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ヲタッキーズ44 リトル広東のP札

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

彼女が率いる"ヲタッキーズ"が秋葉原の平和を護り抜く。


ヲトナのジュブナイル第44話"リトル広東のP札"。さて、今回はオリンピックを終えた秋葉原の新幹線ガード下に強盗団が出没w


ところが、強盗団を追う内に財務省が長年追い続ける偽札団の存在が浮上、そこに主人公の渋谷時代の同棲相手が現れて…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 カメラは見ていた


覆面男のトリオ(3人組)がケータイ屋で店員や客に短機関銃をつきつけて叫ぶw

腰を抜かす者、呆然と立ち尽くす者、四つん這いになって逃げ惑う者…


強盗現場は阿鼻叫喚だが音声はナイ。

全てはカメラの画像の中の出来事だ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その日、アキバは真夏の生暖かい雨。


「状況は?」

「3人組のマシンガン強盗。犠牲者3名。30分の間に6軒を襲い、キャッシャーから現金を強奪」

「30分で6軒?計画的な犯行?」


強盗現場は、神田川沿いの新幹線ゲート下で通報を受けたパトカーや救急車が続々集結。

傘を差しながら車の間を足早に縫い、制服警官から事情を聞くのは万世橋(アキバポリス)のラギィ警部。


「ソレが、襲われたのはケータイ屋、化粧品店、JKマッサージ、耳かき、コンカフェ、電子パーツ店です」

「ATMや外貨両替所は素通りなの?」

「YES。余り計画的とは思えませんがw」

「で、最後の耳かき店で乱射し犠牲者を出して逃げたのね。ところで、何でジャドーを呼ぶの?」


ジャドーはアキバに開いた"リアルの裂け目"から降臨スル恐怖の大王と戦う秘密組織だ。


「防犯ビデオを回収したのですが…ヤタラ画質が悪くて使えナイのです」

「あら。万世橋警察署(ウチ)にだって鑑識はアルけど」

「…でも、あの例の"メイドのセンセ"がいないでしょ?首相官邸アドバイザーの」

「ルイナのコト?」

「彼女の開発した画像補正プログラムを利用出来ればなと思って」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パーツ通りの、とあるゲーセンの地下深くに秘密裡につくられたジャドー司令部のラボ。


「コレが防犯ビデオの画像から撮った静止画ょ。低解像度デジタルだから拡大するとデータが乏しくて不鮮明になるのょ…こんな感じ?」


司令部の正面スクリーンが砂嵐状態になるw


「で、周辺の画素から予測アルゴリズムを立てて、砂嵐の中にアルべき画素を予測する方程式を立てたワケ。コレがその方程式で…え?方程式には興味なし?ココが面白いのに」

「あ。また今度ね。で、時間かかる?」

「今は"シドレ"が使えないから…ココのコンピューターだと、あと6時間ぐらいかかるわ」


"シドレ"はアキバ上空3万6000kmの軌道に浮かぶジャドーの量子コンピューター衛星だ。

この"シドレ"が"リアルの裂け目"を探知スルと直ちにジャドー全ステーションに急報。


「"シドレ"の計算セクターは今、市ヶ(ぼうえいしょう)が XASM-4 の弾道計算に使ってて…」

「コッチは殺人事件の捜査なのょ?」

「首相官邸の仕切りだから」


ハナから諦め顔なのは、ジャドーの沈着冷静なレイカ最高司令官だ。

ゲーセン店員のコスプレで銀ラメのコスモルックに紫色のウィッグ。


アラサーなのにw


「待って。強盗の持ってる短機関銃はスターム・ルガーの MP-9 だわ。あんな高価な銃を何処で?」

「何気に、腕時計もロレックスGMTマスターね。お金持ちのボンボン?」

「確かに高価な宝石は素通りして、レジから端金(はしたがね)を強奪してる。スリル目当ての犯行かしら」

「態度もヤタラと冷静で、ハングリー精神に欠けるわ」←

「やはり犯行は計画的。何か目的があるわ…え。何?わかった。直ぐ行くわ」


ラギィ警部に電話だ。

全員の注目が集まる。


「また事件発生ょ。MP-9 の薬莢が出たわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


現場は駅に直結したタワマンの1室だ。


「あ、ラギィ警部。現場は奥です。コチラは?」

「ジャドーの関係者。今回、合同捜査になったから入れてあげて」

「わかりました。テリィたん、お疲れ様です!」


僕をはじめヲタッキーズ全員でドヤドヤと黄色い規制テープをくぐって現場に入ったら…

東京の夜景を睥睨スル高級タワマンの角部屋w


「うっとり!素敵な夜景…コレで乱射事件の現場でなければ…」

「そのビニール袋は何?有料化してから余り見かけなくなったけど…買い物三昧?」

「中身は、音楽プレーヤー、シューズ、腕時計…恐らく襲われた店のですね。盗品かな?」

「コッチもです。やや?ゴミ箱にレシートが…と言うコトは、現金払いでお買い求め?」

「うーんカードを使わないとは高級タワマンポクないわね」


ココで、またまたラギィ警部に電話。

今回はラボで画像解析中のルイナだ。


「防犯カメラ画像を過去に遡って見てルンだけど、どのお店も強盗に襲われる数時間前に、恐らく20代女子が2人で来てるわ」

「下見の偵察?」

「うーんソレにしちゃヤタラあれこれ買ってるわ」

「買ってる?ちょっと待って。20代の2人と言ったっけ?逆だった金髪(パツキン)と美白系の色白に高い鼻?」

「あら。もう見つけたの?さすがは、万世橋警察署(アキバP.D.)の敏腕警部ね」

「え?うん。マ、マァね…でも、死んでるのょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ハンヨとイソンの姉妹です。29才と26才。死亡推定時刻は午後2時」

「え。ソレって、つまり強盗事件が発生する30分前ってコト?」

「YES。薬莢は、ガード下の強盗事件で使われた MP-9 と一致しました」

「2人は襲われた店で午前中に買い物をして

午後2時には死んでいたワケね」


第2章 泣き崩れる両親


「娘達は、先月貸したお金を昨夜返しに来てくれたのです」

「現金で?お札を拝見しても?」

「モチロンです。どうぞ」


殺されたハンヨとイソンの両親は、別のタワマンに住んでいる。

どうやら、現場は"子供部屋"らしい。どこまで金持ちナンだw


「全部使い古しの万札ですね。ハンヨさん達は何処でこのお金を?」

「警部さん。あの年頃の子は、親には余り話さないモノです。大方メイドカジノで勝ったとか、ソンなモノかと」

「強盗事件との関係を調べます。おふたりのお仕事は?」

「姉妹は、外神田2丁目の撮影所で…」


泣き崩れる母親。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ココを撮影所と呼べるのかどうか…確かにショボいプロダクションがいくつか入ってるが…昭和の頃は工場団地と呼ばれてた古い建物だ」

「ハンヨとイソンの姉妹はココで?」

「4ヶ月前からだ。一応、管理人みたいなコトもさせてたが、今は俺が建物全体を直接管理している」

「ご苦労様」

「あの姉妹には同情するが、俺だって苦しいんだ。昨夜もテナントの1つが夜逃げしちまったしな。全く冗談じゃねぇよ」


一同は貨物用エレベーターで2階へと上る。


「テナントが夜逃げか。その翌日、管理人の姉妹が殺された。夜逃げしたテナントの商売は?」

「機関紙の発行だとさ。印刷機が置いてあった。政治的なビラとか、困ルンだょな。そーゆーのは、ネットでやれネットで」

「そのテナントとは、実際に会って契約したの?」

「契約したのはハンヨだ。俺は会ってもいない」


夜逃げしたテナントの部屋は狭く、真ん中に印刷機?がドンと置かれてる。

内装も機械も全てがレトロで、教科書でしか耳にしない家庭内手工業の趣。


ゴミ箱には…ボロ雑巾のような布切れ?


「何ソレ?」

「わからないわ。あとコッチは多分インクね」

「紙なのに布地みたい。コットンリネンに似てるわ。光沢がアル」


ラギィ警部がウンザリ顔で長い溜息をつく。


「財務省を呼んで。もしかしたら、ココは…偽札工場カモ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「確かに偽造紙幣ね。紫外線でなきゃ見えないハズの"透かし"まで入ってる。どなたかモノホンをお持ち?」

「え。最後の万札ナンだ。必ず返してくれょモフィ」

「ありがと、テリィたん。必ず返すわ。私、貴方のモノは全て返した。でも、貴方は私のモノは何ひとつ返さない」


ヤバい!全員の視線の集中砲火を浴びるw


モフィは、財務省の大臣官房で通貨危機管理官をやってる、そのまぁ…古い友人←

黒のタイトなミニスカに純白ブラウスはボタン全開で谷間も解禁、首にスカーフ…


スッチーかょw


「しかし、何でココでモフィが出て来るンだょ。確か財務省だったょな?コレって警察の仕事だろ?」

「あのね。太平洋の向こう岸の国で大統領を警護するシークレットサービスだけど、アレって、元は財務省に創設された通貨偽造に関する防諜・捜査機関だったのょ?昔から通貨偽造は、国家として対応せざるを得ない重大事案なの。覚えておいて頂戴…しかし、精巧だわぁ。ほとんどのP札って粗末なモンなのに」

「P札?」

「パソコンで作った偽札のコト。でも、コレは恐らく原盤から刷ってるわね。紙も上質だし磁性インクを使ってる」


紙幣の印刷には磁性インクが用いられ、部分毎に帯びる磁気量が厳格に定められている。


「この出来なら、照明を落としたナイトシフトのソフト風俗やメイドカフェなら十分通用スルわ。見事な職人技に最新テクノロジーが融合してる…"奴等"だわ」

「"奴等"?」

財務省(ウチ)が追ってる偽札団。この5年間時々現れては消える。いつも小額紙幣なのょ」

「でも、コレは万札ょ」

「万札はリスクが高い。"奴等"は慎重で忍耐強く、決して自分では使わないの」

「ソレじゃどうやって利益を出すの?」

「100万円分の偽札を30〜40万円で売る。買うのはギャングや犯罪組織。そして、彼等の軍資金に化ける」

「いわゆるコピー紙幣とは次元が違うのね」

「YES。先ず画家が絵を描いて、ソレに沿って彫刻を施し原盤をつくってる」

「画家がいるのかょwモフィは、5年も追って容疑者とかいないのか?」

「…いない。今回も捜査を続けて、銀行に注意を促すけど…あぁ今度こそ見つかると良いけど」

「ハナから捨ててるなwポジティブガールが珍しいね」

「いつも逃げられてるのょ。ズルい男と同じ…じゃ偽札はウチが。所轄(アキバポリス)は殺人をお願いね」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ヲタッキーズ科学顧問のルイナが口を挟む。


「捜査は、データ対話型ではなく事例指向で行くべきだと思うの」

「アンタ、誰?」

「データ対話型は、貴女みたいに殺人と偽札を分けて考える。事例指向では、殺人と偽札を変数と捉えて、その相互作用から分析するのょ」


早速捜査方針をめぐって衝突だ。

モフィは僕を廊下へと呼び出す。


「話せる?テリィたん」

「うーん」

「なぜヲタッキーズの顧問が財務省の仕事に口出しスルの?」

「ルイナは、首相官邸のアドバイザーだし、僕も彼女の意見に賛成だけどな」

「でも!事前に言ってょ!」

「あれ?問題は、ルイナじゃナイね?」

「え。そ、そーカモ…」

「渋谷から出たのか?」

「えぇ。確かに移ったわ。テリィたんは…お母さんの病気のコトで戻ったのは理解してるつもりょ」

「今は仕事に集中しよう」

「貴方は…平気なのね。昔みたい」


歩き去るモフィ。

僕は溜息をつく。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋警察署(アキバP.D.)で捜査方針会議。


結局、偽札事件はジャドーとの合同捜査となり、ヲタッキーズにも御座敷がかかる。

あ、ヲタッキーズは僕の推しであるミユリさん率いるスーパーヒロイングループだ。


ジャドー傘下の民間軍事会社(PMC)


「ハンヨとイソンの姉妹は、偽札を見つけ、ソレを盗んで買い物に出掛けた」

「犯人は、姉妹を殺し、偽札を取り戻した」

「冷酷な手口ね」


溜息をつくムーンライトセレナーダーは、ミユリさんが変身した姿だ。

黒のセパレートにヘソ出しのコスチュームなんだが…彼女もアラサーw


「偽札のつくりからは、老練で控えめな職人気質の犯人像だけど」

「でも、殺人犯の方は違うわ。ハデで高級品志向だし」

「となると、犯人はグループね」

「通常、性格がバラバラだと仲間割れして長続きはしないけど」

「でも、犯行はもう5年も続いている」

「若い実行犯がベテランの偽造職人と組んだって感じ?…そー逝えば、テリィ様。モフィさんとは昔、何かあったのですか?」


ミユリさん…じゃなかった、ムーンライトセレナーダーから衆人環視の中で唐突な質問w


「え。い、いや…中央官庁ならではの省庁間の省益対立とかあってさ。でも、もう解決した。ホラ、縦割り行政だから」

「何をおっしゃってるのかイマイチ…」

「じゃ明日!」


運良くちょうど来たEVに飛び込む僕。

コスプレのママ溜息をつくミユリさん。


じゃなかった、ムーンライトセレナーダーw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


潜り酒場(スピークイージー)"。


ミユリさんは、スーパーヒロインに変身スル前は、ココでメイド長をやっている。

ムーンライトセレナーダーはセクシーだが、やっぱりメイド服の彼女が落ち着く。


「おかえりなさいませ、テリィ様。で、モフィさんとは昔…」

「ルイナ!何やってるの?マルバツ?」

「偽札との比較ょ。今日、ラギィさんが押収した偽札と、モフィさんが5年前に押収した偽札との比較。小さな違いでも見つかれば捜査に役立つかもしれないと思って…テリィたん、モフィさんを怒らせてゴメンね?」


ルイナはヲタッキーズの科学顧問で史上最年少の首相官邸アドバイザーだ。

プロジェクターで壁に偽札画像を拡大投影して両者の異なる部分を確認中。


なお、御屋敷の流儀に従いメイド服を着用←


「しかし、テリィ様。素敵なヲタクの勘ですょね。マリトッツォを買って来たら御帰宅されました」

「僕はただ…え。マリトッツォ?ローマの生クリーム饅頭?ルイナ!その比較、未だかかるの?お茶にしない?」

「大丈夫。あと数日で終わるわ」←


おい!目の前のマリトッツォが見えないかw


「テリィたん。お札に印刷されてる螺旋模様がギヨシェの技術だって知ってた?曲線に曲線を重ねるように、いくつもの正弦波(サインカーブ)で描かれてるの」

「…"ファヴェルジェーの卵"で有名な模様だっけ(ってか早くマリトッツォ食べよぉw)?で、何かわかったの?」


すると、今回は和ロリなメイド服のルイナが無邪気な顔してトンでもないコトを逝い出す。


「最近、原盤を描く画家が変わってるわ」

「何だって?!」

「この螺旋を名画の鑑定にも使われるウェーブレット解析してみた。今回、新幹線ガード下で使われてる偽札と、以前、財務省が押収した偽札では、画家が違うわ」

「な、何でソンなコトがわかるの?」

「画家を浜辺のランナーだと思って。浜辺を走る画家の足跡には、彼の選択が記録されてる。走る速さ、足に込める力、海からの距離感、加速度。その足跡を真似て、偽札を描く次のランナーは、最初のランナーの足跡をたどろうとするけど、いくら気をつけても自分の特徴を刻んでしまう。だって、足のサイズも歩幅も違うから。この2枚の偽札に刻まれた足跡は、微妙に、でも決定的に違ってるのょ」

「新しい画家がいるのか(既にマリトッツォを食べながらw)?ってか、なぜ画家ナンて呼ぶんだ?ただのコピー犯だろ?」

「テリィたん。貴方はフリーハンドでモナリザの贋作を描ける?」

「私が全面的に悪うございましたw」

「とりあえず私は、この2つを比較分析して、その結果をグラフにしてから多元的に…」


最後まで聞かずミユリさんがスマホを抜く。


「ラギィ警部?ムーンライトセレナーダーです。ターゲットは偽札犯だけじゃなかった。アキバ全域の贋作犯をリストアップょ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋警察署(アキバP.D.)


「8人見つけました!」

「警部、3週間前に気になる誘拐事件がありました。ヒュズと言う女流画家が誘拐されてます。資料に拠ると、恐らく女性と思われるコンビ(2人組)がアトリエに押し入り画家を拉致、2人組は外国製の自動拳銃(マシンピストル)で武装、とあります」

「スターム・ルガーかしら。このファイル、借りるわょ」

「OK、警部。返さなくて結構です」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


げ!アトリエ…と思ったら絵画商法の店だw


「嫁の誘拐と強盗事件に何か関係が?」

「可能性はあります」

「嫁の絵はココに展示してあります。ムーンライトセレナーダーも1枚、如何ですか?」


末広町駅に近い"エウラ"は、数百円の絵を数百万円で売るキャッチ商法の"老舗"だ。

昔は売り手も美少女揃いだったが、新陳代謝が進まズに今は相応の女性陣が頑張ってる。


応対に出たのは"エウラ"が電気街口にあった頃から胡散臭さプンプンのガイカ店長だw


「やや?原画より小さめなミニチュア画が多いようですが」

「嫁は、名画を縮小しても筆致の力強さを残せるかの実験をしていました」

「磁性インクを…」

「はい?異星人?」

「エヘンえへん!全てフリーハンドですか?」


あ、僕はムーンライトセレナーダーに変身しているミユリさんとお邪魔してルンだけど…


「ムーンライトセレナーダー。嫁の画才には素晴らしいモノがありました。ソレが何か?」

「このお札の模様と比較を…」

「えへんエヘン!あの、奥さんのヒュズ画伯の作品を貸してもらえますか?万世橋(アキバポリス)が責任を持って返却致します」


ガイカ店長は、揉み手に卑しい笑顔で迫る。


「売り物なので困ります。是非お買い上げください。何ならカードローンを組みましょうか?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕はミニチュア絵画を詰めた段ボール箱を両手で抱え、ミユリさんと中央通りを歩く。

彼女がムーンライトセレナーダーに変身してると、みんなが振り向き結構恥ずかしい←


スーパーヒロイン連れの失業者(ヒモ)みたいw


「テリィ様、捜査の内容を臭わすコトを勝手に話しちゃダメですょ」

「ごめん。でも"エウラ"の店長が何となく哀れで」

「彼も容疑者です。そもそもリアルで結婚してるかも怪しいし」

「そっか、嫁って便利な言葉だな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


そのママ"潜り酒場(スピークイージー)"にミニチュア原画を持ち込む。

ルイナは未だ和ロリのメイド服のママ解析作業に没頭している。


「ラギィさんから届いたアキバに巣食う贋作者の絵と偽札を比べてる。コレは、その比較分析の多次元グラフを2次元にしてからウェーブレット解析で…」

「ソコ、省略でw」

「…7人の偽造犯や贋作者の絵と比較したけど、類似点はゼロ。でも、この2つは瓜二つなの。偽札団の画家はヒュズ画伯に間違いないわ」

「じゃ…誘拐されて3週間か。未だ巷に偽札は万札しか出回ってナイけど、1万円冊の模写って何日ぐらいかかるのかな?」

「わからないけど…私なら時間をかけるわ。だって、描き終えたら用無しで口封じに殺されるの確実だから」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ミユリさんの大号令がかかって新幹線ガード下界隈のメイド長が"潜り酒場(スピークイージー)"に大集合だw


「みんな、力を貸して!偽札団が絵画商法(すけひろちょう)の画家ヒュズを誘拐した。偽札の原画を描かせるためょ。彼女は、既に万札の原画を描き上げ、目下千円札に取り掛かり中。千円札を描き上げる前に、手がかりを見つけて偽札団を逮捕しないと、恐らく彼女は殺されるわ。さ、警部」

万世橋警察署(アキバP.D.)のラギィ警部です。日頃から警察に協力ありがとう。早速だけど、また偽札が見つかったわ。新幹線のガード下と外でも2カ所」


コンカフェ(コンセプトカフェ)のメイド長マリ子から手が上がる。


「ラギィさん。ドラッグから売人を突き止める、いつものやり方で追ってはどーなの?あ、でもソレじゃ入金した人間までは辿り着けないか」

「なるほど!でも、買い物のパターンから方程式を導けるわ…」

「え。アンタ、誰?やたらメイド服が似合わないンだけど」

「あ、私のお友達のルイナちゃん。仲良くして」

「あ。ミユリ姐様のお友達?」

「…ルイナさん、でもソレは警察と財務省がヤルわ。どちらにせよ、お金の流れを予測し偽札を追跡するのは難しいけど」

「いいえ。難しいけど不可能じゃないわ。逆に分散が少ないのは有利なの!だって…」

「はい、次の質問は…ソコの女忍者さん」

「で、ミユリお館様が必要な情報は何でゴザルか?」

「偽札が出た場所の情報ょ。みんな、今宵の営業から現金払いの客がいたら、お札のチェックをお願い!コレが偽の万札ょ!範囲は新幹線ガード下に限定します。ブルセラショップからJKマッサージ、個撮屋、コスキャバ、自分の御屋敷はモチロン、出来れば他の萌え系も当たって欲しいの。くまなく調べて。ソレでOK?ラギィ警部?」

「ありがとう、ミユリさん。偽札は、精巧だけど完璧じゃない。ココに見分ける方法をまとめました。見つけ次第、直ちに連絡を。みんなが見つけた件数が増えれば、ソレだけ行動予測の精度は上がり、犯人に近づける」


ミユリさんが締めくくる。


「絵画商法とは逝え、アキバで働く24才女子の命がかかってるわ。よろしくね!」


第3章 メイド捜査網(アンタッチャブル)


新幹線ガード下は、スロット屋もあって膨大な枚数の万札が動くアキバのラスベガスだ。

メイドはモチロン、全てのコスプレした店員がその1枚1枚を偽札かどうか確認を始める。


「OK。捜査範囲を絞るわ。ガード下の神田川側ょ。駅側は警戒解除!」

「どういうコト?教えて、ルイナ」

「確率アルゴリズムょ」


メイド捜査網の本部"隠れ酒場"の壁にはプロジェクターでガード下の地図が投影されてる。

現場からの"偽札発見"の報告が入る度にルイナが発見場所に印をつけて全体を俯瞰してる。


「確率アルゴリズム?何ソレ?美味しいの?」

「偽札工場の座標を 0-0 とスルわね?で、ココから偽札をバラ撒く。使われた場所の座標は XY で表されるわ。1枚見つかる毎に分散の様子がわかってくる。ソレを元に予測方程式を立てれば、残りの偽札が何処にアルかまでワカるカモ」

「うーん偽札を多く発見すればスルほど、犯人に近づくワケね?」

「YES。でも、ソレだけじゃない。何を買ったかも重要なの。風俗で使った 4〜5 枚よりコンビニで使った 1枚の方が重要ょ。ホラ、誰でも牛乳やタバコは家の近くで買うでしょ?」

「なるほど!」


そう説明しながら、ルイナは続々寄せられる情報の対応に嬉々として没頭スル。

ソレを横目にモフィ(御屋敷の流儀に従いアンミラ風メイド服w)がミユリさんに…


「ミユリさんってスゴいのね。秋葉原の全てのメイドのお姉さんなの?貴女とテリィたん、良く似てるわ」

「え。そう?大概似てないって逝われるからそう言われると何だかウレしい。モフィさん。今、アキバを回しているのはシスターフッドだと思うの」

「シスターフッド?」

「お茶とお喋りが中心の女性的な互助連帯。その力がアキバを回してる。男の子達が物欲と性欲に溺れるスタートアップヲレヲレ社会で勝手に萌え尽きてる内に、私達メイドは、姉妹友人関係の中で、お互い助け合いハッピーな連帯をして、その力が、このアキバを回しているのょ」

「そして…その力はアキバだけじゃなく、もしかしたら、地球をも回しているのカモね。うーん確かに貴女はテリィたんと性格は真逆カモね。でも、ヤタラお友達が多くて、何ゴトもみんなで取り組みたがるトコロはソックリだわ」


さらにウレしそうに微笑むミユリさんだが…


「私、テリィたんと同棲してた頃、靴箱は別々だった。いつも私は適当に放り込むのに、彼は同じ順番に並べたがるから」

「え。テリィ様と…同棲してた?」

「(渋谷の)百軒店のアパートで。え?聞いてないの(ヤバいw)?」

「私も池袋で遊んでたから…話してくださったとは思うけど、貴女のコトだとは思わなかっただけ」

「い、いいのょ。彼の性格なら知ってるし」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


元カノと今カノが、まーさかソンな終末的会話をしてるとはツユ知らない僕は、ラギィ警部と僕にしか果たせない義務を果たしているw


「センム!お元気ですか?」

「おぉテリィか?未だミユリのヒモやってンのか?ミユリがメイド連中を使って大騒ぎしてる偽札の件だろ。おや、お連れのアンタは誰?テリィ、まさか推し変…」

「新橋から転勤して参りました万世橋警察署(アキバP.D.)のラギィと申します。はじめまして、元偽札犯のセンムさん」


センムは、新幹線ガード下にあるコピー商品の生産拠点"リトル広東(キャントン)"の日本総代理人だw

"リトル広東(キャントン)"は海外のヲタク向けにアイドル系萌えグッズのコピー商品を販売している。


で、僕はセンムには色々と貸しがアルw


「どーやら、ソッチの嬢ちゃんには自己紹介は不要みたいだな。ルパンで有名なゴート札(偽札)の偽札を刷ったのは、この俺だ。だが、足を洗った。もう25年も札は刷ってナイ。万世橋(アキバポリス)も署内で情報回覧よろしくな」

「あら。校正出来たのは何のおかげかしら?」

「"萌え"さ。今の商売の方が偽札より遥かに儲かる」

「そんなに?」

「あぁウチの顧客は、海外の王族やら億万長者やらヲタクだけどセレブばかりだからな。しかも、コロナで、みんな秋葉原には来れねぇと来ちゃ去年からネットの注文が365日24時間、入りっ放しさ。昔、ミユリのパンツ売って暇こいてた頃が懐かしい…ん?何だコレ?」


あ、センムはこーなる前は、ブルセラショップの気の良いオヤジだったのだw

僕は夜逃げした工場のゴミ箱から拾ったインクの染みたボロ切れを差し出す。


クンクンと匂いを嗅ぐセンム←


「モノホンに近い。OVIだな?」

「さすがだね。やっぱり今もゴート札を刷ってルンだ?」

「朝嗅ぐ光学可変インクの匂いは最高だ…札は通常3種類のインクで刷る。表の黒、裏の緑にコレだ。見る角度で黒にも緑にも見える魔法のインクだ」

「センム、このインクを作れる?」

「当たり前だ。ただ、俺以外となると…"リトル広東"の下請けをやってるブラドだな。新しい設備を買い揃えたばかりだ…ん?何だ?」

「センムさん、下請けをアッサリ警察に売るのね?」

「女警部さん。この世界も、アンタらと同じ、貸し借りで回ってるのさ。因果はめぐる。俺は今、奴に古い借りを返したトコロってワケだ」

「へぇ。じゃ、そのブラドは昔、センムを誰に売ったの?」

「カリオストロ」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び"潜り酒場(スピークイージー)"。


続々集まるデータを、集計スルや即解析を行っているルイナが晴れ晴れとした顔で報告。


「ミユリ姉様!モフィさん!データ交換速度を十分に考慮したか気になってたけど…大丈夫みたいょ!捜査範囲を絞る度に、偽札の数が増えてるわ!」


ミユリさんとモフィは曖昧な笑顔を返しながら、顔を見合わせてソッと意見を交換スル。


「何を逝ってるのかワカラナイわ」

「え。ミユリさんがソレじゃ困ルンだけど」

「ところで。テリィ様とは…真剣だったの?」

「う、うーん忘れてソレwまさか貴女が知らなかったとは…」


漂い出す気不味い空気…

ソコへ救い?の凱歌が!


「大当たりよっ!捜査区域のコスキャバでレジから7枚!」

「7枚も?」

「統計的には 1〜2 枚が普通なの。ソレが7枚も使うなんて!」

「全員に大盤振る舞いかシャンパンタワーのどっちかね。思い切り目立ってくれてありがとうって言いたい」

「うーん確かに昨夜、常連がヤタラ気前良くおごってたそうょ。その太っ腹な常連の名はカミン」

「会ってみましょう」

「私も行くわ。予測を実地で確認したい!」


メイド服で飛び出すモフィとルイナとラギィ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


残されたミユリさんは、カウンターの中で何やらPCで(よからぬw)ネットサーフィン中だw


「メイド長、何かお探しですか?」

「いたわ。この写メ…」

「わ、コレ、テリィたんですか?!テリィたんが…ロン毛?激レアですょメイド長!」


ヘルプのつぼみんが素っ頓狂な大声を上げるw


「渋谷時代のテリィ様のブログょ」

「うわぁ!コッチはモフィさんですか?ま、まさかのサーファーガール!」

「この頃、ふたりは同棲してた。一緒に暮らしてたのに、私は何も知らない…」


ヤバい!地雷だわ…つぼみん、思わズ後退(あとずさ)り←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


深夜で人通りも絶え、闇に沈むパーツ通り。


「もしもし。ソコのお兄さん」

「何だ?自衛隊には入らないぞ」←

「職務質問ょ。万世橋警察署(アキバP.D.)のラギィ警部。コチラはモフィとルイナ」


驚いたコスキャバ常連のカミンが振り向くとメイド3人組が立っててマスマス驚かされるw


「な、何の用…ですか?」

「アンタが遊んだコスキャバから偽札が出たの。黒服はアンタが使ったって」

「ソ、ソイツの見間違いッス。俺は、いつもニコニコカード払いだから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


大人しく立ち去ったメイド達はパーツ通りの裏路地に駐車してる黒いSUVのドアを叩く。


「あ。警部、お疲れでした!あれ?メイド姿?レアだ!ツーショットを…」

「撮ったら殺す。で、どーなの?」

「ビンゴっス。おふたりと別れて30秒後には、もう電話してます」


黒いSUVは、万世橋の無線指揮車で内部には電子機器がギッシリ詰まってる。

担当の警官は、盗聴した電話を再生しながら何とかメイド姿のラギィも盗撮←


"ケビィも偽札で払いやがったな"

"何の話だ"

"万世橋が嗅ぎつけやがったぞ"

"おい!馬鹿はするなとアレほど言っただろう!」

"何?誰が馬鹿だと?この野郎…"


悪態は2分48秒続いて終わるw


「…つまり、強盗したカミンへの報酬が偽札だったと言うワケね?で、ケビィって言うのは誰?」

「データベースにヒットがありました。空挺(ならしの)崩れの何でも屋で、ユスリと詐欺の前歴がアリます。電話を逆探知しました。今どき珍しい固定電話で局番はコレです」

「あら、御近所だわ。御挨拶に行かなきゃ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、僕はミユリさんと合流して、センムを伯爵(カリオストロ)に売った?ブラドのリアル帰宅を待つw


「ミユリさん、コレは一応張り込みナンだから、ムーンライトセレナーダーのコスプレだと少し目立つンだけど」

「あら、ごめんあそばせ。すぐ電撃を撃てるようにと思って」

「え。コレは平和裡な事情聴取だょ?電撃ナンか撃っちゃダメだ…しかし、今回の件で、アキバの印刷業者がみんな偽札犯に見えるね」


ブラドの印刷所兼住居は、地下アイドル通りの路面店の居抜きで"すぐ戻る"の張り紙だw


「ブラドは生活も仕事も夜型のようだね」

「テリィ様とモフィさんってヘンだわ」←

「ええっ?!」


いきなりステーキ…じゃなかった、イキナリ不意打ちだ!まぁ不意打ちだから仕方ナイ?


「テリィ様が答えたくない時の仕草。ホラまた」

「あのさ。張り込み中はやめよーよ」

「やめません」

「モフィとは渋谷でシェアハウス…」

「シェアハウス?」

「あ、同棲とも言うが」

「では、モフィさんとは?」

「彼女のバックをやってた」

「バックを?!」

「ち、違う!バックバンドだっ!彼女はボーカルで…」

「シッ!静かに!」


ソレはコッチのセリフだっ…と思いながら僕は路地に入って来た車の運転手に話しかける。


「ブランさん?」

「何だ?自衛隊なら入らねぇぞ」

「はい?」


次の瞬間に起こったコトは今でも何がどうなったのか良くわからないw

ミユリさんに突き飛ばされるや、僕のいた場所は銃弾の雨で蜂の巣だ!


「テリィ様、伏せて!」


とっくに伏せてる僕の頭上をムーンライトセレナーダーの必殺技"雷キネシス"が掠めるw

僕の頭髪が何本か焦げる匂いがしたがβ光線に直撃された白いセダンの方は一溜まりもナイ!


どっかーん!


真夜中の路地裏に爆発音が響き渡り、真っ赤な火柱が上がる。

爆発するセダンの中から飛び出した人影が文字通り炎上スルw


「ミ、ミユリさん!全く手加減ナシって、何かあったの…あ、あったか」←


第4章 アキバ皇帝は元気か


数分後、現場にはアキバ中の全パトカーに消防車、救急車が集結、阿鼻叫喚の騒ぎとなるw


上空に飛び交うヘリw


「僕は大丈夫だ。ブラドは撃たれた。重傷!」

「犯人は?」

「残らズ重傷!ムーンライトセレナーダー、次は少しパワー下げてくれ!」


しかし、ミユリさんは全く取り合わないw


「口封じのブラド襲撃だわ」

「現場に MP-9 の薬莢多数。例のガード下の強盗団に間違いありません」

「警部、ブラドの昔の仲間を洗いましょう」

「ソレよりケビィょ。偽札の入手先を聞き出さなきゃ!」

「いきましょう」


頭に包帯をグルグル巻きされた僕を尻目にムーンライトセレナーダーとラギィ警部が出撃w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


90分後、万世橋で取調べを受けてるケビィ←


「カミンは神田練塀町で逮捕されたわょ」

「既にアンタの指示だと証言してる」

「な、何だ?警察とスーパーヒロインのタッグか?弁護士を呼んでくれ!」

「盗品も見つけた。弁護料は前払いね」

「司法取引はしないぞ!」

「アンタには前歴がアル。今度の刑は重いわ。少し頭を冷やして考えて」

「考えてる。ソレでも蔵前橋(けいむしょ)の方がマシだ。偽札団に殺されるよりは」


僕は、モフィとマジックミラーのこちら側で取調べの模様を見ていたが…明らかに上手く逝ってない感じだ。ルイナも加わって溜息w


「ダメみたいね」

「もう2時間。重要なコトは何もしゃべらないわ」

「自分の罪を認めたけど、偽札団のコトを歌えば殺されると思ってる」

「そして、ソレは半分以上正しいみたいね」

「急がないとヒュズ画伯の命が危ない」

「も1度カミンに当たってみる?」


ソコへ制服警官から御座敷がかかる。


「モフィ危機管理官。絵画商法の"エウラ"のオヤジが来てますけど」


思わズ顔を見合わせ溜息のモフィとルイナ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ウチの"嫁"のコトで何か分かりましたか?捜査は進展してルンですか?」

「申し訳ありませんが、未だ話せる段階ではありません。できる限り…」

「手を尽くす?聞き飽きた!警察から何の連絡もないママ、心配しながら家で待つだけだとは!」


"エウラ"のガイカ店長は激昂してイルw


「お辛いでしょうが、も少しの辛抱です」

「何かわかったのか?せめて進展があったのなら、ソレだけでも教えてくれ!」

「進展はありました。今はソレだけしか…」


前回借りた"嫁"が描いたミニチュア画をガイカ店長に押しつけるようにして返すルイナ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"嫁"のミニチュア画が詰まった箱を手にトボトボ万世橋(アキバポリス)を出るオヤジ。

何故だかメイド服のママのルイナが、オヤジに駆け寄って、声をかける。


「ヒュズ画伯は、作品にガイカ店長の名前を描き入れてルンですね?」

「え。誰も気づかないのに」

「じっくり拝見したので」

「嫁は…ヒュズは、アトリエにコモるコトが多かった。夫婦の時間は限られていたンだ。だから、彼女はそうやって絵を描きながら、俺に話しかけていたんだ」


うなだれ、肩を落として帰るガイカ店長。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「…で、私はキュンとしちゃったワケ。あのガイカ店長とヒュズ画伯は、意外にホンキで愛し合ってたのカモ」

「え。まさか…しかし、ルイナ。スゴいインフレだな。札の拡大画像に◯がたくさん付いてルンだけど」

「この中に必ずメッセージがアルと思うの」


少し考えをまとめたくて、僕とルイナはミユリさんのいない"潜り酒場"に御帰宅スル。


「でも、偽札犯はなぜソンなコトをスルのかな?」

「テリィたん。メッセージを残してるのは、偽札犯じゃなくて誘拐されたヒュズ画伯ょ。拉致された場所が描き残されてるカモ」

「拡大画像に◯をつけた箇所は何?」

「モノホンにはナイ、明らかに故意に付けた傷の箇所。何かの手がかりだと思う。偽札の"透かし"の中に27カ所あるわ」

「詳しく調べたね」

「表も裏もね。凝り性なの。ドン引き?」

「まさか。でも、タマには観察角度を変えてみたら?」

「え?テリィたん、今、何て?」

「いや、少し視点を変えたらと思って」

「組合せ論みたいに?!」


何だソレ?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


30分後、ルイナが万世橋(アキバポリス)に駆け込んで来る!


「みんな!ヒュズ画伯は、作品にガイカ店長の名を入れてた。で、今回は私達にメッセージを入れたの!偽札の透かしに傷がある。目立たないがハッキリと傷がついてる。犯人に見つからないようにグラフィック投影にしてるわ。普通に見たらタダの線だけど、角度を変えて斜めにして見ると…」

「数字が浮き出た!」

「同じ原理で透かし部分を数学的に処理してみたわ。現れた数字は"3852"。ただし、この暗号が解けなくて」

「え。コレってホントに暗号か?もっと単純なモノでは?げ!センムだw」

「テリィたん、誰?」

「聞き込みに逝った元偽札犯のセンム。彼の拠点"リトル広東"の住所だ。外神田3丁目8番52号」

「テリィたん、お手柄」←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「おいよせ。テリィ、手荒なマネはよせ!」

「僕じゃナイょ、センム!」

「アンタら"リトル広東"は、画家を拉致し、商売仇のブラドを誰かに密告して消そうとしたわね!」

「待て。テリィなら俺の前歴は知ってるだろ?ブルセラやってた昔から俺は非暴力主義だ」

「でも、アンタの手下は違う。ブラドを密告し殺そうとした」

「濡れ衣だ!罪を着せるつもりか?」

「問答無用!」


ムーンライトセレナーダーとラギィとモフィが興奮してキャンキャン騒ぎ収拾がつかナイw


「センム、テリィだょ。偽札犯はセンムの直接の手下じゃナイんだょな?"リトル広東"は中小コピーメーカーを束ねたクラスターだ。ふれあい橋の袂に倉庫があるょね?財務省の特殊部隊が配置についてる。狙撃手(スナイパー)もいる。このママだと、皆殺しになるぞ」

「…連中には言い聞かせた。小額で辛抱強くやれと。でも、奴等は焦った。焦ったら長続きしないぞと教えたのに、辛抱がなくて」

「センム、協力するンだ。誰も死なせたくないだろ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


暗闇の中を一言も発さズ配置につく特殊部隊。


「犯人は4人。全員がマシンガン(MP-9)を所持。人質は倉庫の屋上階」

「屋上の北側に同じ高さのビルがある。南から近づくと窓が見える」

「真正面と南西の角に入り口。中は居住スペース」


ブラインドからファイバースコープを忍ばせソファーでTVを見て寛ぐ犯人の画像をゲットw


「人質がいない?」

「待機しろ」

「突入待て。合図を待て」


ソコへ悲鳴に近い女性の絶叫w


「いや、やめて!言われた事はしたわ!」

「突入!突入!突入!」

「閃光手榴弾!」


驚く犯人の足元にコロコロと転がる銀色の手榴弾!次の瞬間、ソレが…爆発スル前に何もかもが光の奔流に飲み込まれ…ソーラレイ?


「銃を捨てろ」


短機関銃を構え続々と飛び込む特殊部隊。


「ついてこい!」

「右クリア、左クリア。異常は?」

「ありません。人質を確保。無事です…大丈夫、財務省と警察です。もう心配ありません。ケガは?」

「ありません」

「"エウラ"のオヤジに電話しろ。アンタの"嫁"は無事だ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


30分後の万世橋警察署だ。

抱き合う"嫁"とオヤジ。


「本当によかった。こんなの久しぶり」

「良いコトね」

「これから祝杯よ。今宵は財務省が奢るわ。ラギィ警部、貴女も是非」

「まだ仕事が残ってるの。アキバは眠らないわ」

「そう。また会えるわょね。"雷キネシス"の第2射もフルパワーだったムーンライトセレナーダー、貴女も無理かしら」

「残念だわ」

「わかった。でも、次は奢らせて。私達のシスターフッドのために」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場"。


「テリィ様」

「どうしたの、ミユリさん?」

「探してたブログを見つけたから…」

「あの過疎ブログを見つけたンだね。でも、夜中の3時だょ?今から見る?」

「もう拝見しました。渋谷にもお友達が大勢いたんですね」

「うん。でも、アキバが1番さ。百軒店時代のコトは、いつかミユリさんには話すつもりだった。でも、なぜかな…」

「住む世界が違ってました。あの、センムさんは結局?」

「センムが偽札を刷ったワケじゃない。ハメを外す"若い奴等"に目にモノ見せようとしただけだ。無罪放免」

「良かった。でも"アキバ皇帝"は?」


"アキバ皇帝"は"リトル広東"を裏で操るAIで、かつてアキバ制服を目指したが"勇者"に電源をオフにされ消滅させられかけてるw


「でも、電源オフの寸前にネットに逃げて、今もウェブの海に潜んでセンムさんを使って"リトル広東"を仕切ってるとか」

「ミユリさん。ソレ、都市伝説だから」

「いいえ。テリィ様がホントのお話しだと」

「え。そぉだっけ?ねぇ朝まで御屋敷のモニターで古いSF映画でも見ようょ」

「素敵」

「少し飲む?ミユリさん」

「いいえ」

「つまみは?」

「いりません、テリィ様」



おしまい

今回は、海外ドラマでよくテーマとなる"偽札団"を軸に偽札団と関係ある元偽札犯、熟練の偽札職人、若い強盗団、彼等を追う財務省の通貨危機管理官、敏腕警部などが登場しました。


さらに、ヒロイン側のシスターフッド、主人公の昔の同棲話などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、オリンピックを終えてなお第4次コロナ宣言下にある秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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