表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

翔子

「凜として風に抗い-西宮翔子の受難」


 ふうかは、放課後の教室で、自分の椅子に座っていた。体をねじって、背後の翔子の席の方を向いている。翔子は、机の天板に顔を伏せている。翔子がだるそうに声を出した。

「いいねえ、ふうかは」

「何なの、藪から棒に」

「勉強ができて」

「いや、勉強がちょっとできたからって、そんなに得はないし」

「それって、アイドルが『ちょっとくらいかわいくても仕方がない』とか、スポーツ選手が『スポーツだけできたってしょうがない』とか言ってるのと同じだよ!」

「祥子はわたしが、スポーツもできないし、かわいくもないって言いたいの?」

「わたしなんか、勉強もできないし、スポーツもできないし」

「スルーしやがった、こいつ…」

「小さいころピアノを習わされたけど、全然弾けるようにならなかったし」

「一体何が言いたいの?」 

「ふうかは、オタクでアニメばっかり観てるけど…」

「特撮も見るよ。今ハマってるのは初代仮面ライダー。『出たな、ショッカーの改造人間』って。おまえもそうだろうが! ってツッコミを入れながら観るのが…」

「そんなに勉強してるようにも見えないのに」

「またスルーしたな」

「テストはできる」

「そんなことはないよ。人並にはやってるよ。だけどオタクって読書好きだから、読解力はあるんじゃないかな」

「自慢?」

「めんどくさいな…」

「ふうかのご両親って、二人とも弁護士なんでしょ。勉強できるのはその血を継いでいるんじゃないかと思って」

「そんなことはわからないけど」

「いくらわたしだって定期テストの前くらい勉強するけど、いくら教科書を読んでもまるっきり頭に入ってこない! 運動なんかそれ以前の問題! まったく体が動かない! マラソン大会の次の日なんか、筋肉痛で学校休んじゃったし! 小学校のころ体育が本当にイヤだった! 何がイヤだって、出席番号順で二人組にさせられるのがいやだった! 体育の時間のたびに友達にイヤそうな顔をされるのがたまらなくイヤだった!」

「まあ、何でもいいけど、翔子にしかできないことを見つけてみたら?」

「わたしにしかできないことってなに?」

「わたしに聞かれてもわかんないけれど」

「じゃあ、意味ないじゃん!」

「まあ、お互い若いわけだし、ゆっくり見つければいいよ」

「まったく、ガッコのセンセみたいなことを言って…」

 翔子はいきなり立ち上がってカバンをつかむと、そのまま出て行った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ