兄妹
「わたしが通報する」
それを聞いた瞬間、目の前に電光のようなものが走った。
「なに…、言ってるの…」
ふうかは、わたしに「翔子にしかできないことを見つければいい」って言ってくれた。わたしが望月に噛みついた時にも、「よくやった。見直した」と言ってくれた。あの、みんなが嫌がる差別されている街にも、いっしょに行ってくれた。この娘だけは、いつまでも自分の味方のはずだ!
「いいかげんにしなさいよ…、兄を女に土下座させられて、よろこぶ人間がどこにいる!」
「ふうか、両親がえこひいきをするから、きょうだいの仲が良くないって言ってたじゃん!」
「それは家の中の問題だ。よそのヒトにとやかく言われたくない」
「あの男は、差別主義者だ!」
「兄貴がおまえに何をした! おまえが何をされた!」
「あかりに失礼なことを言った!」
「そんなのは、あかりと兄貴の問題だ! あんたには関係ないでしょ!」
「あかりだけの問題じゃない! 世界中の全ての女性の問題だ!」
「仮面ライダーは、自分もそうなのに、なぜ『出たな、ショッカーの改造人間!』って言うと思う?」
「論点そらすな!」
「仮面ライダーはね、ショッカー怪人たちに『自分はおまえたちとは違う』って言いたいんだよ、あんたもそうだよね、坂崎さん」
「それは違う人だ! わたしの名前は西宮だ!」
「坂崎といえば出羽守。何かと言えば、『海外では』って言う人のことだよ。あんたは『こんなのは日本だけだ』ってしょっちゅう言うけれど、日本対外国でしか考えられないの! あんたはね、日本人なのに日本を悪く言うことで『自分は他の日本人とは違う』っていうエリート意識を持ってるだけなんだよ。それでいて、女なのに、女を悪く言わない!」
「この世には女と男しかいない。日本人と外国人しかいない。貧富とか、学歴とか、信条なんかとちがって、絶対的なものだ! だったら女対男、外国対日本って考えてもおかしくないでしょ!」
「わたしの兄は、日本人で、男で、何よりもわたしの家族だ!」
その時、真の声がした。