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Prologue:魔女達のティータイム

 ――旅をしよう、と思い立ったのはいつだったのだろう。

 エルフという閉塞的な種族の里で崇められていた僕が、外の世界に興味を抱くようになったのは。

 気の遠くなるような長い年月を過ごした里の暮らしに、なにも不満はなかったはずだ。なのにいつしか、僕は同じ繰り返しの日々に飽きて、外の世界に憧れを抱くようになったのである。


 そうして僕は、ある日エルフの里を家出のような形で逃げ出し――様々な国を渡り歩くことになった。最初は集落、次は村、そして国、果ては世界。

「僕」という僕自身でもわからない存在を探究するために、魔術、魔法を探究するために。のんびりと旅を続けていたら、いつしか僕は「魔法使い」と呼ばれるようになっていた。世界に影響を及ぼす強大な力を持った魔法使いの一人に数えられるようになっていたのだ。

 ――これはそんな僕が、とある国でとある令嬢の運命に関わり――魔法使い、魔女達の面倒な争いに巻き込まれてしまう、永遠の中の刹那の物語だ。




 ■

 エルフの隠れ里の小さな神殿で現れたらしい僕は長い間、その里で守り神として崇められていた。……話を聞く限り、どうやら人間やエルフの赤ん坊のような生まれではないらしいし、彼らが祀っていた精霊達が僕を敬っていたから、まぁそういうことなのだろう。精霊たちは僕を「エーテリアス様」と呼び、僕は世界から得た知識で彼らを受け入れたのだ。

 ……平穏な時代だった。だけれど、僕はその平穏をつまらなく感じていた。世界から得られる知識にある外の世界、僕の見たことのない種族、人間。たまに訪れる彼らが、僕の関心だった。

 ――そうして、僕はこの居心地のよい里を離れることに決めたのだった。


 ……それから長い、永い時間が過ぎた。

 とある国で、家出をしたヴァンパイアのお嬢様を拾い、なんやかんやあって一緒に旅をすることになったり、気まぐれに拾ったりして育てた人間の魔法使いや魔女達が大人になって巣立っていくのを二人で見送ったりもした。

 そうして、吸血鬼のお嬢様――イヴエルと数多の移動を繰り返す日々、気まぐれにとある国に寄った時のことだ。

「エリュシオン王国」というそれなりに大きな国の王都で、のんびりティータイムをしていた僕とイヴの向かい側の空いている席。突如世界が止まり、すべてが静止した空間の中で、一人の女がそこに座っていた。

 静止したままの空間で、女と僕とイヴだけが動いている。

 ――金髪のショートカットと紅の瞳が特徴的な、スタイル抜群の美女だ。服装はごく一般的な、王都に住む一般国民の女性がするような、動きやすい格好をしている。

 女はにこやかな笑顔を浮かべて、僕に向かって手をあげた。

「……はぁい、相変わらず人間が好きなのねぇ。レーテ」

「……君こそ、相変わらず人間に手を出しているらしいじゃないか。エーレ―」

 ――エーレ―・ステファノス・ヴェルフェクティオ。「完全」の名をもつ魔女の一人。人間が嫌い・もしくは玩具としか思っていない魔女・魔法使い達の中では僕と同じく、人間に友好的な方の魔女だ。

「「完璧」の魔女が、私達に何の用かしら」

「そう邪険にしなくてもいいでしょ。今日は退屈そうな二人にとっておきの、面白い情報を伝えにきたんだから」

 どこからか取り出したお茶菓子らしいものとティーカップを取り出したエーレ―は、イヴの言葉に意味有りげに微笑んだ。

「……二人は「転生者」って知ってる?」

 エーレ―の質問に、僕は記憶を漁った。ものすごく昔に聞いた覚えがある単語だ。転生者。

「……神の玩具だったっけ。「上位世界」から落とされた哀れなお人形」

「……悪意が満ちているけど、まぁその認識で問題ないわ。それで、その転生者に「終焉」の魔女が関心を持っているらしいのよ。あんたたちまだこの国にいる予定なんでしょ?」

 エーレ―のとんでもない発言に、僕もイヴも揃って固まった。

「転生者」自体はどうでもいい事だが、「終焉の魔女」が関心を持っているというのがとんでもない。

 あの魔女は真実「終焉」が形をとったような魔女なのだ。

 まわりのもの全てを終焉に誘う災厄の魔女。魔女達の中でもぶっちぎりでやばい奴である。

「「予言の魔女」がここエリュシオン王国に「転生者」が現れるって予言してね。それを「終焉」が聞いていたみたいなのよねぇ。まぁどうせ「混沌」が入れ知恵したんでしょうけどー」

「本当にろくなことをしないわね」

 イヴが面倒臭そうに呟いた。

「なかなかよさそうな国だしちょっと住んでみようかと思ってたのにね。……それにしてもエーレ―がこっちに助言してくるなんて、そっちの方が珍しいわ。何かあったの?」

「あぁ、私その転生者の一人を拾っちゃったのよ。中々バカで面白くてね。だから一応伝えておこうと思って」

 エーレーが二度目の衝撃的な発言を放った。


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