MIDNIGHT SUN④
略語なタイトル。そのままだと、さすがに問題あるかなと。普通に単語として存在している。
王子達が東屋に落ち着くと何処からともなくメイド達がやって来てお茶とお菓子が用意されていく。
目を輝かせる弟達。
ルキリオは小さく息を吐いたノーチェを見逃さなかった。
「ノーチェ、どうしたの?」
ノーチェは眩しそうに目を細めている。
「ここは眩しくて、しんどい。」
ぐったりしているようなノーチェにルキリオは慌てた。
『ルキリオ、大丈夫。ノーチェは外の世界に慣れていないだけ。』
ロロの言葉。
「ノーチェ、キュアノエイデス様から頂いたアレをアイテムボックスから出して。」
地上の世界に眩しさを防ぐアイテムだ。
『目隠しよ、闇の女神様お手製のノーチェにとても似合うわ。』
顔の前に翳すとノーチェの目元を中心に鼻梁の中程から眉程の幅と長さは耳近くまで覆った精密で繊細なレースの布が降ろされた。
ルキリオはラピスラズリのようなノーチェの瞳が見えないことが残念だった。
「かっけー!」
ケイリルが声を掛けてきた。
「そうか?」
ケイリルの声にタクリオもジュンリルも反応する。
ルキリオはノーチェが楽ならそれでいいかと考えを変えた。
結局のところ、ノーチェとロロは西の塔のてっぺんを気に入り、住居兼祈りの場に決めた。
ルキリオら王子達からの報告に王妃達は苦笑したが、宰相らは今後の囚人達の収監場所をどうするかとか、塔の修繕等に頭を悩まされることになった。
ルキリオはその後に行われた見合いの席で誰も自分を希望しなかったことに内心ホッとしながら父陛下と王妃達にノーチェをお嫁さんにしたいと宣言した。
ショーン、レンリル王子に継ぐ早さでの婚約だった。
ルキリオが相手を選んだ時から彼の体内では急速に魔力の安定が行われた。魔力が安定してくるとルキリオの角は小さくなりはじめ、黒い鱗はポロポロと剥がれていった。
『あと少しだね。』
ルルの言葉。
「痒いから、早くこの脱皮終わってほしい。リザードマン達みたいに一気に剥がれるのかと思ってたのにな。」
自分の変化についてのルキリオの感想だった。弟のタクリオはある程度の面積が一気に剥がれた。
『ボク達は、蜥蜴種じゃなくて、龍種だからね、脱皮も鱗一枚一枚なんだよ、』
同じ爬虫類だと内心思ったが、ルルは見た目蛇なのに龍種であることに誇りがあると分かっているため黙っていた。
『にしても、早く行かないと遅刻だよ。』
「うん、」
今日は兄達と一緒に隣国についての授業だ。ノーチェの月の女神達への祈りに付き合っていたのだ。
ノーチェにも遅れるぞと言われたが彼女と話がしたかったので長々と過ごしてしまった。しびれを切らした侍従が迎えに来て塔を離れた。
「今日は何の授業?」
「周辺国の歴史を学ぶ予定です。同盟友好国である魔界国、妖精国については既に2回ほど学ばれたのですよね、」
「うん、母上の生まれ故郷のことを知るのは嬉しかったよ、今日は違うの?」
「門ではなく、地続きの隣国ゼノアについてだと聞いております。」
何かと因縁のあることは何となく知っているルキリオ。
兄弟でラーネポリア国を盛り立てるために自分に何が出来るのかを学ぶため周辺国のことを知れるのは有難いことだった。
ショーン、レンリル、ジュンリル、ケイリルの五人での授業。
兄二人はタイプの違う天才だとルキリオは考える。
学習部屋に向かう途中でフラフラしているケイリルを見つけた。
彼の侍従がケイリルを急かしていた。
「ケイリル、眠いの?」
駆け寄るルキリオに侍従が安堵の顔を見せる。
「ほら、行くよ。今日はザイザル恩師の授業だから、遅れると連帯責任取らされる。」
王子達の教育にあたる教師陣はみな優秀だが、一癖も二癖もある。
ザイザル恩師は、一に時間、二に時間で遅刻を何よりも嫌う。
授業中の居眠りを嫌う教師もいれば、山のような宿題を重視する者など各々だ。
パタパタと怒られないスピードで走る王子達に城の者は皆温かい視線を送っていた。
宵闇の女神と月の女神達の加護を持つノーチェは昼間が苦手だ。
昼間は太陽の光が眩しくて月の波動を感じにくいから。
そして新月が嫌いだ。新月の日、月の女神は母である常闇の女神に会うために姿が見えなくなる。ノーチェにとっては魔力が弱まる日でもある。一般的に四つの月は周期を変えて満ち欠けをし、4つの月のどれかはほぼ毎日空に浮かんでいるため、対した弱まりではないが何となく調子を崩す。
それに、やっぱり月は4つ輝いてこそ嬉しい。
昔、城内をノーチェを連れて弟達と探検したことを思い出した。
「せっかくノーチェのところに行こうと思ってたのにな。」
緊急会議の連絡が入った以上従うべきだろう。
「ルル、ノーチェに伝えてくれるかい?待っててって。」
『うん、いいよ。』
隣国から来た聖女。
彼女から向けられた魔力も視線も臭いも気に入らない。
何が目的か知らないが、この国で好き勝手はさせない。
ルキリオは自身に言い聞かせるように歩みをすすめた。




