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4/13

〈4〉なんだか新婚さんみたいですね...(純情ではないことでしょう...(苦笑))

ガチャ


「たっだいま~!」

「ただいまです...」

「あ~疲れた~!」


ボフン


汚い格好でベッドには上がらないでいただきたいですね…。

ん?待ってください。

リンさんが乗ればそれはベッドが神格化されていくのと同義なのかもしれません。

今度リンさんが不在の時にでも全裸でゴロゴロしてみましょうか。


「そうだスマホ!」

「初期設定は…」

「うん!店員さんがやってくれたし!

あとはアプリとかいっぱい入れるんだ~!」

「楽しそうでなによりです」

「へへっ そう?」


分かりやすいですね。

そんなに可愛いと私が吸い込んじゃいますよ。


「じゃあおじさん!ライン繋ご!」

「はい…」


まずはやっぱりそれですか…。

私がラインを繋いでいるのは……。

0人みたいなものですね。


「へへ~っ

おじさんが私のフレ第一号だねっ」

「そうですね」


セの方のフレンド申請も楽しみにお待ちしていますからね。

そのうち気が落ち着いたらで構わないですので。


「では私はカレーを作りますので

なにかありましたら…」

「りょ~」


リンさんは料理が出来ないらしいので私が作ります。

私はケチ臭い人間なので自炊くらいは出来ますよ。

出来るだけお金は使いたくないですからね。


トントントン


「お金を貯めたところでやりたいこともないじゃんか」って思われていそうですね。

ビンゴです。

少ない趣味のうちの一つである船釣りは忙しくて機会がない上に疲れるのであまり行けませんね。

ですがちょうど今出来たじゃないですか。

投資先が。


グツグツ


こんなに可愛い子に恩を売っておいて損があるはずないです。

結果としてなにも返って来なかったとしても、

都度彼女の笑顔が見られるだけで私のくだらない日常にとっては十分すぎるくらい眩しい陽光となりえますからね。


.........


「出来上がりましたよ...」

「マジ!?早っ!さっすがおじさん!」

「レシピ通りですからね…」


リビング隣の私の部屋のベッドでくつろぎながらスマホをいじっていたリンさんが

駆け寄ってきます。


「じゃあいっただきま~っす!」


モグモグ


「……」

「どうですか?」

「うーーん…びみょーかな…」

「そう...ですか...」


下手に高い商品よりも庶民向けのB級レトルトの方が我々の舌は喜ぶってことですね。


「和食とかよく分からないフレンチとかしか食べたことなかったし

私の舌には合わないみたい!」

「………ん?」


ん?

……聞かなかったことにしておきましょう。

色々と絡まり合った面倒ごとが一斉に降りかかって来る予感がしました。

それにしてもエプロン女子高生の「ご飯にする?風呂にする?そ・れ・と・も」

というやつを経験することが出来ないのは少し残念ですね。


「一応サラダも作ってみましたが…」

「もしかしてドレッシングも!!?」


そこですか...(苦笑)。

それに結局生の野菜を提供してしまいましたね...。

ですがこの元気なお子さんは腹痛持ちくらいが扱いやすそうです。


「ドレッシングは市販のものですね…」

「マジで!!?早く早く!!」


机から身を乗り出してぴょんぴょんと跳ねております。

そのまま跳ねながら一緒にベッドにでも向かいましょうか。

そういえば私の家には食卓なるものがないので、アウトドア用の折り畳み式のものを引っ張り出してきました。

なんでそれはあるんかいって感じですよね(苦笑)。


「お待たせしました…」

「これが噂に聞く…!!」

「ただの洋風ドレッシングだと思いますが…」

「それでいいの!

うわ~憧れてたんだーこれ!」


ドポドポ


「あちょ、出しすぎですよ...」

「え?そなの?」

「まあ食べてみてください」

「言われなくてもそうするし~」


カプッ


「ぶへ~~!!

かっっら!!」

「だから言ったでしょうに…」

「でも美味しい!!

ありがとおじさんっ!!」

「それは...よかったです…」


今日まで地獄のような仕事と、虚無のような日常を耐えて来たかいがありましたね。

今朝の謎に勇気のあった私自身に合掌です。


「スプーンとコップだけは洗ってしまうのでください」

「…うん」

「?あとデザートにフルーツポンチでも作りますか…?」

「え!?なにそれ美味しそう!!」


これも知らないのですね。

それと私は洗い物が面倒なので食器類は基本的に徳用の紙皿にしています。

リンさんと並んでドキドキ皿洗い編はやって来ないようです。


「とは言ってもフルーツ缶にサイダーをかけただけですが…」

「よく分かんないけどいいの!早く作ろ!」

「はいはい…」


背中を押されながら一緒に狭っ苦しいキッチンへと向かいます。


プシュッ


「おお!サイダー!!!」

「はい…」


カパッ


「これが缶詰…!!」

「はい…」

「それでそれで!!?」

「お皿に空けるだけです…」


ドポドポ


「このおっきいの桃?」

「多分そうですね...」

「一個しかないじゃん」

「そうですね...」

「……いっただき~!!」

「ははは…」


それでは私は貴方の桃と腿をいただくとしましょうか。

ジュルジュルジュル…。


「おおおおおお!!

美味し~~~!!」

「それはよかったで…」

「これ毎日食べたい!!」

「ははっ...食べすぎはあまりお体によろしくないかと…」

「も~いいのいいのそーゆーのは」

「そうなんですか…」

「そうなの!」


ジャーー


箸とコップだけは一応製品を使ってます。

割りばしのささくれが爪の隙間に入って悶絶した過去があります。

紙コップは何度倒れては私を困らせたことでしょう…(苦笑)。

スプーンやフォークは使用頻度が低いですしね、

プラスチックのものです。


「ねえ、私もやっていい?」

「ああ……もちろんですよ」


チッ、ですね。

せっかくリンさんのコップをペロペロしてやろうと企んでいたのですが、

これでは無理ですね。


「……」

「……」


ジャーー


「どーやるのっ?」

「お、おお……」

「おお??」

「あいえ、なんでもないです

こんな感じですかね」


よし。

しれっとリンさんと体を密着させることに成功しました。

手が、腕が、足が、肩が、リンさんと一つになっております。


「おおお~~!!」

「とまあ、こんな感じですかね…」

「よし完璧!これから食器洗いは私に任せなさい!!」

「…ではお願いしましょうかね」

「おうよっ!!」


食器洗いをしなくてもいいというのは随分と楽なものですね。

仕事終わりのあれは何気に腰に来るのですよね。

あっ。そうでした。

もう仕事は辞めたのでしたね...。


ピッ


「今夜のニュースをお伝えします…」


ダッダッダッダ


ピッ


「…リンさん?」

「え、な、なんでもないよ?」


目がバケツリレーしていますよ。

……なんでしょうかこの例え(苦笑)。


「そうですか…」

「う、うん!そうそう!あっほら、こっちのチャンネルでバラエティやってるよ!」


あのようなヤラセの塊は見る気にはなれませんね。

(個人の感想ですよ)

一度そう思ってしまうともう純粋な気持ちでは見られないものです。

腐りきった心の社畜な私はもうとっくに…です。


「ありがとうございます…」

「う、うん!ごゆっくり~!!」


凄い焦っておられましたね。

リンさん。

なにか知られたらまずいような隠しごとがあるのでしょうか。

リンさんに騙される分には本望的なところもあるのですがね。


「なんでやねん!

わはははは」


昔はお笑いも楽しめていたのですが…。

私が変わってしまったのでしょうか。

ニュースは見せてくれないようですし仕方ないですね。

スマホでなにかしましょうか…。


ピコンピコン


居ましたね。

ラインのまともなフレンド…。

昼の高橋さんからメッセージが来ていますね。

過去の会話の内容も、なにか裏があるのではとまともに取り合っていませんでしたが...。

私に気があったと考えれば辻褄が合いますね。


『まだ書類は出してないんでしょ

もしあれだったら相談に乗るからね』


あらあら。

お優しいですね。

さて、どうしましょうか。


『ありがとうございます…

では予定が合う日に飲みにでも行きませんか…』


せっかくなら最後にいい思いさせてもらいましょうか。


ピコン


『本当!?

私はいつでも大丈夫だから…』


明日の夜に決まりました。

会社近くの居酒屋だそうです。

近くのホテルも調べておきましょう。


「おじさんラインする人居るんだ」

「ちょわ…!」

「wwちょわってwww」


びっくりしました。

洗剤の匂いでしょうか。

いい香りがします。


「今夜おじさんの部屋借りてもいい?」

「ああどうぞ…」


カギがかけられないと怖いですよね...。

私はそんなことしないですよ......。

(し、しません...よ?)

では私はここで寝るとしましょうか。

まだ9時前ですけどね。

それにしても…。

明日からは仕事に行かなくてもよいのですね…。

やっと一段落、落ち着けます。


「じゃあおやすみ~」

「はいおやすみなさい」


随分とお早いご就寝ですね。

…せっかくですし私も寝ましょうか。


.........


「zzz...」


パチッ


まだ夜でしょうか。

歯車生活が板についてしまっていたおかげであまり深く眠れませんね。


「…んっ……//」


おっとっとっと。

もしかしてリンさんがスマホを欲しがっていたのはこれが理由でしたか。

それにしても私のベッドで…。

ぬへへへへ。

では私も失礼して。


...


「ふう…」


今日はいつもよりも早かったですね。

これではリンさん…高橋さんも満足させられませんね(苦笑)。

今度こそは寝るとしましょう。

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