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So What?

レンリルがカエデに絵姿を送ってから2年が経った。16歳となったレンリルは、他国に行く権利を得たことで、母の里を訪ねた後に魔界に行きたいと国王と王妃達に望んだ。

「カエデからの文が年を追う毎に少なくなっているのが気になります。絵姿も未だに届きませんし、彼女の心意を確かめたい。」

余り表情を変えずに言うレンリル。

「来年には、カエデ嬢は婚約者として、こちらにくるのだぞ。カエデ嬢に会いたいだけで、魔界に行くなど許せるわけないだろう?」

と呆れる国王。

「では、王立魔界学園に留学している我が国の学生を訪ねる場をもうけて貰い懇親会を開くと言うのはどうですか!」

よく頭が回ると呆れる国王と王妃達。

数年前から魔界とラーネポリア王国の間では、交換留学制度がもうけられており、現在、ラーネポリア王国に魔術を学びに3人の学生がおり、魔界にも3人の学生が留学している。王太子ショーンの婚約者ティエリアもその中の一人だがもうすぐ帰国する手筈になっており、その帰国に合わせてカエデも此方に来る予定だ。ラーネポリア王国の暮らしに慣れるためカエデは王立学園に留学することになっている。

本当なら嫁いで来た年には華燭の典を上げたかったレンリルだが、カエデのたっての希望で留学を許可したのだ。

国王と王妃達からその話を聞かされた時、レンリルは、とっとと卒業したことを初めて後悔したと言う。

「国を越えての婚礼じゃ、準備は大変じゃろうに。」

と実母。

「それが、一体何だって言うのです!母上、カエデからの文に私は何らかの異変を感じたのです。行かせて下さい。私がこうしている間にカエデに余計な虫が付いたらどーしてくれるんですか!」

皆が押し黙る。

「何です?」

何時だって冷静で声を荒らげたことも滅多にないレンリルに弟達は目を丸くし、同じく話を聞いていたショーンが笑う。

「ティエリアから、魔界でのカエデ嬢の噂を聞いたからレンリルは焦っているのですよ、」

カエデを貶める噂は学園を中心に魔界の下級貴族の間に広まっている。

学生の間だけのことと初動が遅れたことを公爵家は悔やんでいた。

「公爵家のカエデ嬢は愛し子の力を失っている」

「幼い頃とは比べ物にならないほど醜悪な容姿に成長している」

「見た目で美しく育った従姉妹に醜い嫉妬をして苛めている」

「神の加護が公爵令嬢から従姉妹の子爵令嬢へと移るのも時間の問題」

魔界門のある領地を治める公爵家の令嬢であるティエリアは年上の親友である魔界の王太子の妻であるカエデの姉から情報を得ていた。

謂われない噂に妹が長年苦しんでおり、家族が否定すればするほど頑なになっていくのだと。

原因を作った従姉妹である子爵令嬢にも注意を促しているが思考がお花畑過ぎて現在、子爵家にて軟禁中とのこと。子爵令嬢は、魔界王立学園に於いてカリスマ的存在であるらしく軟禁に対しての苦情が増えてきたので、カエデをいち早くラーネポリア王国に留学させたいのだが、本人がまだ準備が整わないと承諾しないと言う。

「その子爵令嬢は、何らかの魔法を使い生徒達を先導しているのでは?」

ルキリオの言葉。

「魔界では、子供の魔力について調べる際には親の承諾が必要です。それに、魅了系の魔法を使うことは特に禁止されていないのです。普通に抵抗(レジスト)出来るものですから。掛けられた方が間抜けと言われております。」

魅了系の魔法を掛けてはならない相手は、王族だけだと言う。

愛しい者がその噂に悲しまされているのなら、レンリルが立ち上がらない訳にはいかない。

「噂などに惑わされるのではないとお前が言えばよいのだ。婚礼の準備で忙しかろうに……。」

「カエデは、母上と違って繊細なのです。手紙や、魔道具による動画で伝えました。けれど、返事がないのです!心配です!」

母の青筋など気にせず言い切るレンリル。

彼の気迫はカエデを浚ってきそうなほどだった。

カエデは、少なくとも2年は学園に通うことになっている。

2年の間にラーネポリアのことを学んでもらう予定だ。

カエデは学園に通うにあたって王城ではなく、学園の寮に入ると知らせてきた。正式な王族となる前にラーネポリア王国の貴族との繋がりを持つためだとの理由は妥当であったがレンリルは反対していた。


レンリルがカエデに拘るのは幼い頃の邂逅だけが理由なのではない。

「レイン、カエデは元気かな?」

尋ねる相手は自身の使い魔、管狐。

尋ねられた管狐レインは笑う。

[レンリルは、心配性だな。我が番、タマモが側にいるのだ、大丈夫に決まっている。]

ドヤ顔。真っ黒で艶やかな毛並みの彼は出会った時から大層な自信家で、見た目のことで傷付いた幼いレンリルを守ってきた。

だから、あの茶会の席で彼が気に入ったカエデに自身の番を使い魔として宛がったのだ。

[本来、魔族にはラーネポリアのような方法で使い魔を得るものはおらん、それを見越してあの時、カエデに我が番を託したのだ!レンリルは、我に感謝するのだ。]

手紙が届かなくなってもレンリルが我慢できたのは、タマモを通してレインからカエデの情報収集していたからだ。

14歳の時、絵姿を送ってくれなかったカエデに業を煮やし、タマモにカエデの姿をこっそり念写で紙に残せないかと頼んだ。

只でさえ容姿コンプレックスを拗らせているカエデに黙って何てことをとタマモは怒り、とばっちりでレインは暫く無視される羽目に合っていた。

カエデのことなら何でも知りたい幼いレンリルと彼の望みなら何でも叶えようとするレインを説教したタマモ。タマモはレンリルの母にも告げ口し、このままでは、ちょっとしたストーカーである。今のうちに耐えることも覚えなくてはカエデに嫌われるぞと諭された。以来、カエデのストーキングは控えていたのだが、ティエリアから聞いた噂に居てもたっても居られず魔界行きを希望したのだ。

レンリルが遠く離れた場所にいるカエデをストーキングしていたと聞いた兄と弟のルキリオはちょっと引いた。

「使い魔同士が番なら、そんなことも出来るのか。残念……。」

ショーンの呟きは誰にも聞かれなかった。



「えっ!もう、来られたの?!」

レンリルが魔界城に到着したと公爵家に連絡が入った。

「はい。城にて魔王陛下並びに王族方にご挨拶を、ほら、中継されていますもの。」

魔道具から壁に映された映像。

「レンリル様……。」

絵姿の頃よりも成長した姿だ。

「お手紙だけでしたものね、姫様も意地を張らずに絵姿や動画をお送りすればよかったですのに。」

「そ、そんな怖いこと出来ないわよ、」

ブルリと震えるカエデ。

「お似合いですのに。」

侍女の言葉はカエデに届いていない。

カエデの元に届く手紙にはレンリルの近況が綴られていた。

絵姿以降レンリルの姿を見てなかったカエデは落ち込んだ、

(な、なんで、カッコよくなってんのよ、)

頭を抱えるカエデ。

「さ、お嬢様、ご準備を。」

「えっ?」

ポカンとするカエデ。

数人の侍女が部屋に入ってきた。

「えっ?」

「さっ、」

何やら気迫におされ後退るカエデ。

自分に自信を無くし引き籠りになっていたカエデを着飾らせるのは侍女達の願いだった。

「えっ?」


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