73話_閑話_決戦前夜
これはリアとの戦いの前夜のお話―――。
僕はようやくベッドに潜り込むと、ものの数秒もしないうちに眠りに入っていった。
心地よい眠りを感じている中、肌になにか柔らかいものがくっついた感触で目が覚める。
くにゅっくにゅっ。
くっついてくるなにか。
僕は目を閉じたままその柔らかいなにかをまさぐる。
「きゃっ」
甲高い声が聞こえる。疑問に思って目を開けると、そこには紫色のネグリジェを着たミュウが寝そべっていた。
「ミュ、ミュウ!?」
びっくりして一気に起きあがる。ミュウがそこにちょこんと佇んでいた。
「起こしてしまったかしら」
「起こしたも何も、なにしてるんだよ」
「シオリが疲れていたみたいだから、マッサージでもしてあげようかと思って」
「べ、別にいいよ!そ、それにその服!」
「あら、私はサキュバスなのよ?」
「関係ないから!」
ミュウは気にせずに僕の上に乗ってくる。小ぶりなおっぱいが身体に押し当てられる。
柔らかい体と良い匂いに心も少し落ち着いてくる。
「最近ずっと気を張りつめてばかりだったでしょ?姉様ほどではないけれど、私に甘えてくれてもいいんだから」
ミュウは僕の頭を腕で包み、優しく撫でる。
「それは…気を遣わせてすまない…」
「これくらい、妻としての役目よ」
「いや、妻ではないんだが…」
「もう、いい加減認めなさいよ」
へそを曲げたのか、ヘッドロックを決められる。
「痛い!ギブギブ!!」
腕をパンパンと叩き、ヘッドロックを解除してもらう。
力を抜いた後に、ミュウは僕に甘えるようにすり寄ってくる。
「姉様が元に戻ったらそろそろ式をあげましょう。形から入ればシオリも慣れるでしょうし」
「慣れるとかそういうことではないと思うんだが……」
苦笑いする僕の頬を掴むと、視線を無理矢理合わせられた。
「いい?天使が相手に純潔を捧げるということがどれだけ大切なことかわかって?誰でもよくないのよ。あなただから言っているの。それは、きっと姉様も同じよ。シオリ、あなたでないとダメなの」
ミュウの真剣な表情。
「ミュウの気持ちはよくわかったよ。それなら僕もちゃんと考えて答えないとな」
「あなたはただOKしてくれればいいの」
覆い被さりながら唇を重ねてくるミュウ。
「私の心をこんなにした責任は絶対とってもらうから」
ミュウは僕をきつく抱きしめながら、もう一度キスをした。
「責任って言われても、僕特になにもしてないんだけど…」
「そんなこと言ってると、こうするわよ」
こちょこちょと脇をくすぐってくるミュウ。
「あひゃひゃ、やめ、それはやめて!!」
「ほらほら辛いでしょ、早く認めて楽になりなさいよ」
「あひゃひゃ!!こ、こうなったら…」
「きゃっ!あっ、んぅっ……」
ミュウのくすぐり攻撃に反撃をする。艶っぽい声にドキッとしてしまう。
「ふぐぅ……うぅんっ…なかなかやるわね」
「そろそろやめよう、体がもたない…」
くたびれる2人。そこに、ゆっくりともたれかかるミュウ。
「姉様を取り返して、考えましょう。私たちのこと…姉様がいないとダメだから」
「…そうだな、そうしよう」
僕はミュウのことを優しく抱き締めた。
◆◆◆◆◆
シオリの心の中、リアに身体の主導権を奪われたシオリは自分の心の中を彷徨っていた。
その間も、外の声はずっと聞こえていた。逆に自分の声が届かないもどかしさをずっと感じていた。
リアが目覚めたことで、彼女の記憶も垣間見得るようになった。そこで気付いたことは彼女がルキというシオリに似た存在を愛していたこと。
シオリは、リアを説得したいと思った。抱えている想いはそう変わらないはずだと。想いが通じない寂しさをリアはずっと感じていたのだと。
ソフィアリアの記憶は、とても静かで優しいものだった。ルキと楽しそうに会話をする仕草は、まるで自分を見ているようだった。
「シオリに会いたい…」
その想いを募らせながら、1人夢の中を歩き続ける……。




