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11/14

〈11〉黒江さんは思っていた以上の下衆でした...(あとリンさんの裸、堪らないです......)

そういえば移動中に志乃さんに聞いた話によれば黒江さんは社長なんだそうですね。

それも琴峰グループと仲の良い比較的規模の大きい会社だそうで...。

いわゆる政略結婚というやつですかな...。

すでに仲がいいならどうして...と言いたくなりますが、

きっと私に考えつくようなことはまず先に浮かんでいることでしょう。


「まあ...行きますか...

よいしょっと...」


志乃さんからお話を聞いて改めて分かりましたよ。

リンさんの価値...が。

価値、という言い方はなんだか嫌ですが...。

つまりはそういうことです。

私なんかが一緒に居ていいお方じゃなかったのです。


ガシャン


おっ。

登れそうですね。


ズトッ


「あいてっ...」


セキュリティーが甘めで助かりました。


ザクザク


開けすぎたお庭を歩きます。

リビング?の壁は全面大きな窓です。

こんなところの景色は面白いのでしょうか。

地面に刺さっているライトの陰になっている部分を、

得意の猫背で渡ります。


「どうしましょう...」


先ほどの続きです。

いつまでも私がリンさんを匿うことはきっと誰にとってもよろしくないことなのだと思っています。

ですが......今のままリンさんを放っていくのもなんだか気分が悪いです。

(まだ一回も営めていないですし...)


「チャイム...」


正攻法(?)で行きますか...。


ピーンポーン


......


ザザッ


「はい」

「え...っと...免許証を拾いまして...」

「免許証...ですか...」

「ええ、少し行ったところで...」


ええい私...!

もう少しなにかマシな言い分があったでしょうに。

なんですか免許証って。

こんな人工島を手ぶらで歩いていること自体が不審者ですよぉ...!


「ではインターホン横のポストに」


あ。

で、ですよね~。


「じ、実は私今迷子になってしまいまして...地図だけでも見せていただけないでしょうか...」

「......少々お待ちください」


な、なんとか...うまく行きました...かね?

あとは出てきた黒江さんをいい感じにピシッっとやってしまって、

グルグルッっと縛ってからリンさんにギュっとされて...締めはパンパンパパンパンですね。


ガチャ


今です。

!!!


.........


で、ですよね~。


「そんで~君はだぁれ~?」

「き、木村と言います...」

「ふぅ~ん下は~?」

「よ、洋平と...」

「あっら~本名は明かさないってのね~」


地味な名前で悪かったですね。

あの時扉から出てきたのはもちろん黒江さんではなく欧米プロレスラーのようなガタイの方で...。

瞬きのうちにこうして手足を縛られてパンツ一丁で椅子に固定されてしまいました。


「んで~?よーへーくんはなにしに来たの~?

こ~んな寂しいところまで~」

「お、お散歩...」


(笑)。

流石に無理がありますね。

それにしても黒江さん...なんだかねっとりとした話し方ですね。

おかまというのでしたっけ。

ルックスは非常に素晴らしいです。

スラっとした高身長にビシッと決まった真っ黒なスーツ...。

髪型は...少し嫌ですね。

ワインがとても似合っています。


「ふぅ~ん

じゃあマックス、逃がしてあげなさい」


ままままマックス...。

すっごいですね。

獰猛な犬さんみたいなお名前です。

(全国のマックスさん...申し訳ありません...)


「ま、待ってください...」

「ん~?なにかしら~?」

「く、黒江さんはどちらへ...」

「ん~あたし~?

あたしは可愛い可愛い愛人のところよ~」

「へ、へえ~

黒江さんほどのお方のお嫁さんならさぞ美しいのでしょうね...」

「え~んも~分かる~?」

「はい...ぜひご挨拶...」

「見てみる~?」

「あ、ありがとうございます...」


まるでリンさんをモノのように...。

ですが今は我慢我慢です。


パンパン


「マックス、彼を連れて来なさい」


マックスさんが無言で椅子ごと私を持ち上げます。


「う、うわあああ...」


ものすごい角度です。


「こらマックス!お客さんでしょ」


スッ...


えっと...。

本格的にマックスさんが犬さんである可能性が出てきたかもしれません。



キイイィィ


「ほら、こっちよ~よーへーくんっ」

「は、はい...!」


よ、ようやくリンさんと...。

ひとまず無事が確認できれば......!!


「あっ修司~おそーい、ってどなた?」

「ごめんよマイハ二ー」


チュ


.........え。

...は。

誰ですかこいつ。


「ちょ、ちょっと!リンさんは!」

「...リン?

ああ、()()


あれとなんですかあれとは...!


「リンさんは無事なんですよね!」

「お前、あれが目的だったか

ふ~む...マックス」


ズイッ


「あとで子守歌でも聞かせに行ってあげるからね♪

よーへーくんっ」


ギイイィィィィ

バターン


あ。

詰みました。


「ま、マックスさん?」


ズドン、ズドン


「へ、ヘルプ!!

アイアムミステイク!!」


ああ。

英語の勉強をきちんとしておけばよかったです。


「......」


ドシン、ドシン


......


ガララララ

ドサッ


あーあ、終わりました。

真っ暗な物置のようです。

ホコリとカビの匂いが鼻をついてきます。


バターーン

...

ガジャッ!!


手足は拘束されたままです。

ですがここが物置なら...!

いや...もうどうでもいいですね。

今更手足の自由を取り戻したところで、

戦闘力でも情報力でも影響力でも経済力でも...

立地も形勢も時間帯も...

なにもかもが最悪です。


バタッ


「オツィンポ~~!!!」


ふう。

人生で一番大きな声が出た気がします。

どうせ最後ですから爪痕くらいは残しておくとしますか。

あとは壁中に私の血で淫語でも書いてやりましょう。

私に出来るのはそのくらいですから。


「うぅ......ううぅ...ヒック...うう...」


なんでしょうか。

人間でしょうか。


「オツィンポ?」

「ヒイィィッ......」


ヒイィ...ということは...。

ニンゲン!ニンゲンニンゲン!!

もうこの際男でも大不細工でも構いません!

素人童貞のまま死ぬのだけはやめなさいと、

私が幼いころに死んでしまった両親に託されたのを思い出しました!!

(絶対に違いますね(笑))


「ハァ...フゥ...」


私は震える声の方へと鼻息を荒くして歩み寄ります。

気が付けば四足歩行になっていました。

背中には椅子を背負っています。


「ガルルルッ!」


おっ!

おおおおおおおっ!!

裸!裸ですよ皆さん!


「ジュルジュル...」


美味しい。美味しいですよお母さんお父さん!

最後にこんなにいい思いが出来るなんて、神様も私を見放さなかったのですね!


「こら、手をどけなさい!」


おお!これが噂に聞く果実...!!

リンさんの居ない退屈な生活が再開してしまうくらいなら、いっそのことこれはよかった結末なのかもしれませんね。

この女性には悪いですが...。

それではいただき...


「おじさん......?」


え?


デデデ、デデデ、デデデデ~(ガリレオのテーマ)


はっ!


「リンさん...?」

「おじさん!!」

「リンさん!!ここでしたか!」


ペロペロ


バチーン


「なにしてんの(怒)」

「あっ......

すみませんすみません

これが最後の晩餐だと思いせっかくなら最後に...と思ってしまってですね

申し訳ないという気持ちはあったのですが、

それに貴方がリンさんだと知ってたわけでなくてですね...」

「......」

「本当にすみま...」

「ふっ」


...?


「めっちゃ喋るじゃん

珍しっ」


古びた棚の隙間から漏れ出る月光に照らされたリンさんの目の下は赤く腫れていました。

私にそう言ったリンさんの目からは怒りと恥ずかしさと...それから安堵の......。


「ありがとっ

おじさん...」


ミシィィ


リンさんが私にゆっくりと体を預けます。

床がきしみます。

なんだかいやらしい音に思えてきます。


「ごめんなさい、私、使えなくて...」

「え?無策で来たの?

志乃は?」

「うう......」

「......」


よしよし


「ごめんごめん

別におじさんは悪くないでしょ

あんなにチキンなおじさんが勇気出して一人で来てくれたんだから、私は嬉しかったよ」

「リンさぁん...」


(はあ...はあ...リンさんの裸...//

現役スレンダー美少女と裸で暗闇二人っきり...!

ふう...ふう...//)


「逃げましょう...ここから」

「もちろんっ!

おじさんはちょっと頼りないけどねっ」

「耳が痛いです...」

「でも居ないよりましっしょw」

「そうですかね...」


リンさん。

いつもの調子が戻ったようでよかったですね。


「ほら、おじさんもこれで手足ほどいて!」

「ああ...ありがとうございます」


なにかしらの食器の破片のおかげで手足の自由を取り戻せました。

これでようやくリンさんのことを好きに出来ますね。

(今日は"妄想if"が多すぎますよ...しっかりしなさい洋平...)


「それでおじさん...なんか案はある?」

「うーんと......」


あれ。

そういえば股間が硬い...。

あっと、もちろん勃ってはいるのですがそれとは別に...。

これは......。


「志乃さんの盗聴器...ですか...」

「おお!!ってどっから出してんのよ!」

「すみません...」


USB型の...!!

リンさんの部屋に設置するはずのやつです。

せっかくならば私の核を刷り込ませておこうかとポケットに入れておいたのでした!!

(私の下着にはポケットがついて居ますので...)


「これがあれば志乃なら...!!」

「見えてきたかもしれないですね...」

「うんっ!!」


バッ


距離を取っていたリンさんが再度体を密着させてきます。

温かいですね。

まだこの季節は夜、冷えますから。

移動中、痛い思いをしてまで下着の中に仕込んでおいた甲斐がありましたね。

コンセントタップ型でしたらとっくにご愁傷でしたね(苦笑)。

(笑いごとではありませんよ)


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