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10/10

〈10〉結衣さん...しっかりしてくださいよぉ...(これはお仕置きが必要ですね...(ニュ、ニュフフフ...))

「そろそろ高速降りて!」

「やんすッ!」


それ...わざとやってません...?


「こっちの方行けるか!?」


志乃さんが後部座先から身を乗り出してカーナビを操作します。


「こちらは倉庫街ですが...」

「いいから頼む

入り口まででもいいから」

「...いんや!乗り掛かった舟ですからねェ!最後までお供させてくださいよ!」

「...いいのか!」

「もちろんで...」

「「やんすッ!」」


なにを意気投合しているのでしょうか。

そんな会話や茶番に付き合っていられるほど私には余裕がないのです。

だって今まさに志乃さんの立派なお尻が手の届く場所に...!!

ハンカチを落としたふりをして顔を近づけてみたり...揺れに合わせて肩をぶつけてみたり...

ああもう忙しいったらありゃしません。


「黒江さん...移動早くないですか...?」

「ああ...でも自分たちがもたもた走り回ってる間に十分時間はあっただろうな」

「そうでしたね...私がバテていなければ...」

「...いんや

木村さんが居なければ凛華お嬢様はもうとっくに...でしたよ」


なにがとは...言いたくも考えたくもありませんね。


「改めてありがとう 木村さん」

「いえいえ私は...」

「それと、初めに会った時の無礼はすまなかった」

「いやいや...あれくらい警戒してくださらないとリンさんを任せられないですしね...」

「ふっ そうかもな」

「それでリンさんの場所は…」

「ああ、結衣によれば……」


私と志乃さんはお互いの顔を近づけて端末を覗き込みます。


「倉庫…ですか…これはまた…」

「そうね…ほんとゲスの極みだわ」

「リンさんが心配ですね…」

「ああ」


私、実は、NTR属性持ちなのですよ。

リンさんは私ものではないので厳密には違うのかもしれないのですが…。

それでも「行け、黒江!」と思ってしまう悪い子が私の中に居ないとも限らないようです。


「うっわ〜!めんどくせぇとこだなおい」

「どうしやすかお客さん方...」

「うーん…」


キイィィ


「志乃せんぱーーーぁい!!」


昼前に私が拉致監禁されました恐怖の車です。

ですが、開け放たれた運転席の窓からは可愛らしいツインテールがなびいております。

おギャップ萌えというやつですか…?

いつの間にかお天道さんは眠たそうです。

暗くなるといよいよ厄介ですね。


「結衣!!」


彼女が結衣さんみたいです。


「ありがとおっちゃん!」

「ええ!お代はけっこうや」


ドスン!


「好きにしやがれ」

「ひ、ひええぇぇ〜」


札束のピラミッドです。

日本屈指の財閥?である琴峰グループにとっては小遣い程度だということでしょうか…。

私にください(切実)。

それと、志乃さんが昭和のスケバンさんみたくなっていますね(苦笑)。


「ほら行くぞ 木村さん」

「はいぃ…」


「ああの…ありがとうございました…」

「ま、またのご利用をぉぉ〜…」


運転手の薄田さんが参ってしまっていたので、その隙に無造作に置かれたそれらの美しすぎるお札を3枚ほどいただいてから志乃さんの後に続きます。


「こ、この人は誰ですか!」

「こいつはおじさんだ!(ドン)」


志乃さぁん…。


「そうですか

あの昼の輩ですか」

「あの…今は…」

「ふんっ!

乗りたきゃ勝手にすれば?」


うぅ…。

おじさんへの対応が酷いですよ…。

というかそんなことはどうだってよくてですね...。

この結衣さんはロリタイプみたいです。

声も見た目の発言も…

うへへ…たまらんですね…。


「おい木村!」

「ひいぃ…私は決してロリコンでは…」

「あ?なに言って…」

「志乃先輩こいつ置いてきません?」

「ああそうだな」


バタン

ブウゥゥン


え……っと?

それ普通本当に置いていくことあります?


ピュウウゥゥ


「うっ…寒い…」


海が近いのでしたっけ。

いくら最近は暑いといえども夕刻には冷えますね…。

リンさん…今裸なのでしょうか…。

寒そうですね…。


.........


「うぅっ......」


ピルルルル


リンさんっ!?

なはずないですよね…。

そんなに好都合なこと…。


「はい高橋さん?」

「ねぇ木村くん今大丈夫!?」

「…大丈夫じゃないかもしれないです…」


高橋さん…あれ以来連絡はしていませんでしたが…。

息遣いが荒いです。

どうやら興奮しているようです。

これであのクソデブ...お太りになった上司の腰の上、などからなのかも...と思うとなんだか非常に...

非常に興奮しますよね。


「じゃあオッケーってことね!」

「はい……?」

「私ね、さっき見つけちゃったのよ!」

「イケメンをですか…?」

「…は?」

「あすみません…」

「違う違う!あのお嬢様よ!

琴峰グループの…!!」


おい真ですか?


「さっきね、真っ黒の高級車がブンブンスピード出しててね!

あっぶねーなーおいって思って信号で止まってるときにふと見たら居たんだよ!

いや〜あれは絶対…私の目は…ぶつぶつ…」


……。


「高橋さん今どこに?」

「えっ?**島の方だけど…」


人工島?

今私たちが居るのとは全くの逆じゃないですか。


「その車追えます?」

「え?どうしちゃったの?急に

あっ!やっぱり木村くんも懸賞金…」

「追えますか!」

「えっ…」


つい声を荒げてしまいました…。


「えっと…この先はずっと大通りだから…」

「追ってください頼みます…」

「…分かったわ」

「ありがとうございます…」

「なにか事情があるのね?

その代わり今度ご飯おごって…」


プチッ

タタタタタッ


「薄田さん!!」

「はへぇ〜…」

「ほそしぃ!!」

「はいい!!母ちゃん!!

あっ、お客様…」

「**島まで緊急最速フルパワーで!」

「え、と…」

「金は足りてるだろ!

早く!そして速く!」

「か、かりこまりぃ〜〜!!!」


グルルル

ブゥゥーン


「はあ……」

「お客さん、大変ですねぇ」

「ええまあ…

先ほどはすみませんでした…

声を荒げてしまい…」

「いえいえ、それだけ大切なことなのでしょう

驚きはしましたがね」

「あはは…」


それにしても結衣さんはドジっ子ですか…?

可愛いですが…使えませんねぇ。


・・・


プルルッ

ピッ


「うお早っ!」

「高橋さん!」

「え、ええ…」

「それでその車は!」

「なんかすっごい家に入って行ったわよ

こんなところにこんな豪邸があったのね…」


豪邸…ですか?

**島ですよね?

工業地帯ではなかったのですか…?


「本当にありがとうそございます…

流石です...」


あんなクソみたいな会社にはもったいないくらいのしごできさんでしたからね。

私と一緒によく仕事を押し付けられたものです。

私に対する方があたりが強かったですが...。


「ふ、ふんっ

もし私がこれで捕まったら責任とってよね」

「もちろん…です…」


おそらく黒江さんのお車…。

必ずと言っていいくらいの可能性でスピード違反だったはずですが…。

高橋さん…ありがたいです。


「すぐに行きますので絶対に踏み込まないでくださいね...」

「う、うん...」

「またなにかあれば...」

「変わったよね」

「へ...?」

「木村くん、こんなに熱くなることなかったのに」

「そうでしたかね...」

「もーそうだよ

私がどれだけあなたと一緒に居たと思ってるのよ」

「...そうですね...」

「今は聞かないであげる

でもなにかあったらいつでも話聞くからね」

「はい...ありがとうございます」

「ふんっ まだ終わってないんでしょ」

「そうですね」


高橋さん...都合のいい女......(ボソッ)

おっとっとっとっと。

大変気の利く方ですね(苦笑)。


「薄田さん...あとどれくらいですか...」

「ちょっとお客さんさっきからそわそわしすぎっすよ

もうあと10分ほどで着きますからね」

「ああ...すみません...」


・・・


「ストップで」


キイイイィィ


「ここまでで大丈夫です...

本当にありがとうございました...」

「いやいやいいんですよ」


薄田さんは手拭いで額の汗をぬぐいながらカーナビ?メーター?をいじっています。

本当に運転手に恵まれましたね。


「ほらっ」

「...えっ......」

「こんなお金、しょぼくれた爺さんには必要ねえさ

お客さんの方がいい使い道、知っとるんやろ」

「......薄田さん...」

「ははっ...木村さん、でしたっけ

気が合いそうですな」

「今度ぜひお礼に...」

「ああ、ほら行った行った!

なんか急ぎの用があったんやろ!?」

「...またどこかで...!」

「おうよ!」


ダッダッダ


薄田さん...。

「俺はお前を忘れない...!!」

いい人すぎます。


ポチッ


携帯をマナーモードに切り替えます。

どんなミスで気づかれてしまうか分からないですからね。

あらかじめ高橋さんには位置情報を送ってもらったうえで、離れるように頼んであります。


ススス...


普段影の薄い私ですが、人も通らないような工場、倉庫、冷凍庫?周りでは流石に動くだけで目立ちます。


デデーーン


お、おお...。

私の何十倍も目立つ建物がありました。

街灯も少ない人工島の闇に対抗するかの如く放たれた煌々とした光...。

びっちりと刈り取られた芝に並ぶ高級車...。


――琴峰運輸(株)物流センター――

――黒江物流(株)第三倉庫――


.........。


気づけば琴峰と黒江の文字に囲まれていました。

これは確かにこの豪邸も納得です。

それにしても......。


「これからどうしましょうか......」


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