表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

謝罪

そんなある日の帰りのSHRで、担任の望月が国語の課題テストをひとりひとりに返していた。

「ほのか」

「まあ、こんなもんだよね」

「あかり」

「この前より上がったからヨシとしよう」

「翔子」

 翔子が、何も言わずにテストを受け取っている。

「ふうか」

「はい」

 ほのかが聞いてきた。

「どうだった?」

「いつもとおんなじ」

 ほのかがふうかのテストをチラ見してきた。

「ふうかって、なにげに成績いいのね…。とくに文系科目」

「オタクの読書量をナメないでね!」

 生徒たちが全員席についた。望月が言う。

「正直言って、今回はあんまり良くない。このクラスは女子ばっかりだけど、男子のいるクラスより良くない。というか、女子が男子よりも成績悪いのはカッコ悪い、っていう感覚はないのか?」

ふうかは言った。

「ないなあ…」

「あれよ!」

 翔子がいきなり立ち上がった。

「先生、今のは差別です!」

「は?」

 ふうかは、あっけにとられた。いや、みんながキョトンとしている。

「勉強が得意でない女子も、勉強が得意な女子もいます。勉強が得意な男子も、得意でない男子もいます。先生の今の発言は、男子は勉強しなくていいけれど、女子はしなくちゃいけない、って言っているのと同じです」

「そんなことは言ってないぞ。両方やらなくちゃダメだろう。っていうか、おまえ勉強してないだろう。そんなことより自分が勉強しろ」

「論点をずらさないでください! 先生の今の発言の差別性を問題にしているんです!」

「何が言いたいんだ」

「女子が男子より勉強ができないのがカッコ悪いなら、男子が女子よりもスポーツができないのがカッコ悪いともいえます」

「そう考える人はいるだろうな」

「だけど、スポーツができない男子だって普通にいるじゃないですか!」

「いるな。おれもそうだけど」

「そういう男子は、いつも劣等感をもって生活しなくちゃならない!」

「そうでもないけど」

「女だから男だからって、一まとめにするのが差別なんですよ!」

「なんだか、大げさな話になってきたな…」

「あいつは外国人だから…、あいつはどこそこの出身だから…、あいつは男だから女だから! そういう気持ちが差別を生むんです!」

「確かに一理あるな。悪かったよ」

「わたしにではなく、世界中の女性に謝ってください!」

「おまえいま、女とか男とかひとまとめにするのが差別だって…」

「早く!」

 ほのかとあかりとふうかが言った。

「そーだ、そーだ!」

 いつのまにか、クラスの全員が言っていた。

「そーだ、そーだ!」

「あーやまれ、あーやまれ!」

「わかったよ」

 望月が丁寧に頭を下げた。

「世界中の女性のみなさん、差別して申し訳ありませんでした!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ