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屈辱
「じゃあ、陣内先輩、あかりに謝ってください」
翔子は、真の顔をはっきりと見据えて言った。
「おまえには関係ないだろ」
「そうはいきません。あなたの、『料理ができなきゃ女じゃない』という台詞は、すべての女性に対する侮辱であり、性差別そのものです」
「そんな言い方はしてないぞ」
「そういう内容ですよね」
「めんどくせえなあ。あかり、悪かったよ」
真が、あかりの方を向いてぞんざいに言った。当のあかりは、泣きそうな顔をしている。
「は? 立ったまま?」
翔子の台詞に真が反応した。
「どういうことだ」
「床に正座して謝れってことだ」
「なんだと!」
「そうしなければ、アンタがあかりに手を挙げたことを先生に報告する! そうなれば、せっかくの推薦もなくなるけど、それでもいいのか!」
男の顔が、屈辱のためにプルプル震えている。
震えろ。震えろ。
女たちは今まで、そんなふうに屈辱に耐えながら男の下に置かれてきたんだ。
おまえは親に溺愛されてきた。自分のわがままは全て通ってきたんだろう。
これからはそうはいかない!