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村の周辺には、中々に立派な森林が生い茂っている。


 そのためか、村人たちはみんながみんな、農作業をしがてら、木工製品を作っている。


 村人のなかには、それはそれは美しい幾何学模様の木工製品を作れるが、たいていは日用品しか作っていない。


 今も、村人たちはせっせと椅子を作りながら、この前来た研究者たちの悪口で大盛り上がりであった。


「ほんと、頭のいい連中は困ったもんだな」

「俺らのことも別の動物だと思っているのかも知れねえぞ」

「動物なら保護してもらえるから、動物以下だと思われているな」

「俺らも貴重になれば、保護してもらえるかもだぜ?」

「んなの、こっちから狙い下げだ」


 笑いあう村人たち。


 そんな彼らに、ちょこちょこと子供が近づいてきた。


「ねえ、みんな」


 子供だというのに、少年の声はどこか落ち着いていて、大人びている。


 まだまだ六つだが、頭も切れるし体力もあるので、大人からも一目置かれている。


 何事にも動じない少年のはずだが、今の彼は、ちょっぴり戸惑っている。


「どうしたんだ?」

「えっと……。あれ、なんだろう?」


 少年の指差す先をみると、


「……なんだ、あれ」


 子供は小首をかしげる。


「あの女の人って、聖霊の森の研究者さんだよね?」


 そう、ロペが見張らしよい草むらで、じっとしゃがみこんでいた。


 頭に葉っぱを乗せて。


「……」

「……」


 一同、無言。


 最初は驚きの感情からのだんまり。


 次は戸惑いからのだんまり。


 それらが過ぎたあとは、『あれ、どうするんだ?』『誰が対処するんだ?』とお互い探りあうだんまり。


 結局、その集団内で一番年上が貧乏くじを引いた。


「おいあんた。何をしているんだ」


 ロペはびっくりして目を見開き、スケッチブックに書き込む。


『見つかってしまいましたか』


 見晴らしのよい原っぱで、ロペは堂々とそんな文言を書きました。


 村人たちは、本当に隠れる気があったのか、あれでは子供のかくれんぼでも一瞬で見つかるぞと突っ込みを入れそうになった。


 だが、相手はよそ者、それも招かれざる客である。


 グッとこらえて、年長者はぎろりと睨み付ける。


「そういえば、前に来たときも一言もしゃべってなかったな。俺らとはしゃべる気もないってか?」


 ロペはぶんぶんと首を横に振る。


 すらすらとスケッチブックに書き、ひょいとみせる。


『大変申し訳ありません。私は生まれつきはなすことができないのです』

「……お、おう。そうか」

『ですが、体力はあります』


 ロペはムキムキポーズをする。


「……お、おう」


 そうとしかいえない。


「……そ、それで、なんのようで来たんだ」


 ロペは大きな字でスケッチブックをうめます。


  スケッチブックには、こう書いてあった。


『仲良くさせてください』

「……はあ?」


 男の顔が強張る。


「断る。俺らを懐柔しようとしても無駄だぞ」


 ぺっと唾を吐く。


「分かったら、とっとと消えろ、植物人間」


 ロペはスケッチブックを開きかけましたが、そっと閉じると、ぺこりと頭を下げて、とぼとぼ歩いていった。


「ったく。もう二度と来るなよ!」


 これだけ拒絶したら、もう来ないだろうと村人たちは考えていた。


 ……のだが。


 翌日。


 ロペは、またそこにいた。


 今度は頭に花を乗せて。


 もう触れないぞと、村人たちは無視をした。


 村で飼っている猟犬たちが、なんだこいつとキャンキャン吠えるも、それも抑えて、徹底的に無視をきめこむ。


 しかし。


 ロペは翌日も、翌々日も、一週間後もそこにいた。

 

 頭の飾りはいつも違っていた。


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