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5.人殺しになっても

5.人殺しになっても


連続の銃声で、耳鳴りが酷かった。戦争が終わる頃には難聴だろう、塹壕にいた時は死人の服を少し拝借し、洗い、耳栓にしたりもしていた。

だから、耳鳴りのせいで背後でライフルを構えるドイツ兵が分からなかった。

俺のせいだ、俺のせいで、彼女を人殺しにしてしまった。

ボブほどの髪と軍服を血で濡らしている彼女はKar98kのボルトを手前に引き、廃莢をしていた。

「・・・すみません」

彼女は真顔のまま私に口を開いた。

「謝るのはこっちの方だろう、クリンコフ。私のせいだよ」

そう言いながら彼女はKar98kを投げ捨てた。

「仲間を助けたいという兵士ではない様な思考回路、任務を捨てる発言、行動、兵士として失格だな。そして、君を危険にしてしまった・・・人としても失格だ。すまなかった」

そう言いながら督戦隊員は私が使った半自動小銃にクリップで連結された7.62x54mmR弾を装填し、右のコッキングハンドルで装填した。

「いや、俺が・・・謝りたいことは・・・貴女を人殺しにしたことです」

俺は、彼女にそう言った。

俯いたまま俺は発言したので、恐る恐る前を向いたら彼女は俺の感情に対し、嫌がらせをされた少女の様な可愛らしい顔をしていた。

「私はなぁ・・・誇り高きソビエト連邦の同志だ。人を殺す訓練は受けてるし、それをどうとも思わないよ。君は私を買い被りすぎだ」

そう言いながら彼女は俺の腹の傷を見た。

「そんなことより傷を早く・・・」

「ああ、大丈夫です。幸いナイフは綺麗でしたし、内臓は避けたので、消毒粉着けて包帯巻いときゃ治ります・・・それよりも、腕の傷は?血溜まりになってましたよね」

「んぅ?血溜まり?あれは他人の血だな」

俺の心配返せよ。

督戦隊員は彼女の"遺体"に近づいていった。

「・・・この子、もう死んでたよ」

「私達が助けようとしてた人が死んでた・・・とは、この行為は意味がなかったんですかね」

「・・・そうでもないさ、基地にいるドイツ兵は全員殺せたし・・・なにより、この子をあれ以上汚したくなかった」

そう言いながら督戦隊員は彼女の髪を手ですいた。

彼女は立ち上がり、身体の埃を払った。

「さて、寄り道が過ぎた。任務続行だ。次は市街地を通る」

「命懸けの寄り道でしたね」

「はは、そうだな」

そして、俺達はボロボロの身体を引き摺りながら道を歩いていった。


 

俺達は銃弾が飛び交う市街地の中にいた。

建造物と建造物の間の先には普通のアパートの窓から狙撃してくる兵士が多数おり、顔を出した瞬間死ぬだろう。

俺は不用心に顔を出そうとした彼女の軍服の襟を思いっきり引っ張った。

「今顔出したら死にますよ、狙撃兵が2人と普通の兵士が多数いる。しかも狙撃兵は腕が良い」

「そ、そうか・・・悪い助かった」

俺は銃を左手に持ち、右手を掲げ、コーヒーカップを持ち、飲むような仕草をした。

「何をやってる?」

「運に賭けてます」

その瞬間、近い場所から銃声が鳴った。

たった2分で3発ほど鳴り、敵兵の銃声も無くなった。そして俺はそこから5分程待ち、近くにあった死体を放り投げる。

「うん、死体も撃たれませんね。同志のところへ走りましょう」

「・・・何が起きた?クリンコフ」

「狙撃支援を貰いました」

「・・・今のでか?」

「ええ、ここには()()がいるので」

俺はそう言い、彼女も共に味方が居る建造物へ走って行った。


俺はモシン・ナガンと呼ばれるボルトアクション方式の小銃を構えながら階段を登り、モシン・ナガンを右肩へ持ち替え、左の廊下に銃の照準を合わせながら構える。

質素な住宅建造物の身体の中は無数の扉で構成されていた。

「・・・おい、クリンコフ、なぜ銃を持ち替えた?」

後ろで階段からの敵に警戒している彼女が突然声を掛けた。

「被弾面積を減らす為です」

「・・・私はそんな訓練を受けてないが?」

「実戦とは最高の教材ですよ、兵士は生き残るたびに、生き残る為の独自の進化をします」

そう言い、俺は構えながら左の廊下へ一歩目を踏み出した。

彼女と共に扉を5つほど見逃し、1つの扉に俺は止まる。

その扉に軽く拳を3回ほど叩き付ける。

扉の奥から「市街地の悪魔は!?」

と聞き馴染みのある声が聞こえた。

「狙撃手」と、俺は落ち着いて答えた。

「良いぞ!入ってこい!」

そう聞こえ、俺と彼女は銃を背負い、扉を開き入って行った。

部屋にいたのはソ連軍兵士達、5人だった。

そして、全員が俺達にそれぞれの銃を構えていた。

上部に円型のマガジンが付いた奇妙な軽機関銃DP38を構えた兵士がすぐに俺達から銃口を避けた。

その岩の様な顔をした兵士は心底驚いた顔をしながら口を開く。

「・・・クリンコフ?なんでお前がここに来た?配属先を変えられたはずだろ?」

「イワノフの部隊か。実は司令部から直接任務を与えられたんだ。伝令の任務なんだが伝令のルートがここでな・・・数日居させてもらう」

「そうか、了解した。ゆっくりしていけ・・・全員新客に興味津々だろうが・・・再度周囲警戒に戻れ」

「「「「了解」」」」

残りの4人は即座に部屋の中の配置に戻り、各々が壁の穴から銃口を出した。

イワノフは俺の肩を持ちながら部屋の隅まで共に歩かされる。彼女も勿論俺に着いてこようとするが。

「男同士の会話だ、悪いが女性は外してもらおう」

イワノフは岩の様な顔を彼女相手にふんだんに使い、彼女の脚を止めさせる。

イワノフは部屋の隅で小声で俺に言う。

「・・・督戦隊の女が何故ここにいる?」

「嫌か?」

「嫌というより奇妙なんだよ・・・小隊規模で何故動かない?来る途中でお前等以外死んだのか?」

「いいや、最初から2人だ。大佐からのお望みでね」

「・・・はぁ、まあ良い。あとで珈琲を淹れてくれ、久方ぶりの珈琲だ」

「ああ、だが先に淹れる相手がいる」

「だろうな、彼女はいつもの場所だ。覚えているか?」

「勿論だ、忘れたことがない」

「了解だ、行ってこい」

俺はイワノフから解放され、ご不満そうな顔をした彼女に近づいた。

「すみません・・・機関銃手の癖に小隊長の奇妙な人間な癖に、イレギュラーな事態が起きたら説明を求めてくるんですよ、奴は」

「別に良いさ、私を置いてけぼりにするのは別に良いさ」

「はあ・・・ダルッ」

「あっ!ダルッて言うなよ!なんかお前調子乗ってないか?!」

「乗ってませんし・・・2時間程行く場所があるので此処で待っててください」

彼女の不満は更に深まったのか、それが顔にも色濃く出てきた。

「はあ?」

「じゃ、行ってきます」

「あ、ちょい待て!ひ、1人にしないでくれ・・・」

彼女の寂しそうな顔に俺は思う。

ボルトアクションライフルを即座に構え、ドイツ兵を撃ち殺し、俺を助けてくれた彼女はどこに消えたんだ?と。

まあ・・・まあ、そんな彼女も良いのかもしれない。

「無視しますね」

だが俺は無視して部屋から出た。

彼女の喚き声が背後から聞こえた気がしたが、それも無視することにした。

彼女の存在がよく分からなくなってきた。

戦場において彼女はイレギュラーすぎる、なんだろう。

心が落ち着くというのだろうか・・・もし仮に俺が戦場から生き残って普通の生活に戻っても、落ち着くと言うことはないのだろう。

荒み切った心に無理矢理ヤスリをかけても、凹凸が無く綺麗に見えるかもしれないが、心は擦り減ってる。

俺にとってはそちらの方が恐らく地獄だろう。

だから、やはり俺はここで死ぬべきなんだ。

無限とも言える絶望の沼へ堕ち続けるぐらいならば。

そうだろ?なぁ。

自己との対話も程々にし、俺は砲撃やら何やらでボロボロになったビルに行き着いた。

そして、前と同じ様に階段に登る。

今回は右の廊下へ銃口を出す為、左肩へ銃を持ち替え、足音を鳴らさない為ゆっくりと歩く。

"いつも"の場所へ俺は近づきつつある、口角が上がりそうなのを今は抑えろ。

そして、他より少しだけ埃が被ってないドアノブが着いてある扉を見つける。

「・・・ハッ」

俺は扉を蹴り開き、部屋へ突入する。

銃口を左右に振り回すが、あるのは珈琲の匂いだけだった。

少し冷えた鉄が、俺の頭に当たる。

恐らく1発で俺の頭を吹き飛ばす、7.62mm×54Rを使用するソ連の最高傑作ライフル"モシン・ナガン"だろう。

俺の手にもある。

「さて、ソ連兵、銃とナイフを投げ捨てろ」

俺は少ししゃがれた女の声に従い、銃を投げ捨て、ベルトのナイフも投げ捨てた。

「こちらへ、ゆっくりと向け、ゆっくりだぞ」

そう言われ、俺は声の主と向かう為、振り返った。

そこにいたのは煤汚れた顔をしているが、狙撃手にしては少し長い髪の女だった。

「さて、クリンコフ・・・私に珈琲を淹れろ」

その女は凶悪な笑顔を作りながら言った。

新キャラだってよ・・・あ、久しぶりの投稿ですよ

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