76話_最悪なワガママのために
「なんか、敵の数増えてない!?」
ダッシュしながら上へ向かうシェイド一行。
先程に比べて悪魔達の必死さもより増しているような気がする。
空から地上から壁からと様々なモンスターが現れては4人の前に立ちはだかる。
「主人、勘違いではないっす。だいぶ増えてる!!」
「目的により近付いていることなのか」
「にしては、なりふり構わない感じがするんやけど」
「やぶれかぶれか!!」
皆走りながら
怒涛のように押し寄せる悪魔を蹴散らす。
「この悪魔達ってリアの命令でやってるのかな?」
「おそらくは…」
「この状況を考えると、上の状況はひどくなっているんじゃないか」
「だろうね!!」
そこに、突如レーザーが放たれ4人とも瞬時に避ける。
「間一髪…」
「威力もそこそこね」
後ろを振り返り、レーザーで抉れた地面を見るカゲトラとラム。
直撃すれば無事ではすまなかっただろう。
「お前達を捕らえに来た」
レーザーを放ったで張本人あろう仮面をつけた悪魔が3人宙に浮いている。
どれも似たような姿形をしている。黒い角に黒い翼。軍服のような真っ黒い制服を着ている。
「リアの命令か?」
「そうだ!答える頭さえあれば構わないと言われている!!」
「お~、怖いこと言うんやねぇ」
「今のリアならそれも有り得るか」
「リア様は大層お怒りだ。早々に仕留めさせてもらう!!」
三位一体になり、ラムに集中攻撃を仕掛けてくる悪魔たち。3連撃目の悪魔の攻撃がかすり、尻もちをつくラム。
「主人!!」
「大丈夫、ちょっと体勢崩しただけだから。私が一番弱いと判断されたのが癪だけど」
「なんと、この攻撃を避けるか!?」
「確実に四肢を削ぐように狙ったのだが…」
攻撃を避けたことに驚く悪魔3人。
「なんだか恐ろしいこと言ってるわね…」
「3人で時間差攻撃を仕掛けてくるようだな、ならば」
シェイドは腰に付けてあった円筒状の筒を取るとスイッチを押す。
ブゥーンという音はするが、それ以外何か変化は見えない。
よく目を凝らして見ると、筒の先の空気がなにやらあわただしく揺れ動いているのがわかる。
「それはなんやの?」
「エデモアが用意してくれた“見えない剣”だそうだ。使う場所に困っていたが、丁度いい」
シェイドはそれを軽々と振り回す。
「さぁ、来るがいい」
ブルース・リーさながら、筒を持っている手とは反対の手を動かして挑発する。
「何を使ったところで貴様の結末は同じだ!!」
腕からレーザーを放つ悪魔、シェイドが筒を振るとそこに刃先があるかのようにレーザーを真っ二つに切り裂いた。衝突する境界線に激しい火花が散る。
「なに!?」
1発、2発。そのどれも弾き返すシェイド。壁にレーザーが走った跡がついていく。
レーザーを切り裂いたシェイドは筒を持ち替えると筒を振り上げる。
ザシュッ!!
斬られた悪魔の左腕が宙を舞う。
「ぐおぁっ!!」
間髪入れず、横にいる悪魔の脇腹を蹴り一回転、最後に残った悪魔の顎に突き上げた蹴りをクリーンヒットさせる。
「ぐぅっ!!」
「うおぉっ!!」
あっという間に吹き飛ぶ悪魔3人。
「圧倒的だな」
「あの程度じゃ相手にもならないのね」
「く、くそ……化け物か……」
「なに、しがない守護天使だよ」
筒のスイッチを切り、腰にしまうシェイド。悪魔達は3人とも気を失って倒れてしまった。
「なんやウチら必要なかったんやないの?」
「そんなことはない。これから先にまだ何があるかわからないからな」
「僕は出番がなさそうっすね」
「犬は黙ってついてきなさい」
「はーい」
「それじゃあリアの元へ急ごうか。シオリ達はもう着いているだろうか」
シェイド達は振り返ることなく、更に上に向かって進んでいった。
◆◆◆◆◆
一方のシオリ達。
ミュウとスカーレットも流石に喧嘩に飽きたのか、特に会話もなく黙って歩き続ける。その代わり、右手と左手はそれぞれミュウとスカーレットにガッチリ恋人繋ぎをされている。勿論その光景をリーガロウが良く思うはずもない。糾弾するような視線を首筋に感じながら僕は歩き続ける。
早くシェイド達と合流したい。
それが本音だった。
「待ちなさい!!そこの侵入者ども!!」
そこに現れたのは、悪魔3人組。綺麗な女性の姿をしており、皆一様に豊かなバストに突き出たヒップ。頭には黒い角に黒い翼を生やしている。服装はシスターのような(悪魔なのに)修道服とミニスカートを合わせたような格好をしている。胸元はパックリ割れていて、上半分が露わになっている。
「リア様の元へ連れて行く。覚悟しろ!!」
僕目掛けて投げられたネットを横にいるミュウとスカーレットがそれぞれ八つ裂きにする。
「覚悟をするのはあなた達の方よ」
剣を悪魔に向けるミュウ。
「ネットでどうにかしようなんて、馬鹿なんじゃないの?」
鎌を下ろして呆れるスカーレット。
「んなっ!!」
「生意気っ!!」
鞘から剣を抜き、襲いかかってくる悪魔達。
それを軽々といなし、蹴り飛ばすミュウとスカーレット。
「弱すぎるわ」
「ここまで来てもこの程度なんて」
「この、このぉおおお!!!」
残った最後の1人も、横から近付いたリーガロウのパンチを腹に食らい気絶してしまった。
「本当に、あっけないな」
崩れ落ちる悪魔を地面に放るリーガロウ。
「皆がいて良かったよ」
シェイドがいない今、3人がいることは非常に心強かった。
「敵がやけにあっさりしているのが気になるけれど、リアもそこまで手が回らなかったということなのかしら?」
「わからない、ただこの塔自体あまり統率はとれていないような気がするな」
「悪魔など所詮その程度だ」
「あら、油断すると足下をすくわれるわよ」
「……うむ、そうだな」
「(切り替え早っ。何かお願いがある時にはミュウから伝えてもらうようにしよう)」
僕は心の中でそう呟いた。
「シオリ、行こっ。私もう我慢できなくなってきちゃった」
スカーレットがぐいっと腕を引っ張ってくる。
「久しぶりにシオリと一緒にいられるのにこんな辛気くさいところじゃ気分も落ち込んじゃうわ。早いところ終わらせちゃいましょ」
「そうだな、あまりゆっくりしている暇もない。上に向かおう」
「それとぉ」
近付く唇。横から出てくる手。
「させるわけないでしょ」
「このぉ、なんで邪魔するのよ!」
「するに決まっているでしょう。誰に断ってシオリにキスしようとしているのかしら」
「許可なんていらないでしょ!!」
「いいえ必要よ。まぁ、例え申請を出したところで承認が下りる事なんて100%ないんだけれど」
「…あんたはやっぱりここで叩きのめす」
「望むところよ」
「また始まった…。リーガロウ、なにか言ってやってくれよ」
「……」
無言でミュウ。の腰から太ももを眺めるリーガロウ。
「(駄目な大人だ…)」
僕は諦めて2人が落ち着くまでその場に座って待つことにした。




