10. 久々に聞く音
EDAの防衛隊員は、それぞれの戦闘力によってAからEまで、5段階のランク付けがされている。
例えば、一番上はAランク。最上位の実力を持つ者に割り振られるランクであり、世界でも五十人ほどしかいない。日本にはそのうちの四人がいて、日本4位の渡さんもAランクだ。
そして、この度晴れてEDAの正隊員となった僕、出雲春高のランクは一番低いE。訓練生を示すランクである。
そんなわけでEDAに入隊してから一か月、僕はひたすら訓練漬けの日々を送っている。
その内容はというと、体力トレーニングに出力を上げた戦闘体+防御アーマーを身に着けての運動訓練、戦術や能力、敵についての座学などなど、正直地味なものばかり。僕は何とも思っていないけれど、一緒に訓練を受けている同期の仲間には不満をこぼす人も少なくなかった。
そして今日も今日とてまた訓練に向かうわけであるが、今回の訓練はいつものものとは一味違う。みんなのやる気は高いし、僕も以前から楽しみにしていた。
「――お前らが入隊してから一か月。今までよく地味な訓練頑張ってきたな。つーわけで、お前らに――武装許可を出す。今日から武器の訓練すんぞ」
僕たちの組の指導官、佐久間先生がこう告げる。訓練室は静かなままだが、みんなが興奮しているのがよくわかった。
「前に教えたが、EDAからお前らに支給される基本武器は――あーじゃあ南雲、答えてみろ」
「はい。アサルトライフル、拳銃、戦闘用ブレードがそれぞれ二つずつ、それにシ-ルドが一つです」
南雲くんの挙げたEDAから支給される武器は、全隊員共通の武装だ。能力由来の新素材で作られていて、能力エネルギーを動力源にする。また、勉強した話だとランクが上がれば自分で武器を申請することもできるし、そもそも上位の戦闘員は支給武器を使わないことがほとんどらしい。
「そーだ。で、今日やんのは拳銃の訓練な。そんじゃ、『室内モード:射撃訓練場』」
教官が言うなり、訓練室の中がぱっと変化した。椅子と机が並んでいた教室が、一瞬にして射撃の訓練室へ。部屋のサイズからガラリと変わり、今部屋にいる二十人分の射撃レーンまでしっかりそろっている。
「そんじゃまずは、銃出してみろ。一通りは教えたが、一応確認しとくぞ。やり方は簡単だ。昨日座学やったとき銃のモデル見せたろ、あれをイメージするだけだ。装備のデータは全部フォースリングの中に格納されてっけど、拳銃のロックだけ外してある。そんなことはないと思うけど、もしできなかったヤツがいたら手ぇ上げろ~」
教官の言うとおりに拳銃の形をイメージ――すると、刹那の間もなく僕の右手の中に拳銃が現れた。
見た目はオートマチック式のそれで、灰色を基調としている。そして、思っていたよりもかなり軽い。スマホよりも少し重いくらいじゃないだろうか。
「そんで、撃ち方も簡単だ。『撃つ』って強く思いながら引き金を引くだけ。実銃みてえな安全装置とかそういう類のもんはついてない。しいて言うならお前らの意思が安全装置だな。ま、こういう感じだ」
そういうなり、教官はいつの間にか手にしていた銃で、前方にある的を撃ちぬいた。一切無駄のない、流れるような動きだ。
「そんで、これも教えたと思うが、この銃の射程はマックス50m。まあお前らにいきなり50m先狙えっつっても無理だから、今日は5mからだ。で、装弾数だが、普段はお前らの能力エネルギーに左右される。けど今日は訓練室から自動で供給されっから実質無制限だな。まずは今から30分やる。とにかく目の前の的狙って撃て。当然だが、真ん中に当たればポイントは高くなる。もちろん、ほかのヤツ狙うなよ。そんじゃ、始め~」
佐久間教官の、なんだか気の抜けるような掛け声と同時に、僕たちのレーンに一斉に、丸形の的が出現した。
とりあえず、まずは教官がやっていたように片手で銃を構え、引き金を引いてみる。
タンッ、と軽い音とともに、僕の銃から弾丸が発射された。
「おおっ、出た!けど……」
弾は的には当たらず、虚空へ消え去っただけ。これでは意味がない。
「5m、結構難しいな……。もう一発!」
銃を構え、引き金を引く。しかし、当たらない。
「おい馬鹿か出雲、教えたろ。初心者はしっかり正面向いて、両手で構えんだよ」
「すみません!」
さすがに教官のようにはうまくいかないようだ。いったん片手撃ちは諦めて、教官の言うように正面に向き直り、両手で銃を構え、引き金を引く。
銃声がした瞬間、ピピッ、という軽い電子音が聞こえた。的に弾が当たった音だ。
「やった!……って、え?」
そして、的の命中音がした次の瞬間。
ピロリン、という軽い電子音が響いた。
電子音、という点では命中音と似ているが、さっきのとは明らかに異なるそれ。
僕が人生で、たった3回だけ聞いたことがある音。
頭上を見上げると『出雲春高 Lv4→Lv6』の表示が。
……つまり、どうやら僕は、レベルアップしたらしい。しかも、一度に二つも。
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正直こんなに早くいくとは思っていなかったので、すっごくうれしいです。読んでくださっている皆さん、本当にありがとうございます!!
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ちなみに、もう数話で実戦行きます