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 ロペはパチパチと目を瞬く。


 スケッチブックを取りだそうとするも、精霊はやんわりと制する。


『心配ない。君の心は読めている。精霊は滅んだはずではないか、と言っているのだろう?』


 ロペは慎重にこくりとうなずく。


『この世に人間があまりにも多く生まれてしまったからな。それだけなら別に構わないが、人間は持ち前の好奇心で我々を捕獲しようとしはじめたからな。人間ごときに捕まる我らではないが、余計な争いをするくらいならばと、姿を晦ませて絶滅を装ったのだ』

「……そんな精霊様が、人間に化けて何をしていたんだ?」


 カフジは疑惑の視線を向けるも、精霊はまるで子供の駄々っ子を見つめる母親のように、優しく微笑む。


『我は昔、あの村のものと仲良くしていたからな。人間の中に入って、彼らとともに生きていた。だからな、精霊の森が国立公園とやらになって、村人たちの心が陰ってしまったときには、どうしようかと悩んでいた』

 

 精霊は昔を思い出すように、遠い目をする。


『国立公園をつぶしてしまうか、もはや国そのものをつぶしてしまうか。しかし、動植物を守る目的を崩すのは良くないのではないか、潰すべきは村人かと熟考していたんだ』

「……」

『吸血鬼よ。そう警戒するな。いまはそんなつもりはない』


 くすくすと笑う。


『ロペよ。君が現れてから、我は考えを改めた。君は村人のことを理解しようと努力し、村と公園の架け橋となった。君の働きへの感謝の気持ちとして、今回手助けしたのだ』


 ロペは素直にぺこぺこと頭を下げる。


 言葉が喋れずとも、お礼を言っていることがありありと理解できる。


『だが、今回だけだ。次からは、君たちが頑張って撃退するのだ』


 もちろんとばかりに、ロペは頷いた。


「いや、自分の迂闊さを考えてから答えろ。次同じことが起きれば、どう考えても同じ目にあるだろ」

「……」


 ロペは目をそらす。


「おい」


 精霊はニコニコ笑う。


『なら、君が守ってあげれば良い。君等はとてもお似合いだ』

「……ったく」


 舌打ちをするも、まんざらでもなさそうだ。


 精霊は全て分かっていると言いたげに笑うと、ロペのもとへとゆく。


『これから君等の前に現れることはない。だが、最後に我からプレゼントだ』


 ちゅっ、とロペの額に唇を落とす。


『精霊のご加護だ。悪しき者を遠ざけ、幸運を授けるまじないだ』


 ふんわりと微笑むと、精霊は光に包まれていく。


『人間よ。君らの歩む道は険しい。だが、我は君等を応援している』


 それだけを言い残して、精霊は消えていった。


「……なんだか、すごいヤツにあっちまったな」


 ロペもこくりと頷く。


「……ともかく、一旦研究所に戻れ。それから、傷口の手当だな。それが終われば、お説教だ」


 カフジは腰に手を当てる。


 精霊の登場で有耶無耶になった感はあれど、首輪を外さず、いらぬ怪我をしてしまったロペに怒っていた。


 しかし、ロペは後悔した様子はなく、スケッチブックを取り出す。


 ロペはでかでかと、こう書いた。


『ありがとう、本当にありがとう』


 純粋なお礼に、カフジはついつい赤面した。


「い、いや、お礼よりも、違うものをよこせ」


 しっかりと後悔してほしいと言外に伝えていた。

 

 だが、ちゃんと伝えていなかったので、ロペは勘違いをしてしまった。


 カフジはお礼を求めている。


 村にいけば、ムラサキ草が手に入り、彼が好きなお茶をつくれる。


 けど、彼は今すぐに欲しているらしい。


 ロペは一生懸命考え、ええいままよ! とある行動に出た。


 ぐいっとカフジに近づく。


「な、なんだよ」


 ロペはちょっと恥ずかしかったが、つま先立ちをして、


 ちゅっ、と額に口づけした。


「…………へ…………?」


 ロペは顔を真っ赤にして、スケッチブックに書く。


『おまじない、なんだよね?』


 どうやら、ロペは間違った知識をインプットされたらしい。


「……よし分かった。それ、絶対に他のやつにやるなよ。いいか? やるなら、俺だけに、」


 そこまで言ってしまって、カフジは口に手を当てる。


「い、いや、何言っているんだ俺!?」


 ロペはそろそろとスケッチブックをめくる。


『カフジ以外には、やりたくないから、わかったよ』

「…………け、怪我! 怪我の手当! しにいこう!! いやー、なんか暑いな! 気温でも上がったかもしれないな!」


 ロペも顔を赤くして頷いた。


 まだまだお互いの気持ちに気づかない二人を、


 精霊は、ニコリと笑って見つめていた。


 

 

 

 


 


 



『』















 ここまで読んでいただいた皆様、誠にありがとうございました。

 またお会いできましたら、幸いでございます。

 それでは皆様、素晴らしきなろう生活をお送りくださいませ!


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