72話_悪魔の塔
ソフィアを取り戻すため、僕はシェイド、ミュウにスカーレット、ラムとカゲトラ、リーガロウ、ネツキのメンバーを引き連れてリアの元へと向かった。
フーマルは家の留守番。アイシャはリアの呪いでダウンしたまま僕の中で眠っている。キスをすることで解消は出来たのだが、自分からそれを提案する気にはなれなかった。
リアが一夜にして街につくりあげた塔は黒く不気味な光を放っていた。周りには羽の生えた如何にも悪魔といった風体の下級生物が徘徊している。その入り口を前に天を見上げる8人。
「だいぶ大所帯になったわね」
「あら、嫌なら付いて来なくてもいいのよ」
「誰も嫌なんて言ってないでしょ。あんたの方こそシオリのそばから離れなさいよ」
反目し合うミュウとスカーレット。この2人はいつになっても変わらないようだ。
リーガロウが無言で僕をにらんでいることも相まって異様な空気が流れる。
「2人とも、喧嘩は程々にな」
「加減なんて無理ね。足手まといになれば即見捨てていくわ」
「それはこっちの台詞よ!キーッ!」
小競り合いを始める2人。
「騒がしい2人なのね…」
「主人もそう人のことは言えないかと…」
「何よ犬、なにか言った?」
「いえ、なんでもないです」
ギロリとカゲトラをにらむラム。カゲトラは何事もなかったようにそっぽを向く。
「結局チャミュは来なかったか」
「うん、やっぱりショックがでかいんだと思う」
「…そうだな」
「そういえばシェイド、昨日の夜どこかに出掛けてたのか?」
昨日の夜、眠りにつく前にシェイドが出掛けて行ったのを見たことを思い出す。
1人で夜に出ていくのは珍しいことだ。
「なんだ、見ていたのか。そうだな、少し用があってな」
「なんだったんだ?」
「うむ…まぁ、その時が来ればわかるかもしれない」
「??」
疑問は晴れなかったが、シェイドのキスを思い出してしまい、それ以上追求できなくなってしまった。
「それじゃあ行くとしようか。途中危険なことがあると思う。各自十分に気をつけてくれ」
8人は、塔の中へと入っていった。
◆◆◆◆◆
塔の中は、奇怪な色に覆われていて薄気味悪い雰囲気を漂わせていた。
「なんだか気味が悪いな」
「お世辞にも良い趣味とは言えないわね」
辺りを見回すミュウ。
「えらいセンスのない塔やねぇ」
「悪魔にセンスを求めること自体が無理な話なのよ」
スカーレットが床に転がっていた石を蹴飛ばすと、壁に当たって跳ね返る。跳ね返った先には、なにやら壁にかかれた謎の文字が。
「なんだこれは?」
「どうやら転送術の一種のようだな。この塔全体に施されているものらしい」
「転送?ワープってことか」
「そういうことだな。おそらくどこかに通じているのだろう。今は動いていないようだがな」
「そうか、途中探してみるのもいいのかもしれないな」
「ここに戻ってこれるなら便利やねぇ」
「そうだな、この先は2つに別れているようだしそれぞれ手分けして探そうか」
「そうね、じゃあ」
グッ。
右腕をスカーレットに。左腕をミュウに引っ張られる。
無言でにらみ合う2人。
「…離しなさいよ」
「あんたが離しなさい。シオリは私と行くんだから。ねぇ、シオリ?」
「え、いや、まぁ…」
スカーレットの強い押しにたじろぐ僕。
「喧嘩するくらいなら2人とも一緒に行くといい。リーガロウ、一緒に行ってやってくれ」
シェイドがリーガロウを押す。
「な、何故私がこいつと一緒なのだ」
「(ミュウに格好良いところを見せるチャンスだろう)」
リーガロウに耳打ちをするシェイド。
「…わかった」
「何を話したんだよ、シェイド」
「秘密だ」
シェイドは僕に向かって軽く微笑む。
「では、何かあったら連絡してくれ。こちらも何か見つけたら連絡しよう」
◆◆◆◆◆
シェイド、ラム、カゲトラ、ネツキの4人は左のルートを通り、通路を歩いていた。
「随分珍しい面子で歩いてるわね」
「ちょっと前なら考えられんことやなぁ」
「確かにそうだな」
「かつての敵同士が味方になるっていうのも悪くないねぇ」
カゲトラが気楽にこたえる。
通路の一番奥、扉に手をかけ開けるシェイド。
中には道を塞ぐようにミノタウロスのような悪魔が大斧を構えて立っていた。
体長は3mほど、腕の筋肉ははちきれんばかりに張っていた。如何にも筋肉自慢といわんばかりの悪魔だ。
「門番って奴か」
「あぁ、そのようだな」
4人は立ち止まり悪魔を見上げる。
「この塔になんの用だ?」
ミノタウロスは4人の前にズシンと歩み出す。
「ソフィアを取り戻しに来た」
「誰だそれは?そんな奴このは塔にはいない」
「別にお前の答えは期待してないんだな」
カゲトラはパシンと手を叩く。
「まぁそやねぇ、倒して先に進むだけやし」
扇子を取り出し、パタパタさせるネツキ。
「我を倒す?ハハハ、ゴミ共が笑わせてくれるわ」
ミノタウロスは大笑いをすると、大斧を肩に担いでこちらを睨みつける。
「やれるものなら、やってみろ!!」
「それじゃ、お言葉に甘えて…」
カゲトラが一歩出ようとするより先に3人が動き出した。
「馬鹿に」
「しないで」
「ほしいんやけどねぇ」
シェイド、ラム、ネツキとミノタウロスに一撃を加えていく。強烈な攻撃を三連続浴び、上方に吹き飛んで天井に突き刺さるミノタウロス。
少しして、ドシィンという音とともに地面に叩きつけられる。
「他愛もなかったな」
「本当に」
「ようあんな口が聞けたなぁ」
「あの、俺の出番が……」
3人の圧倒的な力を前に、カゲトラはただあきれるしかなかった。




