この”世”の住人。一人目、藤本 響(フジモト ヒビキ)23歳。
この小説はフィクションであり、出てきた人物は方に関係ありません。
また政治のことに触れていますが、実際の政治に意見を出したりしているわけでもございません。
何卒、ご了承ください。
私は、この人生でやりたいことがない。
毎日仕事をしてはご飯を食べ、また仕事をし、家に帰り、眠りにつく。
次の日も。またその次の日も。ただただ平々凡々な生活を送っている。
家族がいるわけでも、恋人がいるわけでもないので、私がなぜ仕事をしているのか、そして私は何のために生きているかすら分からない。
昔はそこまで高くなかった税金も100年ほど前と比べれば約5倍も増えているらしい。
まぁ、私はそんなに昔の世界を見たことがないから、本当のことか否かわからないが。
手取りも糞みたいな量で、一日一日を生きるのが精一杯だ。
政治家どもは我ら一般人から巻き上げた金で、毎夜宴を開いている。
こんな生き地獄のような生活はもう懲り懲りだ。
日本をこのような世にした政治家どもを一人残さず抹殺したい。
そんな考えを持った奴隷のような人間が血眼となってナイフやバットを片手に、政治家の家に乗り込んだり、宴に乱入したり、国会の中に忍び込んだりもしていた。
彼らの標的は皆同じで、この日本を糞みたいな世に変えた主となった人物、新木だ。
だが、彼らの思いは無念にも散っていった。なぜなら新木の周りは警備がとても厚く、新木に手が届いた者は誰一人としていない。
噂によると、新木を暗殺しようとして実行したものは皆、処されるだの、下僕としてひどい仕打ちを受けるなど、耳が痛くなるような話ばかりだ。
ただ、このまま新木の思うように掌で転がされ続けては希望の光の筋すら見えない。
なので、私もこの国、そして同胞のために動こうと思う。
だが私は殺し屋でもなければ、どこぞの諜報機関の者でもスパイなどでもない、生きる意味すら失っているただの一般日本国民だ。
暗殺の計画がばれたり、暗殺決行時に大きなミスをしでかしたりしてしまったら、私は結局何もなかった糞みたいな人生ということで幕を閉じてしまう。
なんなら、生まれてきたことすらデータ上で消されてしまうかもしれない。
「まぁ、どっちにしろ同じような人生だな。」
私は自室でそう呟き、新木を暗殺する計画を緻密に考えた。
まず大前提として、新木の警備員は全員89式5.56mm小銃を持ち、常に警戒している状態である。
そこにナイフ一本持って行ったところで捕まるか、最悪・・・
いや、そんなこと考えたくもない。
頭を捻らせていると私はふと、一人の友人を思い出した。
彼の名前は北川。最近はたまに飲みに行くほどしか会う機会がないが、若いころは毎日のようにどちらかの家で遊んでいたほどの仲だ。
北川は今新木の使う、宴の会場を設計した人物なのだ。
私は北川に連絡をして、後日会う約束をした。酒でもどうか、と。
二週間後、私は北川とそこまで目立たない居酒屋で飲みながら、宴会場の設計図を見せてくれないか、と尋ねた。北川はこう言った。
「宴会場の設計図を見て何になる?・・・もしかしてお前も新木を!?」
北川は今までに何人かに設計図を渡していたらしい。続けて北川は、
「お願い・・・だ、お前だけは居なくならないでくれ・・・」
彼は涙ぐみながら私にそう訴えかけた。北川はこれまで設計図を渡したことで、何人もの友人を失ってしまったらしい。しかし、ここで引き下がってはいられない。
「北川、お願いだ。私は必ず成功させる。そして私たち、否、全国民を新木から救い出す。」
「その言葉、何人からも聞いた!でも一人として戻ってこなかった!だからもう嫌なんだ!」
「落ち着いてくれ。私は君を裏切ったりはしない。幼稚園からの仲だろ?」
北川は涙を拭き、しばらくの沈黙の後、か細い声で一言、
「裏切るなよ・・・」
北川は金を置いて足早に店を出た。私はこれでよかったのだろうか。
八日後、私の郵便ポストにA3の紙が三枚、B5の紙が一枚、入っていた。
A3の紙には会場の地下、一階、二階がそれぞれ書かれていた。
少しばかり分かりにくいが、ダクトや下水道などもその紙には描かれていた。おそらく手書きで書いたのだろう、これだけ黒鉛で書いてある。B5の紙には北川からの手紙が書いてあった。
「お前を信じる。お前なら必要かもしれないと思って、ダクトと下水道を手書きだが付け足しておいた。必ず、帰ってこい。元気な響の姿で。」
私はもう後戻りはできないこの状況にとてつもない不安感を抱いた。
だがそれより、北川への感謝と、新木への憎悪が増していった。
この設計図を頼りに私は再度計画を練った。何時間もの時間を費やして。失敗は許されないのだから。
自分なりに完璧な計画が出来た後、武器の制作やシミュレーションに何日もかけた。
私の計画はこうだ。
ダクトで新木のいる部屋まで行き、換気口から自作の装弾数一発限りの拳銃を新木の頭を目がけ、撃つ。
ないとは思いたいが、外れたり、大事には至らなかったら、換気口から飛び降り、ハサミほどの長さしかないナイフを新木の首にかけ、切る。こうなってしまったら逃げれない。北川には申し訳ないが、そこで私は・・・
否。失敗しなければいいのだ。必ず、成功させるのだ。
私はひと月かけ、銃の精度を高めに高めた。10メートル先の標的に当たる確率、70パーセント。
これが限界だった。それに、これ以上のテストはやっとで手に入れた火薬がもったいない。
私は決行日を三日後の夕暮れにし、それまで北川に手紙を書いたり、最後になるかもしれない食事を楽しんだ。
決行日。自作の銃をもち、ナイフを持ち、協力してもらったとわからないようにするため、手紙などはすべて焼き捨てた。心が痛かった。
ダクトへ入り、新木のいる部屋に向かった。
着いた。新木は・・・いた。私はそっと拳銃をとりだし、換気口を銃口が入るほどの穴があるか確認したのちに、暴発を防ぐために入れていなかった弾を取り出した。音を出さないように、そっと、そっと。
しかし、神はそんな私を手放した。私は暗いダクトの中で弾を込める場所がわからず、弾を排気口から下に落としてしまった。
新木の警備はすぐこの事態に気づき、私の存在がばれてしまった。警備員は慣れたような口調で、
「暗殺者が潜んでいる!おそらくダクトの中だ!」と声を上げた。
その後警備員は新木を避難させ、トランシーバーで仲間に状況を知らせ、会場を包囲した。
私は来た道を戻るのは後ろ向きになり遅くなってしまうので、ただひたすらに匍匐前進した。
焦りのせいで頭の中は混乱し、設計図を思い出すことができず、どこだかわからない部屋についた。ダクトをドローンが飛んで私を見つけようとしている。だんだん後ろから音が近づいてくる。
私は部屋に入る選択肢しかないと思い、排気口をこじ開け、部屋に入った、排気口のふたを抑え、あたかも何もなかったかのようにすると、ドローンの飛ぶ音は遠くへ消えていった。
私はため息をついた。一安心した。いや、したかった。私の潜入はばれているのだから、もう逃げるしかない。幸い顔はまだわかっていないのだから。
逃げ道を探そう。私は警戒しながらどこからか出れないか、探しに探し回った。
だが、私の運はそこを尽きていたようだ。警備員に見つかってしまった。
ああ、ここで私は終わりか・・・。そう思った。だが警備員が一言、
「逃げるぞ、この服を着るんだ。響。」
初めて投稿をします。
これから不定期で小説を投稿していきたいと思います。
ほぼ自己満です。(笑)
文才はないですが、どうか温かい目で見ていただけると幸いです。




