ハンバーガー
翔子は、昼休みの教室でみんながご飯を食べ始めると、黒板を背負って立った。
「みなさん! 動物はあなたがたのごはんではありません!」
みんな、いぶかしげにこちらを見た。
あかりだけは、暗い顔をして小さなお弁当箱を見ている。
用意した写真を取り出した。
生きたまま頸を切られている鶏。
銛を突き立てられているクジラ。
屠殺されて解体され、内臓をむき出しにされている牛。
などなど。
「もし、肉を食べたいのなら、人造肉のつくりかたとか教えます! だから、肉や魚を食べるのはやめましょう!」
みんな、何の反応もせずに食事にもどろうとしている。
もちろん、こんなことで負けていられない。
ほのかの所に行った。
「ねえ、あなたのお弁当箱に入っている唐揚げは、こんなふうに生きたまま殺された鶏の肉なんだよ。それを食べるってことは、これからもそれを続けさせるってことなんだよ。日本人はお金儲けのために、こんな残酷なことをしてるんだ。だけど、それを食べなければ、ほんのわずかだけど、それを否定する意思表示になるんだよ」
ほのかが教室を飛び出した。
さらに、教室に残ったひとりひとりのところに行って、写真を目の前に突きつけ、肉や魚を食べることの問題を語った。
そのとき、戸がガラリと開いて、望月が入ってきた。ほのかが連れてきたらしい。
その手には、つぶれかけたマクドナルドの箱があった。どうやら食べかけのようだ。
黒板を背にして教卓の前に、どっかりと座った。
うまそうに、ビックマックにかぶりついている。
内臓がむき出しになった牛の写真を突き付けた。
望月は、内臓を見ながら、笑って食べている。
こいつには人の心がないのか!
望月が言った。
「あかり、何を悩んでいるか知らないが、悩んでいるだけじゃ何にもならないぞ、行動に移さなきゃ」
その日の放課後、翔子はふうかに話しかけた。