12. 少年へ
ちょっと短めです
6時間にも及ぶ計測を終えたあと、僕と研子さんはセンターのフードコートにいた。
現在の時刻は午前一時。人がやっている店はとっくに閉まっている頃合いだが、システムが自動化された店はまだ営業しているので、こういう時にありがたい。
牛丼を持ってとっていた席に戻ると、研子さんはすでにテーブルにハンバーガーのセットを広げていた。
「で、結局どうだったんですか、結果」
「ふぁふほふぁい?」
大きなハンバーガーをほおばりながら、研子さんが聞き返す。
「ふぁふほふぁい、じゃないですよ。今回の変化の詳細、まだ教えてもらってないじゃないですか。研子さん没頭中は声すら弾くからロクな会話もできないし」
「あー、そうだったか、すまないねぇ」
口の中のパテとバンズをコーラで流し込み、研子さんが口を開いた。
「まずいきなりレベルが二つも上がった理由だけれど……」
研子さんは軽くため息をついた。
「まあわからなかったよ。もともとサンプルが少ないうえに、今までの傾向からしてみれば、今回はかなりイレギュラーなケースだからね。仮説はいくつか考えられるんだが……」
「仮説でもいいんで教えてくださいよ」
僕の能力について、自分でも把握していることは少ない。何かわかることがあるのなら、仮説でもいいから教えてほしいのだが、研子さんは苦笑交じりに僕の言葉に答えた。
「いや、断る。私も研究者の端くれだ。確証の持てない仮説は口にしたくない。まあ、気長に待っていてくれ。必ず結果は出して見せるさ。それでだ」
コーラで口を潤しつつ、研子さんが言葉を続ける。
「追加されたバーについては、大方君の予想通りだったよ。『スタミナ』のバーは君の体力と連動している。運動すればするほど減っていって、バテて動けなくなれば0だ。『能力E』のバーもそのまま能力Eについてのもの、なんだが……」
少し言いよどむ研子さん。
「君は、今まで自分の能力Eの量について気にしたことは?」
「え、ないですけど」
僕の能力『ゲーマー』は、昨日まではただ自分のHPがわかるだけの能力だった。現時点でも見えることが二つ増えただけで、できることはあまり増えていない。そのため、正直自分でも今まであまり意識はしていなかった。能力の効果的に、バンバンエネルギーが減るようなものでもない、ということもある。
「……君の能力Eとバーの測定には骨が折れたよ。量がね、とんでもないんだ。EDAの、対巨大敵殲滅用光学能力砲……俗に言うメガキャノン、君も聞いたことあるだろう?あれ20発分だったよ。ランクAの戦闘員と比べても遜色のないレベルだ」
「……それ、ほんとですか?」
メガキャノンは、EDAの攻撃兵器の中でも最強と言われているレーザー砲だ。それが20発分……。あまり想像できない。
「正直、盲点だったよ。今まで能力にばかり注目しすぎた。周りもきっとそうだったのだろう。君のパーソナルデータにすら記述がなかったほどだ。まあ有り余るエネルギーがあったとしても、能力自体が大したことないのなら宝の持ち腐れといえるが……」
そして口の端を持ち上げながら研子さんが続けた。
「今でこそ君ができることは少ない。けれど、君のその力が成長したとき、どうなるか本当に楽しみだよ。恐ろしくすらある。頑張ってくれたまえよ、少年」
おそらく次で実戦