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Freedom

『まぁ!素敵な方!!』

ゼノアの王子の影から少女が飛び出してきた。

彼女の目がジュンリルをロックオンしている。

「へっ?」

気付くと聖女ユウコは、ジュンリルの両手を握り締めていた。

(いつの間に!)

結構な握力である。

『私、聖女ユウコって言います!綺麗なライトブルーの瞳ですね!』

ぎょっとしているのは、長官と伯爵だ。

『ハハハ、こらこらユウコ、そんな男に懐くな。』

引き吊った顔ででユウコの肩を自分の方へと引くゼノアの王子。

しかし、ユウコの手は離れない。

彼の目がジュンリルを睨んでいる。

『あら、ディック、ラーネポリアの人との交流だって大切よ。聖女として、私、この方と仲良くなりたいわ。』

王子に、向けていた視線が再びジュンリルの、目の前の瞳を捉えた。

「は、放…せ。」

絞り出すようなジュンリルの声に長官が異常を察知した。

『その手を放して頂きたい!』

ややキツめの声を掛け、近寄る長官の行方を遮るのはディック王子とゼノア国からの護衛だ。

『なっ、そこをどいて頂けてますか!』

『我が聖女の望みを叶えるのはゼノア国王子の義務だ。』

ジュンリルの顔色が失われていく。


バチっ!

静電気に触れたような音が響いた。そして、聖女が悲鳴を上げ背中側にいたディック王子にぶつかる。

聖女の手はジュンリルから離れたようだった。

ジュンリルも後方に倒れそうになっていたがそれを支える人物の登場に長官は安堵する。

「あ、(にいに)……。」

「やぁ、ジュンリル……、最悪な顔色だね。」

支えていた体を後方に控えていたルキリオに託す。

「大丈夫か?」

「あかん、レジストがギリ間に合わんかった……。」

聖女に手を握られ見つめ合った時、今までに感じたことのないような力が握られた手と瞳から流れ込んできた。

慌てて抵抗したが、未知の魔力を押し出すために思った以上の魔力を失った。

聖女が流し込んだ魔力が外に弾き出された音がバチっと言うものだった。

「よく、追い出せた。少し魔力を渡すぞ。」

ルキリオがジュンリルに魔力を流し込む。

血縁関係者であれば魔力の受け渡しは容易である。

ルキリオにジュンリルを託したショーンが聖女らに向き合った瞬間、

【あなた達、王子様なの!!素敵!カッコいい!イケメン!】

けたたましい声が飛んできた。

【ギャー!何よっ!ディックより、断然、いいじゃん!】

興奮している聖女はディックの手を振り払っていることには気付いていない。

ピョンピョンと跳び跳ねている聖女を優しい眼差しで見つめているゼノア国側と冷めた目で見ているラーネポリア王国側。

「何か、聞いたこともない言葉だなぁ。」

頭を掻きながら呟いたショーン。その小さな声に聖女が反応して彼を見た。

もちろんショーンは、ギョッとした。

【あ~ん、何て言ってるのぉ、なんで、ゼノアなんかに転移しちゃったかなぁ!最初に落ちた国の言葉なら分かるのに、この国の王子様って、皆、こんなにイケメンなのかな、だったら、ここに住もうかな。逆ハー作りたい!っていうか、ディックとのことは第一部だったんだわ、これが物語の第二部なのよ!だって、私はヒロインよ!】

何やらブツブツ言っている聖女は怪し過ぎた。

彼女はクルリと体を翻すと目の前にいるショーンを通り越し、魔力を注いでいるルキリオと未だ調子の戻らないジュンリルに近寄った。

『キャッ!』

そして、見事に躓いた。

傾いた体はルキリオ、ジュンリル目掛けて……。

「ルル!」

ルキリオの声。

聖女と彼等の間に現れた其が傾く体を支えた。

ツルっとして、冷たく、そして弾力のある壁。

頭を上げたユウコは本当の悲鳴を上げた。

チョロチョロと舌を出し見つめている赤い瞳。

巨大な蛇が彼女を支えていたのだ。

脱兎の如くディック王子の元に走る聖女。

『ば、化物よ!ディック!』

抱きついてきたユウコを抱き止め背に庇う。

彼等は白蛇に向けて剣を抜こうとしたが、

『剣を抜くな!』

ショーンの一言で動きを止めるディック王子と護衛の騎士達。

支えた対象が去ると巨大な白蛇は軽い音を立てて掌大の小さな体になり、ルキリオの肩に乗った。

ルルと名付けられた美しい白蛇はルキリオの使い魔であり、騎獣でもある。

カインやジオンの騎獣とは違い体を小さく出来るので常にルキリオの影に潜み、気紛れと彼の命により顕現する。

ルルはルキリオにすり寄り、“何故、あの子は、逃げたのかな?助けたのに。”と少々落ち込んでいるようだった。

そんな様子に優しく微笑みかけるルキリオ。

[綺麗な顔……でも蛇は、嫌いなのよぉ。]

ユウコは、ディックの腕の中でルキリオを見つめている。

淡いピンクの花弁のような虹彩に、赤く縦に引かれた瞳孔。瞳以外に色が付いているのは唇と頬くらいで、後は、純白のルキリオは睫毛までもが白かった。

【あれって、アルビノって言うんじゃない?稀少ってことよね、うん、ヒロインに相応しいわ。でも……、先程手を握った王子様も爽やかで、笑顔が素敵だったし、この大きい人も精悍で素敵だわ……やっぱり、逆ハー目指す?としたら、ディックが邪魔よね。】

不躾な視線にへたっているジュンリル以外の目付きが厳しくなっていることにユウコもディックも気付かない。

ショーンは、ユウコの視線から弟達を隠す。


「やれやれ、……伯爵、ディック王子一行を迎賓館へ案内よろしく。」

突然現れた巨大な蛇にすっかり怯えてしまった風を装う聖女とゼノア国一行は『だめよ、あの王子様達と仲良くなりたいのに!』と叫ぶユウコを連れて無言で引き上げて行った。

見送る王子達。

「さて、大丈夫かい?ジュンリル?」

先程よりは顔色の戻ったジュンリルがルキリオの支えから離れた。

「なんやねん、アレ。」

黒にライトブルーのメッシュの入った髪は冷や汗で濡れており、ライトブルーに黒い縦長の瞳孔、紺の虹彩の瞳は怒りを含んでいる。

「とにかく、めんどくさいのが来たね、皆を呼んでまた会議をしようか。」

兄の言葉に従うように弟二人と外務長官が王城へと転移した。


使い魔の名前を変更しました。

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