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Walk it Like I Talk it

聖女が現れ、第一回家族会議が開かれた後、長兄と次兄は婚約者とのお茶会に戻った。

四男は魔力こそ回復したが精神的ダメージもあり、完全ではないため自室で休むことになった。

具合を悪くした双子の弟を思って七男は滋養の付く薬を煎じてくると王室の温室へと向かった。

ケイリルは自身の研究室へ、聖女の魔力を解析するのだとタクリオと共に出ていった。

九男、十男の双子は使い魔から何かを感じたらしく厩舎へと飛んで行った。

末っ子だけがルキリオの側にいる状態だ。

「お前は厩舎に行かないのか?」

「うん、たぶんマメチィはカエデ姉のとこだと思う。ルキ兄のルルもそうでしょ?」

その通りだと笑う。

まあ、ポポに誘われてなければの話だ。

カエデは毎日登城しているが多忙なので使い魔達はレンリルとのお茶会が側に行けるチャンスだとばかりに出掛けてしまう。

親達の使い魔達も本来なら彼女に会いに行きたいが年長者として抑えているらしい。

「ルキ兄は何するの?」

「財務省の所に行って予算の組み直し。それと、向こうさんが聖女とやらのために侍女と護衛を増やせと言ってきたからね、ショー兄さんとレン兄さんが帰って来たら人員を内務省や軍務省と相談しなきゃならないからね。まったく余計な仕事を増やしてくれる。」

眉間にシワを寄せる。

「一日でも早く出立してくれたらいいね、」

「会合自体は日程が決まっている。国の代表が遅れる訳にはいかないだろうから、余程の非常識でなければその点は安心だ。」

中庭を見下ろすとレンリルが小さな花束を持って足早に進む姿が目に入った。

「ルキ兄も会いたい?」

イゼインの問いかけにルキリオは彼の頭を撫でた。

「彼女は、魔界にいたカエデ嬢以上の引き籠りだけど、住まいは王城内(ここ)だからな、俺に時間さえあれば会えるからね。」

その時間を取るのが難しいのだと最近気付いた。

彼女は、性格上表には出てこないだろう。淋しくない訳ではないけれど他人に彼女を見せなくないなんてほの暗い想いを抱いているなんて可愛い弟達には知られたくないなぁなどと思っているルキリオであった。


「ルキリオ殿下。」

城内を歩いていると声を掛けられた。立場的に上の王族ではあるが城内で王族の証であるケープもしくはマントを羽織っていなければ、ある程度の声かけは許されていた。

振り向いたルキリオは対外的な笑顔だ。イゼインは相手を確認するなりゆっくりとルキリオの影に隠れるようにさがる。

「これは、サガン侯爵。どうしました?」

ラーネポリア王国の東にある生糸の生産加工が名産となっている領地を有している大貴族だ。

彼は、魔族至上主義と言えば良いか魔族の血が濃い者を優遇しがちな政策を打ち出しな高位貴族である。

「ゼノア国の者が迎賓館に入ったとか。」

「そうですけど、今回は会合がありますからね、明日明後日には出立さるでしょう。」

「予定にない滞在を許したと?」

「相手は王族ですからね、けれど、最低限のことにしかするつもりはありませんよ。」

探るような瞳を向けてくる侯爵。

「何でも、相手は聖女なる稀有な存在を同行させているとか?」

「それが?好き勝手な行動はしないと思いますがね。」

「ジュンリル殿下とルキリオ殿下を気に入られたとか!」

食い気味で侯爵が言う。

「まぁ、そうなんですか、知りませんでした。かと言って相手をするつもりはありませんよ。私には大切な婚約者がいるのですから。」

絶対零度な微笑み。

侯爵は引き吊った笑顔だ。

「ここにきて、稀有な聖女とやらを迎えるつもりではと邪推してしまいました、ははは、まことに失礼致しました、我が不肖の娘は、殿下に迷惑を掛けていないですかな?」

ルキリオの笑顔が更に深まった。

「あなたの娘と私は無関係ですよ、誤解を生むような発言は止めていただきたい。」

ゾッとするような冷気に後ろにいたイゼインが両腕を摩った。

「おっと失礼。あまりのことに私の魔力が漏れてしまったようだ。」

王家の広報担当であるルキリオが見せたことのない笑顔に侯爵は膝を付く。

「あなたの言う娘とは今現在、侯爵家にいる令嬢のことでしょう?よもや、私の婚約者のことではないですよね、彼女とあなたは、戸籍上の繋がりも王家が保護した時点で失くなっている。先に彼女を死んだものとして扱い除籍したのはあなたでしょう?私は、たとえ彼女が許してもあなた方が彼女にしてきた仕打ちを忘れたりしない。彼女から得ていたものも彼女が王家に入れば無くなるのです。魔族がどうのとか、隣国がどうのとか言っている暇はサガン侯爵家にはないと思いますがね。」

カッと侯爵の顔が赤くなる。

彼は怒りに肩を上げながら去って行った。

(にいに)こわっ、ってか、あの人、毎度のことながら、現状の理解が及ばないよね、」

「イゼインのこと見えてなかったね。」

「あー、獣人の血が濃い王子には興味ないんでしょ。」

王子達は色々な血が混ざっているが、イゼインの母妃は獣人の血が濃い、魔獣の現れやすい森一帯を管轄する獣人族族長の娘だ。正確に言えば貴族ではないが、政治的な意味合いやラインハルトとの相性を考えて選ばれた娘で、一度妖精門のある領地を持つ辺境伯爵家に養女として入りマナーや教養を身に付けた。

自由を愛する獣人族の娘が高位貴族の知識やマナーを身に付けるのは容易ではないと言われたが、マルティナは誰もが思っていた以上のポテンシャルを持っていた。

知的探究心の塊である。

粗野で野蛮、単細胞と言われる獣人族は、数あるスタンピードから国を守ってきた種族である。英雄王ハインリヒも彼等を政治の世界に関わらせ守ろうとしたし、ラインハルト王の先代も彼等を政治的に守る意味もありラインハルトとマルティナの婚姻を結んだのである。

マルティナの生んだ王子達は各々見た目も様々な獣人(亜人)に変化出来る。特にカイン王子は、蟲人族に変化する程でマルティナも首を傾げた。

「私の血筋にインセクターっていたかしら?」

血筋を疑われては敵わんと、マルティナは持ち前の知識欲を総動員して調べ、数年に一度、獣人族が崇める神が数少ない蟲人族(インセクター)をこの世に顕現させることがあると古文書に載ってあったのでカイン王子が蟲人族であることはマルティナの不貞を疑うことではないとラインハルトが発表した。

正式にラインハルトの子であると認められたがマルティナの子の中で一番気苦労を重ねているのはカインかもしれない。それはイゼイン(末っ子)も分かっておりいつもカイン兄はカッコよくて強くて大好きだと言葉で伝えている。

それは他の兄弟達も同じである。

「時代錯誤な者達のことは捨て置こう。」


ルキリオはイゼインと別れて財務省へと赴いた。

室内には頭を抱えた官吏達がいた。

「どうしたんです?」

「殿下!」

皆が救世主が来たと言う目で見てきた。

差し出された用紙にはビッシリと箇条書きで何やら書かれている。

それらに目を通す。

「ほうっ……。」

それは、ゼノア国のあの王子からの要望書だった。

「アレは、国力の差と言うものを分かっていないのですね。」

先程とは質の違う冷気が漂う。

「ゼノアへの抗議文は送り付けたのでしたっけ?」

外務省への確認を魔道具を使い確認したルキリオは、それはそれは綺麗な笑顔を見せて言った。

「それでは、この文もゼノア本国に送り付けましょう。そうですね、叔父上にでもお使いを頼みましょうか。」

母方の叔父はドラゴンの血筋を強く受けた先祖返りとも言われる美丈夫である。しかし、戦いに於いては容赦ない性格で以前、スタンピードからの救援要請に答える形でゼノア国へと向かい先陣を切って魔獣を殲滅させたことがあった。襲われた場所はゼノアの王族の保養地でたまたま王妃と王女が滞在していたのだが、叔父の活躍に感激するよりもトラウマを植え付けられたと言う。

その叔父に抗議文を託そうとルキリオは考えた。

ドラゴンの姿になれば半日くらいでゼノアの王都にたどり着く。

とりあえず、二度目の抗議文にあの臆病な国王は慌てふためくだろう。

首筋にヒヤリとした感触。

「ルル?どうした?」

『レンリルが呼んでるよ、大切な話あるって。』

「兄上が?」

ルキリオは財務省の官吏に何個か指示を出すと再び次兄の召集に応じるのであった。



11/23加筆訂正。

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