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15. 技術の力ってすげー

これを書くのに20日かかったという事実……

日曜の更新は、多分大丈夫なはずです……

 さあどうする、とは言ったものの、やっぱり僕のできることが増えるわけでもない。

 オーガアントの嚙みつきを避けつつ、弾丸を体に叩き込む。

 金属を弾くような音を立て、放たれた弾丸はオーガアントの甲殻に跳ね返された。


「あー、これじゃジリ貧だ…」


 すかさず飛んでくる大顎に白盾が反応、防御に入った隙に相手の射程外に退避する。

 そしてチラッと衛ノ宮さんの方を確認。相変わらず、変わりがない。


「衛ノ宮さん起きてよ~……」


 衛ノ宮さんの能力、『玉隔(タマヘダテ)』は自動防御機能こそあれど、自動でできるのはあくまで大雑把で単純な防御のみ。精密な操作は衛ノ宮さん本人にしかできないし、当然僕には制御権がない。衛ノ宮さんが一緒に戦ってくれていたらかなり戦力の幅が広がるのだが、今はそれもできない。

 とまあ、うだうだIFを考えていても仕方がないのはわかっている。今、自分が持っている手札が何か、冷静に考えなくてはいけない。


 と、動きが一瞬止まった僕に迫る大顎。


「……うおっ!」


 慌てて大きく身をそらせ、顎を回避する。

 ……早く対策を考えなくては。


 僕が今持つ攻撃手段は大きく三つだ。

 その1 威力不足の片手用拳銃2丁。

 その2 当てられないアサルトライフル、威力まあまあ。

 その3 うまく扱えないブレード2本、威力そこそこ。


 オーガアントの堅い装甲には、1の弾丸は通らない。牽制程度にはなるだろうが、とどめまでもっていくのは確実に無理だ。対大型(エネミー)モードにしたとしても、おそらくそれは変わらない。


 よって使うのは2か3なのだが、3は却下。

 ブレードは切れ味こそいいものの、対象を斬るためには適切な角度や位置の調整が重要で、またそれらを瞬時に見極める目を必要とする。僕はその目を持っていない。

 もろもろ関係なく全てをスパスパ斬れるレーザー刃の剣もあるが、残念ながらそれは訓練生には未解禁だ。


 残るは2、当てられないアサルトライフル。当然遠距離から撃てば当てられないため、僕がやるべきアクションは一つだけ。


「キシャァッ!」


「ふっ」 


 軽く息を吐きつつ、オーガアントの噛みつきを最小限の動きだけで躱す。大きな顎による攻撃は見た目は確かに派手ではあるが、アントの動きに慣れてくれば確かに教官の言ったとおり、攻撃に当たることがなくなった。もし当たりそうになったとしても、うまくタイミングを調整できさえすれば衛ノ宮さんの白盾が防いでくれる。

 あとは、二丁拳銃で牽制しつつ、落ち着いて機を待つのみ。


 そうやって、ギリギリのところでオーガアントの攻撃を避け続けること数分。


 疲れが溜まり始めたのか、アントの攻撃がだんだん大振りになってきた。

 オーガアントも一応生き物。重たい大顎をずっと振り回していれば、それも無理ないだろう。

 それに加え、もしアントがそこそこの知能をもっているのなら、目の前でちょろちょろ動く獲物に一撃も入れられず、痛くもなんともない豆鉄砲で挑発され続けたら、ストレスもかなり溜まるはず。


「多分、もうそろそろっ……!」


 多分とはいうが、予測というよりは願望に近い。攻撃を避けるための体力にはまだ余裕があるが、集中力が限界だ。早く、早くケリをつけないと――

 そんな僕の心の内を知ってか知らずか、大顎での連撃を続けていたアントの動きが一瞬止まる。そして、


「キシャアッ!」


 刹那の溜めののち繰り出された、強烈な、しかし明らかに乱れた一撃。

 確実に僕を仕留めるために、威力と勢いを最大まで上げた嚙みつきは、わずかに体を捻った僕に躱された。


 大きく空振った顎はその勢いのままに民家のブロック塀を突き破り、庭の土へ深々と埋まる。


 今までずっと大顎を振り回し続けていたオーガアントに生じた、明確な隙。


「これを待ってたんだっ!!」


 瞬時に武器をアサルトライフルへ持ち替え、全力でアントの正面へ駆け込む。

 アントの顎はまだ地面に埋まったままだ。頑張って引き抜こうとしているようだが、遅い。

 僕の腰より低い位置まで降りてきたアントの頭を右足で踏みつけしっかりと抑えてから、眉間にライフルの銃口を突きつける。


 Q. 威力的に使わざるを得ないが、当てることができないアサルトライフルを敵に当てるにはどうすればいいか?


「――ゼロ距離射撃、だ」


 ライフルのグリップを強く握りこみ、引き金を引き絞る。

 フルオートモードにセットされたアサルトライフルは、毎秒25発ものハイペースで能力E(エネルギー)製の特殊弾丸を吐き出し続ける。銃身が焼け付くこともなければ弾詰まりもしない、しかも射手の僕のエネルギー量は20万だから撃ち放題だ。


 超速で放たれる弾丸は、オーガアントの堅く分厚い甲殻をどんどん叩き、砕き、割っていく。


「キ、シャアァッッッ!!!!!」


 オーガアントは激しく悶え僕を振り払おうとするが、顎は未だ地面に刺さったまま。暴れているのは胴体ばかりで、大して意味を成していない。


「このまま頭撃ち抜いてやる!」


 飛び散る甲殻の欠片はすぐに体液の混じった肉片に変わり、それと共にオーガアントの叫びも大きくなる。もう外殻は貫通して、中の肉にダメージが行き始めているはずだ。もう少しで――っ!?


「キシャアアアアァァァッッッ!!!!」


「うわぁっ!?」


 突然足の下に感じる地面とアントの堅い甲殻の感触がなくなり、体の上下がめちゃくちゃになる。

 咄嗟に瞑ってしまった目を開けると、眼下には綺麗に並ぶ住宅の屋根と、道路の真ん中で大顎を振りかざす赤黒い巨体が。


「……やばくない、これ?」


 と思った次の瞬間、景色が回転、強い空気抵抗を感じたかと思えば、目の前にはアントが思いっきり開いたハサミの如く鋭い顎が――


 刹那視界に飛び込む白い影。


「ぐぺっ」


 うまく受け身を取れず、カエルがつぶれたような音が喉から漏れる。

 戦闘体の使用のおかげで痛みはない。すぐに体を起こし、状況確認。

 右の方を見ると、高速で電柱が後方へ流れ去っていくところだった。そして数メートル後ろには怒り狂ったオーガアントが一匹。ちなみに僕は地面を滑るように高速で飛ぶ白盾の上だ。


「ほんとに衛ノ宮さん様様だな……」


 相も変わらず倒れたままの衛ノ宮さんに、思わず感謝の言葉が漏れる。

 状況的に、オーガアントが顎の引き抜きに成功、その勢いで空へと跳ね上げられた僕の体が落下して大顎に両断される寸前、オートで動く白盾が間に入って僕を受け止めてくれたらしい。


 ただ、いくら大盾といえど、身長177センチの僕よりはさすがに二回り以上小さい。落ちないようにバランスをとりながら体勢を整え、オーガアントに目を向ける。


「キシャアアアアァァァッッッ!!!!」


 雄叫びを上げながら爆速で僕に追い付かんとするオーガアント。赤黒い全身を怒りでさらに赤く染め、ぎらぎらと光る大顎を振りかざして道路を激走している。あれはどう見てもマズい。もし僕が近づいたら、多分攻撃を避ける間もなく五秒であの世行きだ。

 さらには、集中力をフルに注ぎ込んで隙を作り、死力を尽くした結果であるこめかみの傷。もう完全に塞がりきってしまっている。痛みすら癒えているかもしれないし、痛みが消え去っていなかったとしても、それはオーガアントの激昂をさらに刺激する劇薬となる。


 思っていたよりもずっと早くオーガアントの復帰を許してしまったのは、完全に僕の落ち度だ。

 一見、状況の全てが振り出しへ、いや、振り出しよりもさらに後退してしまったかに思える現在の状況、しかし。


 猛々しいオーガアントの鬼気に気圧されつつも、アサルトライフルのモードスイッチを切り替えてダイヤルを回し、出力を最大にする。そしてライフルを両手でしっかりと構え、銃口をきっちりとオーガアントの方へ。


 ブロック塀や標識を薙ぎ倒しながら爆走するアントとの距離は徐々に縮まりつつはあるが、それでもまだ数メートルはある。僕がライフルの射撃でアントにダメージを与えることのできないギリギリの距離だ。

 それでも、今この状況では、僕にとって十分すぎる距離。


「これで、終わりだ」


 引き金を、思い切り引く。

 その瞬間、アントのこめかみ、傷があったところが白く光る。そして閃光が溢れ、オーガアントの頭は派手に爆発した。

サブタイトルがナンバーだけだったときは、「あ、あいつ時間までに書き終わんなかったんだな」って認識でお願いします…


https://mobile.twitter.com/kyo_shirota


更新がなかったときやタイトルがなかったときは、作者のTwitterに飛んでいただければ、苦悶の声を上げる作者が見られると思います

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