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 ロペはあっさりカフジの挑発に乗っかった。


 目覚めたハンターを追って、彼女がやってきたのは、国立公園の近くに位置する小さな村だった。


 ロペは険しい表情で、カフジの袖を引く。


 そのまま公園から出ようとする彼女を、カフジは慌てて制止する。


「待て待て。俺の首輪を忘れてないか? 公園から出ると爆発するぞ」


 本当にロペは忘れていたらしく、ペコペコと頭を下げて、首輪を触る。


 かちり、と音がして、首輪のロックが外れる。


「……」


 ロペは首輪を木のそばに置いて、ぐいぐいカフジを引っ張る。


「お、おい。……ったく……」


 仕方なく、一緒にいってあげる。


 村に入ると、子供たちが足を止めてじっとこちらを睨んできた。

 

 どの子も、布なのか服なのか判別できないボロを着ていた。


 ちゃんとしたご飯を食べていないのか、痩せている子供が目立つ。


 家の作りも粗末で、嵐でも来れば倒壊してしまいそうだ。


 屈強な男が、警戒心をむき出しにして立ちふさがる。


「見たところ、公園の研究員さんだが、何しに来たんだ」

 

 ロペはスケッチブックを開く。


 しかし、ロペが記入する前に、カフジが口を開いた。


「密猟者を追って、ここに来た。匿っているのなら、とっとと突き出してもらいたい」

「……さあ、知らないな。知っていても、従うつもりはないな」

 

 ロペは眉を上げる。


 村人はちらりとロペを見て、ふんと鼻を鳴らす。


「貴重な動物様を守るためには、密猟者を無償で差し出せと? 俺等から土地を奪っておいて、何様のつもりだ」


 気づけば、二人は村人たちに囲まれていた。


 群衆の一人が吠える。


「俺等は精霊の森で動物を狩猟して生活していたんだ。それなのに、勝手に国立公園に指定して、入っただけで牢屋行きなんぞ、勝手すぎる!!」


 そうだそうだ、と群衆が同意する。


 女性が子供をぎゅっと抱きしめ、悲哀の叫びをあげる。


「私たち家族が大切に育てていた畑が、公園の草食動物に荒らされてしまいました。ですけど、研究所の人たちは、公園の近くに畑を創るのがおかしなことだと言って、取り合ってくれません。なにが貴重動物ですか。私達の畑を返してください!!」


 子供はひどく大人びたように、母親をぎゅっと抱きしめる。


 ロペは、


 ……何も、動けなかった。


 ただただ、村人の悲痛な叫びを、悲痛な現状を、見聞きすることしかできなかった。


 村を追い出され、とぼとぼと歩くロペ。


 カフジは、彼女の手を強引に引っ張ると、彼女の怪我に響かないよう、流れるように地面に転ばせる。


 目を大きく見開く彼女に、カフジはささやく。


「首輪がない今、俺は隙をみてトンズラできる。するとどうだ? 俺自身は人間を襲う気なんてないが、吸血鬼を解放されたと知られれば、村人はいつ襲われるか怯える羽目になる」


 カフジは彼女を解放するも、ロペは横になったまま動かない。


「動物保護なんて大層な意気込みだが、生きるのに必死な同胞のことも考えてみな」


 カフジは木のそばに置いていた首輪をはめる。


 ロペは上体こそ起こすも、唇を噛みしめてじっとしている。


「……ずっと座っているつもりか? とっとと帰らないと、日が暮れるぞ」

 

 思ったよりもショックを受けていて、カフジはやりすぎたかも、と少々後悔する。


 手を差し伸ばすと、ロペは彼の手を掴んで立ち上がる。


 けれど、服の汚れも落とさず、沈んでいる。


「……怪我。治療してもらえ」


 その一言に、ロペは小さく頷いた。

  


 

 


 


 


 

 







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