこっそりリンさんの事件?を調べるためです。
どういう理由かは分かりませんが私に知られたくないようでしたからね。
概ね見当は付きますが。
ポチポチ
私がいまだに人差し指でしかスマホを操作できないことは笑わないでください…。
おお。
高橋さんが言っていた通りどこもリンさんの話題でいっぱいですね。
金融に不動産に重化学工業…。
子会社やプロのスポーツチームなんかも多数持つ"琴峰グループ"の琴峰…。
身代金を要求したら一体どのくらい貰えてしまうのでしょう…。
「くくく…くっくくく…」
どうしましょう。
ニヤニヤが止まりません。
それで、リンさんが家出…?をした理由はなんなのでしょうか。
さらには自殺まで追いつめられるようななにかがあったのでしょうか…。
お金には絶対に困っていないはずですし、
色々と目もつくでしょうから虐待も難しいですよね…。
「はあ…」
さっぱりです。
10個以上も年の離れた、それも住む世界が3段階ほど違うようなお嬢様の考えることはよく分かりませんね(苦笑)。
ですが私に出来ることはこれくらいなのでね…。
せっかく暇になったことですし、リンさんの望むことはやらせてあげましょう。
…通信制?の高校も調べておかなきゃですね……。
ガチャ
「おじさん~?」
バッ
ビックリしました。
危ないです。
「えっw何~~?
何かやましいことでもしてたの~~?
え~?」
「そ、そんなのではないです…」
「ふーん…あっ!!」
ビクッ
「私の下着!
まさか……」
「え…っと…」
「きゃーーへんた~~いwww逃げろ~~ww」
それは同級生に対するノリですね。
得体のしれないおじさんにそんなに気を許してしまってはいけないですよ。
私が変態オヤジだったらどうするんですか…。
(ははっ…ははははっ…)
「ってのはじょーだんで」
「ははっ…そうですよね…」
「そう
まあ別におじさんはそんなことしないだろうし
されても私は気にしないし」
「そうなのですね…」
いいこと聞いてしまいました。
「それでなにか用でしたか…?」
「もう寝るの!出てって!」
「あ…はい…」
ううっ(泣)。
これが年頃の娘に嫌われた父親の気持ちというやつですか…。
ですがリンさんが寝てくれるのならリビングで続きをしましょうかね。
カチカチ…
編入自体は簡単そうですね…。
VRで登校…。
凄いですね…。
お金がとてもかかりそうです。
ですがリンさんの素性が分かった以上これはウルトラハイリスクハイリターンの投資ですよ。
うまく行けば今売っておいた恩が何百倍にもなって帰って来てくれるかもしれません。
カチッ…カチッ…
もう日付も変わってしまったことですし、寝ましょうか。
今日はリンさんの寝言(深)は聞こえてこないことですしね…。
(非常に残念です)