話題の女の子
雄哉には付き合っている女の子がいた。通っている高校の同級生、稲子だ。とてもかわいくて、このクラスのアイドルのような女だ。クラスでも人気があり、学級委員を務めている。活発で、頭がいい。部活はテニスをやっていて、男子生徒の注目の的だ。
「どうしたんだよ」
雄哉は横を向いた。そこには同級生の森下がいる。森下も稲子が気になっているが、付き合おうとは思っていない。そして、雄哉が付き合っているのを知っている。
「あの稲子ちゃんが気になってね」
「かわいいよね。まるでアイドルみたいだよ」
森下もアイドルのようだと思っていた。見た目がそうだし、行動もそれっぽい。
「そうだね」
森下はクラスを出ていった。もう今日の授業は終わった。帰ってテレビゲームでもしようかな?
翌日、今日は休みだ。雄哉は駅前にいた。今日は稲子とデートをする日だ。雄哉はワクワクしていた。稲子とデートをするのはこれで10回目だけど、今でも緊張する。このまま稲子のハートを射止めて、結婚まで持ち込めたらいいな。その為にはかっこいい所を見せないと。そして、約束は守らないと。
「もうすぐだったな」
「お待たせ!」
雄哉は横を向いた。そこには稲子がいる。稲子は黄色いスカートを着ている。かわいいけど、すごく目立つな。何か理由があるんだろうか? この色が好きなんだろうか?
「ああ、稲ちゃん」
「今日はここに行きましょ?」
「うん」
2人は半蔵門線に乗り、押上に向かった。これから東京スカイツリーに行く予定だ。2人で行くのは初めてだ。どんな1日になるんだろう。お互いワクワクしていた。車内は閑散としている。混雑している平日の朝がまるで嘘のような静けさだ。その中には何組かの家族連れもいる。彼らは東京スカイツリーに行くんだろう。
2人は東京スカイツリーにやって来た。東京スカイツリーには多くの人が来ている。すでにチケットは買ってあって、予約してある。並んでいる人がいるが、2人には関係ない。そのままエレベーターに向かうだけだ。
2人は天望デッキにやって来た。天望デッキには多くの人が来ている。2人はその端にやって来て、東京の景色を見た。とてもいい眺めだ。建物がまるで模型のように小さく見える。
「いい眺めだね」
「うん」
と、雄哉は稲子を見た。稲子は首をかしげた。何か言いたい事があるんだろうか?
「ねぇ」
「どうしたの?」
「君って、アイドルみたいだね」
それを聞いて、稲子は少し笑みを浮かべた。照れているんだろうか? なにか思い立つ事があるんだろうか?
「本当? ありがとう。本当にアイドルなのよ」
「えっ、マジ?」
それを聞いて、雄哉は驚いた。アイドルみたいだと思ったら、本当にアイドルだったとは。どんなアイドルなんだろう。気になるな。もしライブがあるんだったら、行ってみたいな。
「うん。今度、ここでライブやるから、来てみない?」
そう言って、稲子はライブのある場所を記した紙を渡した。紙によると、そのアイドルの名前は『KTN55』というらしい。聞きなれない名前のアイドルグループだな。その他に、雄哉は気になった事がある。場所が志鴨稲荷なのだ。どうして稲荷神社でライブなんだろうか? ちょっと奇妙だな。だけど、行ってみたいな。
「うーん、また考えとくね」
「ありがとう」
雄哉はそのライブに行ってみる事にした。ライブは来週土曜日だ。この日は休みだから、行ってみようかな?
来週の土曜日、雄哉は志鴨稲荷にやって来た。志鴨稲荷は行った事がない。稲荷神社には多くの稲荷像があり、異様な光景だ。今日はライブがあるためか、屋台が多い。そして、多くの人が来ている。彼らはKTN55のライブを見に来たんだろうか?
「えーっと、ここだったな。けっこう集まってるな・・・」
雄哉は場所を確認した。確かにここと聞いた。本当にここでやるんだろうか? とても疑わしい。だけど、稲子がここでやるって言ったんだから、そうだろう。
「どうして稲荷神社なのかな?」
だが、彼らを見て、雄哉は何かに気付いた。みんな、キツネの尻尾のストラップを付けているのだ。
「えっ!? 尻尾!?」
と、音楽が聞こえ、ライブが始まるとのアナウンスが聞こえた。これから稲荷神社の本堂でライブが行われるそうだ。
「あっ、始まった!」
雄哉はステージにやって来た。ステージの上には、KTN55と書いてある。
「えっ、KTN55?。な、何だろう。初めて知ったアイドルグループだな・・・」
一体どんなアイドルグループだろう。雄哉は首をかしげた。
と、ライブが始まり、55人のアイドルがやって来た。彼女たちを見て、雄哉は驚いた。なんと、キツネの耳と尻尾が生えているのだ。これはどういう事だろう。まさか、KTNとはキツネという意味だろうか? だとすると、55とはコンコンという意味だろうか?
と、雄哉は稲子を見つけた。確かにあの子は本当にアイドルだ。とてもかわいいな。
「あっ、あの子か!」
雄哉はすっかり見とれてしまった。あっという間に稲子のとりこだ。デートの時よりも、ずっとかわいい。
「か、かわいい!」
と、雄哉の体がおかしくなった。何かが頭から生え、尻から何かが出ている気がした。雄哉は違和感を覚えた。今までにない感覚だ。明らかにおかしい。
「あ、あれっ・・・」
雄哉はスマホで自分の顔を見た。すると、頭からキツネの耳が生えている。そして、雄哉は振り返り、自分の尻を見た。すると、キツネの尻尾が生えている。
「うわぁぁぁぁぁ、尻尾が生えてる!」
突然、雄哉は転んだ。雄哉は目を閉じてしまった。目を開けると、そこはいつもの静かな志鴨稲荷だ。何だろう。夢でも見てたのかな?
「あれっ!?」
「驚いた?」
雄哉は振り向いた。そこには稲子がいる。あれっ、今さっきの稲子は何だったんだろう。夢で見てたんだろうか?
「うん・・・。き、君、こんなアイドルだったの?」
「うん。驚いたでしょ?」
呆然としている雄哉は稲子の尻を見た。すると、尻尾が生えている。そして、稲子の顔を再び見ると、キツネになっている。まさか、あれは正夢だったのか?
「お、驚いた・・・」
雄哉は開いた口はふさがらなかった。稲子がこんなアイドルだったとは。でも、誰にも言わないようにしよう。言ったら、どうなるかわからないから。