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MIDNIGHT SUN②

4歳の頃のルキリオは、まだまだ変成期の途中で真っ黒な鱗に全身を覆われた姿で髪の毛も真っ黒だった。

母からこの姿は今だけだと聞いてから何故だか自分を遠巻きにしてぶつくさ言ってくる大人達は変だなと思ったし、顔を名前を覚えておこう思っていたりする。

ある日、第一王子である兄を含めた五男までの王子達の婚約者を決めるお見合いが開催されると聞いた。ルキリオには、お見合いがどういうことか分からなかった。

来月7歳になる長男と同い年の異母弟と1つ年下の異母弟がメインになるだろうと使用人が噂をしていた。

ルキリオは耳がいいのだ。

魔族の血が濃い令嬢は変成期にあり見合いに出るのを渋っており、会に出るのは妖精族か獣人族、そして人族の血が濃い貴族令嬢がほとんどだと言う。

長男ショーンはこれを機に幼馴染みのティエリア嬢を婚約者に選ぶだろうと言われているらしい。

「母上、レンリル兄とボクはメインじゃないの?」

侍女達の噂を耳にしたので尋ねると母アヤカ妃はため息を吐いた。

「ラーネポリアでは、人の見た目をした者が好まれるのよ。魔族への理解が低いから。」

「ふぅん。」

自分の鱗に触れる母。

「ルキリオは、ご先祖の遺伝子が強く出たのね。大きくなっても鱗は残るかも知らないけれど、イヤかしら?」

「……分かんない。けど、鱗はキライじゃないよ夜になるとね、鱗に空のお星さまがうつって、キラキラ綺麗なの、お月様もキレイにボクの鱗をキラキラさせてくれるの!タクリオの鱗はね、赤いから夕日が沈むみたいにキラキラなんだよ、母上!」

「そうね、母上もルキリオとタクリオのキラキラの鱗好きよ。」

「ボクも母上大好き!」

自分を守ってくれる存在の使い魔の卵。未だにルキリオの元には現れていない。

明日の見合いも元はと言えばショーンの相手が既に決まっていることを内外的に知らしめるためのもの。変成期が完了していないレンリル、ルキリオ、ジュンリル、ケイリルにとっては迷惑な話だ。

上からの5人が王家の人間として残ることが発表されてから臣下の一部の煩さにラインハルトが折れた結果だった。

まだまだ親の手が必要な幼児に婚約者を宛がっても意味はない。

10歳に満たない王族の婚約は仮である。特に5歳未満は親の希望が強いため本人に意志決定が出来れば白紙にぬる場合もある。

魔族の血が濃いながら、パッと見人としての姿をしているジュンリル、ケイリル王子達は変成期を過ぎてもさほど姿が変わらないだろうと言う安心感を親に与えているために見合いの申し込みは殺到するだろう。魔族の血が濃い令嬢はやはり姿や魔力の安定が出来ていない不安から、今回の見合いには辞退するとの旨が届いている。

見合いに参加する魔族寄りの魔力を持つ貴族はサガン一族ゆかりの貴族達。侯爵の長女は3年前に侯爵の離れで起きた火事に巻き込まれて死んだと届けがあり、次女はショーンと同い年。変成期は終えているらしい。現在3歳くらいの差なら捩じ込んでくるだろう。

「まぁ、うちの子達はゆっくり相手を見つければよいわ。」

隣で健やかな寝息を立てる我が子の額にキスを落とす母だった。


「母上、起きて、」

揺さぶられて目を覚ます。

「なぁに、ルキリオ。」

「たまご、たまご来た!」

その言葉で一気に覚醒したサヤカ妃。ルキリオは成人男性の掌大の真っ白な細長い卵を抱えていた。

「まぁ、おめでとう、ルキリオ。」

真っ白な卵の殻には4つの円があった。

それぞれ、うっすらとした青、紅、金と銀である。

「あら、なんか見覚えのある色合いの丸ね。」

空にある4つの月と同じ色に配置だとアヤカ妃は思考していたが、

「あ、たまご、こわれた!」

ルキリオの声に現実に戻された。

「いや、違うわ、生まれるのよ。」

生まれたのは真っ白な蛇。

「うわぁ~、キレイな子だなぁ。」

しゅるしゅるとルキリオの腕を登って頭の上で蜷局を巻く白蛇。

「本当、キレイな子ね。ルキリオ、名前を付けて上げなきゃね。」

「ルル!」

即答だった。

『まぁ、及第点ね。』

蛇から大人の女性の声がした。

「…ルルは、女の子?」

アヤカ妃は少しばかりの警戒をする。

『あんたら親子を傷付けたりしないよ、』

別の声がした。

白蛇ルルから4人の声。

その正体は月の女神で、ルルは女神達の眷属だと言う。

『ルキリオ王子には、我が母、常闇の女神の眷属であるロロが選んだ子を守る栄誉を授けようと思うの。』

神とは気紛れで人の都合など考えない。

『名前は、スコターディノーチェ。我等の母常闇の神の巫女。』

小さな女の子が空間から寝台に落ちてきた。

『本来の年は7歳だが、治療のため時を止め我等の宮にて過ごしておったので、まだ、4歳だな。』

女の子はスヤスヤと寝ているが頬に涙の跡。

『我等との別れが辛くて泣いてしまったみたいなの、優しい子よ。』

アヤカ妃は姿勢を正す。

「我が敬愛なる月の女神達よ、今一度、教えて頂きたい。」

『何かしら?』

「万が一、我が息子が彼女を気に入らない場合はどうなるのでしょう。」

『あら、大丈夫よ、えーと、ルルが選んだ子だもの。スコターディノーチェが幸せになるのにこの国の王族が良いなぁとは思っていたけど、ホントに選ぶとは思わなかったくらいよ、2人はきっと合うわ。』

能天気な声がした。


『スコターディノーチェの基本情報を伝えておこう。王族に嫁ぐのだ。貴族であることも必要だろう。』

『でも、この子の親はこの子を死んだことにしてるのよ、戸籍がないわ。』

女神達が次々に話をする。

情報量の多さに目が回りそうだ。気付けばルキリオは少女に寄り添うようにまた寝てしまっていた。


「なんてこと……。」

女神の話を聞いて思わず出た話に目眩を覚えたアヤカ妃は自身の寝台で眠る幼女に目をやる。

「実の娘に、そのような仕打ちを、信じられないわ。」

怒りで魔力が暴走しそうだと妃は思った。

『一度死んだことになっているこの子の復権については、その方達に任せましょう。』

小さな4つの光が割れた卵の模様から出て幼女の額や頬に触れていく。

『私達は、いつでもあなたの心の側に…幸せになりなさい、我が娘。』

光が消えていった。

『アヤカ…。』

「サラ、この子達を、お願い。」

自身の使い魔に命じる。紅い鬣のある美しいサラマンダーが頷く。

「マヤ、聞いていて?」

側支えが跪いていた。

「サガン侯爵家の長女の死について調べて、綻びを見つけてちょうだい、この子を保護するわ。着替えるから侍女を陛下やミライヤ様にもこの子の保護を求めましょう。」


まずアヤカは正妃ミライヤを始めとした4人の妃による朝食を取りながらの今朝の出来事を伝えた。

「まぁ、ルキリオの使い魔が月の女神様達の眷属だとは、」

「神の眷属が使い魔になるなんて、ショーン以来ではなくて?」

「ラーネポリアって、ホントにあり得ない国だわね、オニキス家に養女として来たその日の夜に枕元に卵が現れた時には驚いたものよ、」

ダークエルフとして妖精界で生まれたミライヤ妃はラーネポリア王国と妖精界の架け橋となるため、一旦、ラーネポリア王国のオニキス辺境伯に養女として迎えられた経緯がある。

「魔界から嫁いだお母様は、元々使役していた使い魔が此方に渡った途端に卵になったって、混乱したとおっしゃってたわ。」

「卵は、この国の民であると言う証明だと聞いた時はなんだか嬉しかったともおっしゃっていたわね。」

「でもぉ、神様の眷属が使い魔だなんて、ちょっと、恐れ多いって言うかぁ。」

もぎゅもぎゅとライチと言われる果物を食べながら第4王妃マルティナが言う。

王太子ショーンの下に卵が現れたのは3歳の時だ。

黄金の鬣のある子猫だった。後にその猫が太陽の神の眷属の獅子であることが分かり大騒ぎとなった。

ラーネポリア王国以外では、調伏したわけでもないのに知性のある魔物、魔獣が使い魔となるのは稀である。ましてや卵として現れるなどあり得ないことだ。

ラーネポリア王国の使い魔について研究している者がいる。彼等はラーネポリア王国をこの世界にある2つの太陽と4つの月、その光の影響が大陸の中で一番大きい国であるとしている。事実、隣国のゼノアでは太陽は1つしか見えないし、月は良くて2つしか見えない。

因みに魔界には1つの太陽と4つの月、妖精界では2つの太陽と3つの月が見える。

すべての太陽と月が輝くラーネポリア王国は神の加護がある特別な地であるから魔界とも妖精界とも繋がっているのだともされている。

神の光に満ちた国だから、魔力のある者に神の加護でもある卵が現れるのではないかと解いていた。

 



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