62話_サキュバスとせめぎ合う理性と欲求
「シオリ、あの、話が…」
その日の朝、ソフィアが僕の部屋にやってきた。なにやらもじもじしている様子で、僕は寝ぼけながら身体を起こす。意識はほぼ夢の中だ。
「どうしたんだ?ソフィア」
「あの、シオリ、えっと……」
なかなか言い出せずに困った顔をしている。
「ソフィア……?具合でも悪いのか?」
「えっ、あっ、はい…そうですね…」
心なしか、顔が汗ばんでいるように見える。ソフィアが具合悪いと言えば、稀にくるというサキュバスの能力が抑えられなくなるあの日くらいしか…。
「ソフィア、もしかして…」
僕は、ソフィアが近くに来てもいいようにベッドを空けてあげる。
「……あの日?」
「………なにも言わないでください」
顔を真っ赤にして僕に抱きついてくるソフィア。
息も荒く、身体全体に熱を帯びているようだ。
「無理はしないでな…」
「はい……」
ソフィアの汗ばむ手を握る。身体からフェロモンが溢れており、甘い匂いが立ちこめてくる。
「ソフィア、今日は僕が料理つくるからさ」
「私も手伝います…。シオリが近くにいてくれれば、耐えられるので…」
「ちなみに、その発作を抑える一番の方法って…」
「えっと…それは、シオリの……やっぱり言えないです…」
ソフィアは顔を伏せて、僕の胸に顔を埋める。
「そうか…いや、うん、無理には聞かないから…」
縮こまるソフィアをギュッと抱きしめる。
「シオリ…」
いくらソフィアがサキュバスの能力で発情しているとはいえ下手なことはできない。それは一番ソフィアを傷つけてしまうことになるからだ。
「天寿様、ソフィアさんどうしたんですか?だいぶ苦しそうですけど…」
「うん、ソフィアはたまに発作を起こすことがあってさ、こうして落ち着かせているんだよ」
「なるほど~、ソフィアさんも大変なんですね。それはそうと、天寿様、ソフィアさんがこんなに近くにいて襲いたくなったりしないんですか?」
ソフィアの身体がビクッと震える。
「こらっ、アイシャ。そう言うことを言うもんじゃない」
襲いたくなっているのをソフィアは必死に抑えているんだが、アイシャにそれを説明すると話が長くなるので割愛する。
「ごめんなさい、でも、気になってしまって。天寿様、一切ソフィアさんに手を出さないじゃないですか。お互い好き同士のはずなのに」
「それは…まぁ…。だって、そういうのは軽はずみにしちゃいけないだろ」
「ソフィアさんは求めていたりしないんですか?」
「えっ?私は…私は…」
「お互い素直になるのも大事ですよ。我慢ばかりは身体に毒です」
「アイシャ、その辺に…」
「ほら!お互い素直になって!ソフィアさんは天寿様と何がしたいですか?」
アイシャが僕とソフィアの仲介役として間に座る。
ただ、この状態で何か言えるような状態ではないだろう。2人きりでならまだしも、アイシャに見られる状態では恥ずかしいことこの上ない。
「私はシオリと一緒にいられればそれで…」
「ダメです!そんなんじゃいつまで経っても進展しません!!」
「なんでそんなに気合い入ってるんだよ…」
「だって、見たいんです。天寿様とソフィアさんがお互いを求め合って、愛し合っているところを!!」
鼻息荒く僕に迫るアイシャ。
「ソフィアさんのとろけるような瞳に、情熱的な天寿様の愛が交わって、溶けて、絡み合って……そんな愛をこの目で見てみたいんです」
「アイシャ、お前最近昼ドラの見過ぎなんじゃないか…」
「ちーがーいーますっ!純粋な愛ですよっ、愛」
「さぁ、ソフィアさんに愛をたくさん囁いてください。ソフィアさんの良いところを耳元で!さぁ!」
「アイシャ、お前の気持ちはわかった。けどな、これは僕とソフィアの問題なんだ」
「僕たちで解決させてくれ」
「……わかりました。そしたら私は外にいますので、なにかあったら呼んでください」
「あぁ、わかった」
アイシャが僕の部屋を出て行くのを確認し、ソフィアの方に向き直る。
「ソフィア、それじゃあ発作を抑えようか」
「はい、お願いします…あのシオリ、さっきの話なんですけど…」
「何?」
「その、私の好きなところを、言ってほしくて……」
予想だにしていなかったソフィアの言葉。
「シオリを独占できていると私が感じられれば感じられるほど快感を感じるので、それが一定以上に達すれば、この発作は収まるかと…」
「よし、わかった」
僕はドキドキしながらソフィアの耳元に顔を近付ける。
「え、えっと…ソフィアは優しくて、」
「あっ…」
「可愛くて、料理が好きで色々努力してて」
「んっ…うぅっ…」
「家事も手伝ってくれて。あと綺麗だし、気遣いができるし…」
「…んっ、あんっ…」
僕の言葉に反応してビクンと悶えるソフィア。
「あと、ソフィアは良い匂いがする。あと甘い味がする。どんな服を着ても似合うし、色っぽいし、運動神経もいい」
「シオリ、もうやめてください…。もう、十分です…」
完全に目がトロンとしているソフィア。
息もさっきより荒く、僕にほとんどもたれかかっている。パジャマの脇と太股の内側が汗でびっしょりになっていて染みがうっすらと出来上がっている。
「ソフィア、大丈夫か、すまないさっきより悪化させたみたいで」
「いえ、あと一息です…。嬉しいんです、シオリが私のことをたくさん好きって言ってくれて。ただ、ただ、今は身体が反応しすぎちゃって…」
ソフィアは仰向けになった僕の上にまたがる。
「サキュバスの能力が強くなりすぎて……」
「うん、わかってるよ、わかってる」
「能力に飲み込まれてあなたを襲いたくないんです……それは、私が求めている形ではないですから…」
「うん……」
「でも、今日はだいぶ限界です…意識がなくなったら、きっと欲望のままにシオリを襲ってしまう…」
ソフィアはくたっと力が抜け僕の上に覆い被さってくる。
「シオリ、発作を抑えたいので協力してもらえますか…」
「うん、なんでも手伝うよ」
「あなたには酷なことですね…ごめんなさい、では目隠しを…」
ソフィアはそう言って僕のシャツを脱がして頭に被せる。その上に、おそらくソフィアのパジャマが重ねられて何も見えない状態になる。
「ソフィア、何も見えなくなったよ」
「ハァ…その状態で、じっとしていてくださいね」
「わかった…」
何も見えない状態で、僕の鼓動も徐々に高鳴る。半裸になった僕の身体の上に湿った柔らかい弾力が乗っかってくる。熱を帯びた濡れたソフィアの体がぴったりと密着し、前後に擦れる。
僕の中の衝動も最早頂点に達しようかとしていた。それを理性で無理矢理押さえ込む。これを押さえ込めることが一般的な男子として正常かどうかはこの際置いておく。正常でなくたっていい。サキュバスの能力に抗うソフィアを裏切らない自分でありたい。その思いがなんとか勝った。
「私って最低ですね……サキュバスの能力を抑えるためとはいえ、こんなことをするなんて…」
ソフィアの嗚咽が聞こえる。僕は腕を伸ばして、上にいるであろうソフィアを抱き締める。
「ソフィアのせいじゃない。ソフィアにしかわからない辛さがあるんだよな、僕はその痛みをわからないけど、そばにいることはできるよ。ソフィアのことを軽蔑したりしない」
「シオリ…」
「だから、なんとか解決方法を見つけようよ。僕の能力なんてたかが知れてるけどさ」
「そんなことないです、シオリありがとう。私も大好きです…。シオリ、私のことだけ考えてください…あなたを支配できたと私の心が反応すれば、発作は収まるはず…」
目隠しで目が見えない分、音、匂い、感触に敏感になる。ソフィアの吐息が、甘い香りが、柔らかい身体の感触が全身を駆け巡る。
「言っておきますけど、こんなことしたのは初めてですから……」
「そ、そうなんだ」
「そうですよ…。1人でいる時はこんな気持ちになったことなかったのに…。今はもうダメみたいです…シオリのことばっかり…です…」
再び僕の横にピタッとくっついてくるソフィア。
「もしかしたら、発作の感覚……短くなってるかもしれません…」
「前より?」
「はい……ひとりで抑えきれなくなるなんて…」
「その時は、なんとか2人で乗り切るしかないな…」
「お願いします…」
「あの、シオリ。今度、発作が収まった時に聞きたいです。ちゃんとした場所で」
告白のことだろう。そろそろ、ちゃんとした形で伝えないといけないな。
「あ、そうだね。うん、時間つくるよ。それで、ソフィア、目隠しとっていい?」
「ダメです。恥ずかしいので…」
「ダメか…」
「ダメです」
生殺し世界一決定戦があれば、僕はチャンピオンになれただろう、と思うくらい、今の状態は臨界点だった。それをソフィアのために、必死にこらえる。
「シオリ、ありがとう」
唇を重ね合わせるソフィア。
「僕、絶対ソフィアのその能力、解決してみせるよ」
じゃないと僕の体がもたないのが今日わかった。
「私も努力します…この能力を抑えられるように……」
「うん、一緒に頑張ろう…」
僕とソフィアは、優しくお互いを抱きしめ合ったのだった。
「面白い!!」
「続きが気になる、読みたい!!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら、
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、
正直に感じた気持ちで大丈夫です!!
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたします。




