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Speed Of Light

ハインリヒの仲間は彼が王子だと敢えて知らない振りをしていたため、自身の主は国王ではなくハインリヒであると豪語した。

不敬だと叫ぶ第一王子を国王は抑え、此度の狩猟大会警護を王命で出したならばどうすると問うた、すると彼等は、まずは、王太子達の護衛騎士の実力の底上げを願い出た。

「我々はハインリヒの命令しか聞かない。それが助かる法だからだ。ハインリヒが討伐を依頼されたのはベヒモス。王太子殿下殿は、ベヒモスの強さを知らないで奴を倒せる、国を守ることができる確率を下げようとされている。国王よ、この討伐が叶わなければこの国は終わりだ。」

国王は、王太子を見た。

彼等は生意気にも意見したハインリヒの部下に再び“不敬”だと騒ぎ、護衛騎士に剣を抜かせたが、国王より抗って良しとの声がかかり、ハインリヒの部下達は瞬殺で護衛騎士をねじ上げた。

「なるほど、これでは王都の守りも不安よの、狩猟日まで騎士隊の実力を底上げするよう命じる。」

狩猟日まで情けない騎士隊の訓練指南に付かされた部下達は5日遅れでハインリヒの元へと辿り着いた。

辿り着いた先で部下達がみたのは、ハインリヒと酒を酌み交わす獣人達の姿だった。

「闘う前の景気付けだ、」

獣人族の部下が間に入らなければ獣人達が王立の騎士であるハインリヒに打ち解けるのは困難だろうと考えていたのだが………。

ハインリヒは、部下達が思っていた以上に人たらしであった。

ハインリヒの名は、独特な文化を営む獣人族との交渉を成し遂げた人物としても知られるようになった。


「仮にもお前達の弟が巨大な魔物と対峙しておるこの時に高位貴族を集めて狩猟大会を開くなどどうかと思うぞ。」

父は、王太子達にそんな言葉を向けた。

「父陛下、我々はあんな魔族の血の入ったものなど、弟と認めておりません!」

「それに、魔族の姫とされたアレの母親は既に魔界に帰り、現在、アレの後見はいないのも同然。せいぜい王都の盾として死ねばよいのです!」

「死なないのであれば、そろそろ縁を切りましょう!」

「今こそ、人族としての団結力を知らしめる時ではないでしょうか!そのための狩猟大会です!」

好き勝手に言う息子達に国王は溜め息を吐く。

「言っておくが、……まぁ、よい。気を付けて行くかよい。」

「陛下は行かれないので?」

国王は、鼻で嗤う。

「お前達の言うアレは、我が息子ぞ。ベヒモスと言う国難に立ち向かう息子の無事を祈って何が悪い。」

国王の言葉に動揺した貴族はいたが王太子はいつかクーデターを起こす必要を感じていた。

しかし、そんなクーデターなど起こりようはなかった。


ハインリヒは、獣人族の戦士や仲間と共にベヒモスを無事討伐した。

当初の予想より遥かに早い解決であった。

その功績を称え、国王はハインリヒが王子であること、そして、ハインリヒの母が魔界の女王であることも公表した。

そう、ハインリヒの母はとてつもなく強かったのだ。

その強さを恐れた兄に嵌められて追放よろしくラーネポリア国王に嫁がされたが、国王はその強さに美しさを見出だし彼女を愛したのだ。

ハインリヒがいずれ魔界に来たとしても憂いなく過ごせる地盤固めをするつもりで帰郷したら、なんやかんやで女王になってしまったのだと言う。この辺りのカリスマ性はハインリヒに似ていた。

王都に向けてゆっくりと凱旋していたハインリヒは、王都より西の森で小規模なスタンピードが起こり、狩猟大会に出ていた王太子を始めとした王子3人と王子達の取り巻き、側近でもあった高位貴族が命を落としたとの報告が受けた。

「あの人達の狩猟場は近々スタンピードが起きる可能性が高いって言ってなかったっけ?」

報告を聞いた夜営の中で語るハインリヒ。

「あの方々が、素直に貴方の忠告を聞くと思いますか?」

隣で呆れたように言うのは仲間でもあり妻でもあるマルゴット。

「えっー?マルゴットの編み出したスタンピード発生確率法は信用できるのに。バカだなぁ、兄上達は。あれ?でもさ、そのスタンピードって大した魔物が出ないって言ってたんじゃなかった?ハクがせっかく鍛えたのに、情けないね、兄上達の護衛は。」

カラカラと笑うハインリヒに悪気は全くなかった。 

こうして、ハインリヒに王位が転がり落ちてきた。

ベヒモス討伐戦後に大規模なスタンピードが起きたが、発生場所の特定予想が思った以上に当たり、前もって準備が出来ていたため、多くの命が失われはしたが、それでも何も対処しない状態での被害を考えてみると最小限の犠牲ですんだ。


王太子となったハインリヒは、多種族と交流を深める中で、獣人族が、農業への造形が深いことを知った。

ハインリヒは躊躇なく王国の農業開発部門のトップに獣人族を迎えた。

人族で固めていた政治の世界に違う種族が入ってくることに反対していた者もいたが、王国の知恵袋と言われたハインリヒの妻、王妃陛下(賢妃マルゴットとの異名あり)を始めとした彼女の親衛隊とも言える人々の活躍で、今では政治の中心に様々な種族の優秀な人材が起用されている。

しかし、長い歴史を振り返っても、未だに他種族を軽んじる風潮があるのは確かだった。

その純血主義者の集まる地域の領主が隣の獣人の治める領地とよく揉めるのである。

彼らは政権の中心からは外れていたが、古参の貴族と言うことで態度は大きく、人族の登用こそラーネポリア王国の未来には必要なのだとことある度に言った。

失脚した前王妃、側妃派が結託して、ハインリヒの元に人族の妃を送り込んだりもしたが、誰一人ハインリヒとは閨を共にせずにいた。

「魔族の血を下賎と決め付け意味嫌う教育を施された令嬢がハインリヒに身を捧げられる訳もないでしょうに。」

後に降嫁された妃達は、嫁ぎ先でも持論を展開し過ぎて離縁された者も多くいた。



次回から漸く本編に戻れる……と、思う。

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