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Young:2

それはある日の出来事である。


王城の一角、王族が暮らすプライベートな宮は広大だが、王子達に与えられた宮はそれ程広くない。

東宮と名付けられた宮には六部屋の棟があり、王太子として生まれたショーンだけが、個室を与えられており、他の王子達は基本二人部屋である。

レンリルとルキリオ、ジュンリルとショーヤ、ケイリルとジオン、タクリオとカイン、シヨーセとイゼインと言った風にだ。

いずれ城を出る王子もいることや、思ったより子沢山になってしまったのを合理主義の王妃達の一声で決まった。

生まれた子のために増築するなど暇も予算もないと割りきり歴代の王子達が過ごした東宮を一つに纏めたのだ。

各々の棟の配置を変えたり、リフォームしたりは土魔法の名手が揃った部署との協議を重ねた結果完成した。

ある程度の年頃までは母の宮で過ごし教育の進み具合で王子達は各部屋に移った。

出来るだけ同腹の兄弟を同じ部屋にすることは避け、個人の性格も鑑みた部屋割りとなった。

各々の王子の宮には個室と共有スペースがあり、各々の従者は東宮近くの棟に纏まられている。

しかし、仲の良い王子達は大概ショーンの部屋で過ごし、食堂もショーンの棟にあるため自然に集まるのだった。

「今年の冬は寒いなぁ……。」

ポツリと呟いた兄の言葉。

部屋の中は火属性の魔石のお陰で暖かいが、王城と東宮を結ぶ渡り廊下は外に面しているので冬は寒い。

王城を取り巻く結界は対魔獣用であり、気温調整機能はない。

貴重な魔石を王家が率先して節約し、民に示しているのだ。

「なんか、ほっこりしたいよね。」

そんなことを呟いた。

「そう思うなら窓閉めてよ、ショー兄。」

恨めしそうに言うのは三歳年下のケイリルだ。家庭教師に出された課題を兄弟一丸となって片付けているのだ。

「あ、ごめんごめん。」

窓を閉めて弟達と同じテーブルに着く。

この時、ショーンは来年成人を迎える15歳。一番年下のイゼインに至ってはまだ8歳だ。

「十分部屋は暖かいけど、足元とか冷えるよね、カイン大丈夫?」

インセクターであるカインはまだまだ魔力が不安定なせいか寒さに弱い。

「……寒い。」

「まぁ、インセクターの弱点は寒さだもんね。」

この寒さの中元気なのは、フェンリルの因子を持つイゼイン、ドラコンの因子を持つルキリオくらいだ。特にルキリオは氷雪系の魔法が得意であり、どちらかと言うと暑さが苦手だ。

寒さを苦手とするのはカイン、タクリオである。

ルキリオ大好きなタクリオも冬だけはルキリオに引っ付いてこない。

兄的にはちょっぴり淋しく感じていたりする。

「開発局に行ってくる。」

ケイリルが立ち上がる。

「宿題は?」

引き留めるレンリルの声など聞こえていないようで飛び出していく。

「ケイ兄、何処行ったの?」

自分の宿題である単語の書き取りを終えたイゼインの言葉。

「たぶん、アイデアを探しに。」

「まぁ、宿題のことは頭から消えてるよね、」

違いない、兄弟達は笑い声を上げた。


ケイリルは城下にいた。

開発局はケイリルの発明した魔道具の実用化のために忙しそうで下手したら色々と手伝わされそうだから逃げた。

王子でありながら、外に頻繁に出掛けるケイリルには其なりの護衛が陰ながら着いている。これが暖かい気候なら使い魔のヴィラがケイリルの肩や頭に乗っているのだが、ヴィラの弱点でもある寒さが彼を種子の状態まで退化させていた。

もう少しケイリルの魔力が安定するか、植物系の魔物には珍しい番が現れたなら別なのだが。

胸ポケットにヴィラの存在を確かめながら街を歩く。

魔道具の開発により大通りを始めとした街道の多くは炉端に雪を積もらせているものの凍りついてはいない。

しかし、連日の大雪で人の流れはとても少なかった。

「湖の方にでも行ってみよ。」

何気なく通りから外れた道を曲がった。


現国王から五代前の時代、異空間がラーネポリア王国の上空で開いた。

異空間の穴とは、長年この世界の住人を悩ませているスタンピードを起こす穴のことである。


異空間は開く一時間程前に空気を震わせる。その空間の震えと聖花ピュアリエの発光。前兆とも言える現象にいち早く気付いた英雄王ハインリヒの妻、賢妃マルゴットが時を重ね編み出したスタンピードの発生確率法。スタンピードの最初の記録がなされたのはラーネポリア王国と言われており、その後を追うようにラーネポリア王国の住人の下に使い魔の卵が現れるようになった。使い魔達は何故かピュアリエの発光を感じとることが出来、いち早くスタンピードの予見にも繋がることになった。

それでも穴が上空で開くことはなかった。古く残る記録によると花の発光がまずあった。スタンピードの規模は大小様々で規模により花の発光度合いも違うし、発光する花弁の数も違う。スタンピードの発生方角の花弁が光ることも長年の研究でわかっていることだが、上空に穴が現れた時は全花弁が真上に発光したとの記録が残っている。

異空間の真下であろう街の住人達は王立魔獣騎士達の働きで大きな混乱を招くことなく避難を終えた。予想された場所は住宅街ではなく、広大な王立の公園、人々の憩いの場所として開かれた土地であったことも幸いした。

スタンピードは、始まりの穴から出て、終わりの穴の中に帰って行く。

と言うことは、始まりの穴が上空に開くのであれば終わりの穴は地上である。

落下してくるであろう魔物に備えていた騎士達は、空に開くであろう始まりの穴の大きさに更なる住人の避難を余儀なくされた。

もしかしたら、穴は城下町だけでなく、王城そのものも壊してしまう可能性も出てきたと考えられたが、国王や王妃達は被害の拡大を防ぐ結界を保つため城を離れることを拒否した。終わりの穴の位置と大きさを割り出すための学者達も城に残った。

「始まりの穴が上空に現れるのなら、終わりの穴は真下に現れるであろう、最悪城下の大半に被害が出るやもしれんが、穴に収まりきらん魔物が街に来ぬよう防御せよ。」

国王の一声であらゆる住人がスタンピードの穴の出現に固唾を飲んだ。

この時ばかりは確率が外れないようにと

大きな災害に対しての大規模な避難訓練を行っていて良かったと誰しもが思っていた。終わりの穴が開いた場所は湖となった。湖は数十年の間、魔素の濃い地となり、近付く者を拒む場所となっていたが、王立研究所が魔素を吸収する魔道具を開発したことで王立自然公園となった。

自然公園には絶滅危惧種の魔獣や魔鳥が生息するようになっていた。

王立自然研究所なるものも誕生し自然の守られた公園は民の憩いの場ともなったいる。自然公園には未だに魔素の濃い場所があり、立ち入り禁止地域も多々ある。

そんな場所にケイリルは入っていく。余分な魔素を吸収し魔石に定着させる装置の原案を作ったのは過去の偉人だが、その魔道具を改良し、魔素を安全な濃度に下げる濾過装置を作り上げたのは10歳に満たない頃のケイリルだ。

ケイリルは濾過装置をマスクに取り付けて携帯出来るようにしていた。それに使い魔であるヴィラがいれば余分な魔素は吸い取ってくれるので問題はなかった。





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