38話_ エデモアの怪しい発明装置インフィニティモミモミチェッカー
ある日、僕はエデモアの骨董屋を訪ねた。
天界の一層で機械いじりをしているエデモア。白衣は汚れだらけ。お風呂に入ってるのかな。あまり近寄らないようにしておこう。
「なんだ~、シオリか~。またシェイドのこと~?」
「あぁ、なんか直す手掛かりでもないかと思って」
「ん~、前にも言ったけどあれは師匠のだからな~、エデモアにはわからないんだよ~」
「そうだよな…」
「師匠が来たら言っておくよ~。シオリのおかげで、たまに師匠顔出すようになったからさ~」
「そうか、それは良かった」
博士の浮遊車で一層まで送ってもらった時に、エデモアと博士を引き合わせておいたのが良かったみたいだ。博士も自由な人なので、いつくるかまではわからないみたいだが。
「知能を持った守護天使を造れるのって師匠くらいなものなんだよね~。エデモアもいつか造れるようになってみたいな~」
腕組みしながら、うんうんと頷くエデモア。
「エデモアは今何を造ってるんだ?」
「これ~?これはね~、天器って言って、機械の身体を造ってるんだよ~」
「機械の身体?」
「そう、これを操って自分には出来ないことをしたりするの~」
エデモアが造っている天器と呼ばれるもの。
細身の人型をしており、言われないと機械だとはわからない見かけだ。体つきは華奢な女性のようで、よく見ると、たしかに関節が機械のようになっている。
「完成したら今度見せてあげるよ~」
「そっか、楽しみにしてるよ」
「うん~。あっ、そういえばシオリにいいものがあるよ~」
エデモアは奥の方から8の形をした不思議な物体を持ってくる。
「なんだこれは?」
「エデモアが発明したインフィニティラブラブモミモミチェッカーだよ~」
「(また、うさんくさいものをつくったな……)」
言葉には出さず、へぇと頷く僕。
「一体どうやって使うんだ?」
「それはね~」
エデモアは装置を僕の両腕にはめ込む。ガチッと音がなり、手錠をはめられたように僕の腕が固定される。
「えっ?」
あまりにあっさりと手の動きを封じられた僕。
「この装置を付けた人がおっぱいを揉むと、それが数値になって装置に溜まっていくの~。数値がMAXになると装置が解除されるよ~」
「え?なんて?」
「おっぱいを揉むんだよ~」
「……」
状況が理解できず、?を浮かべる僕。
「好きな人とラブラブしたいでしょ~?」
「いや、そういうのがないわけではないけどさ、でもこの場でやらなくても…。内容はわかったからさ、これ解除してくれよ」
「できないよ~」
「そうか、できないのか~…え!!?できないの!!?」
驚愕の事実に驚く僕。なんてことをしてくれたんだ!!?
完全にお縄を頂戴された形になっていてみっともないったらありゃしない。
「数値が溜まらないと装置は解除されないからさ~。帰ってソフィアに沢山触らせてもらうといいよ~」
「あ、あはは……わやだな…」
にっこり笑うエデモア。無邪気な笑顔が眩しすぎて僕はそれ以上何も言えなかった。
◆◆◆◆◆
仕方なく、手を塞がれたまま家へと帰る。
エデモアが言うには、奥手なカップルのスキンシップを無理矢理つくるきっかけのようなものがほしい、という依頼で造ったものらしい。
にしても参った…。
両手が固定されたこの状態は面倒なことこの上ない。
早いところ解放されたいが、装置は頑丈でちょっと叩いたくらいでは壊れそうになかった。
これは、ソフィアにお願いするしかないのか…。にしても、自分からおっぱいを触らせてほしいなんて言えるはずないし…。
考え方を巡らせて悩んでいると、
カチッ。
僕の手を固定している装置の輪が一段きつくなる。手首を圧迫され徐々に痛みが増してくる。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
なにこれ、なにこれ。時限制なの!!?マジで痛い。涙が出てくるくらいに。
両腕を縛られたポーズをしながら痛みに苦しむ。一歩も動けなくなるくらい痛みが増してきた。
「あれっ、シオリ!!どうしたの?」
そこにスカーレットが通りかかる。
黒のブラ紐が見えるゆるめのタンクトップにミニのジーンズスカートとだいぶカジュアルな格好だ。
などと服装の解説をしている場合ではない、腕の圧迫は更に強くなり、痛みがさらに強くなる。僕は耐えきれず地面にうずくまる。
「ちょっ、ちょっと大丈夫?」
かがんでこちらを心配するスカーレット。太ももの間にちらりと見えるレースの黒パンツ。苦しみながらもその辺を見逃さないのが男の子。にしても、本当に痛くて耐えられなくなってきた……。
「ス、スカーレット…」
僕は痛みの原因である装置をスカーレットに見せる。
「これが、どうかしたの?」
不思議そうに装置を見つめるスカーレット。
「これを壊せばいいの?」
鎌を取り出し、一刀両断しようとするスカーレット。そんなことしたら僕の腕ごと飛んじゃう!!
「そうじゃなくて!!この装置を外すためには、」
と口に出して次の言葉を躊躇する。
おっぱいを触る必要がある、などと言えるものだろうか。
そんなことを言った日には、いくらスカーレットと言えど僕を軽蔑することだろう。そんなことはできない…例え、今まさに僕の手首がへし折れそうなくらいに締め付けられて苦しんでいようとも……。
涙を必死にこらえる僕を心配そうに見つめるスカーレット。
「オッパイヲサワッテクダサイ。オッパイヲサワッテクダサイ」
突如流れる機械音。
そんな機能もあったのか、機械的に流れる声、とてもシュールだ。
「もしかして、おっぱい触りたいの?」
僕はそう答えるわけにもいかず、必死にこらえようとするが痛みが限界を超えていた。
スカーレットは僕の手を取ると、タンクトップの中へと入れる。ふにょんという柔らかい感触が手の甲に当たる。
「ス、スカーレット!?」
「これでいいの?」
スカーレットのおっぱいの感触を感じるとともに、手首の締め付けがゆるくなっていく。
「……。助かった…」
安堵の表情を浮かべる僕。手首の血流が一気に戻っていくようだ。
「シオリ、なんなの、これ」
「エデモアが造った装置でさ、その、おっぱいを触らないと解除できない代物みたいなんだ…」
「ふーん、そうなんだ……」
スカーレットは少し考えた後に、きらんと閃いたような表情をする。
「ならさ、もっと2人でゆっくりできる場所にいこっ☆手そのままでいいからさっ」
「えっ、ええ!!?」
手首の装置はゆるまるが、僕の心は良心の呵責で締め付けられていた。
こんな形でスカーレットのおっぱいを揉んでいいものか、いや良くない。それに、こんなところをソフィアやミュウにでも見られたりしたら大変なことになる。
「あれ、シオリ?どうしたんですかこんなところで」
その時聞こえる、聞き慣れた声。僕がいつも家で聞いている可愛らしい声……。
「あら、シオリじゃないの」
また聞き慣れた声。同居人の妹の声だ…。
顔を横に向けると、そこには買い物中のソフィアとミュウの姿があった。
2人とも、僕とスカーレットの態勢を見て固まっている。それはもう全てにおいて最悪といえるタイミングだった。
男が、サキュバスのタンクトップの中に手を突っ込んでどうやらおっぱいをもんでいるらしい。
しかも、街中白昼堂々と。
言い逃れできない状況に、僕は冷や汗をダラダラと流していた。
「ハァ…せっかくいいところだったのに。なんでここにいるのよ。あんたたち?」
「そういうあなたこそシオリに何してるのよ?」
「私はただシオリが私のおっぱいを揉みたいって言うから揉ませてあげてただけよ」
「……シオリ?」
「シ、シオリ……」
「ち、違う!!これにはちゃんとした訳があって!!」
「おっぱいを揉むのにちゃんとした訳なんてあるのかしら。後でたっぷりと聞かせてもらうわ。その前に、まずはあなたから消さないとね」
ミュウの目が怖い。
「ふんだ、それはこっちのセリフよ。せっかくシオリと熱い一夜を過ごせるチャンスだったんだから!!」
黒薔薇の剣を構えるミュウ。鎌を取り出し構えるスカーレット。
「2人とも、ここで喧嘩はダメよ」
「あんたは黙ってて!!」
「姉さまは下がっていて、怪我をするわ」
僕は2人を止めるために間に入ろうとするが、再び装置の締め付けが始まってしまう。どうやら触っていないときつくなる一方のようだ。
「痛たたたたたた!!!」
激しい痛みに悶える僕。
「シオリ!!大丈夫ですか!!?」
駆け寄ってくるソフィア。
「オッパイヲサワッテクダサイ。オッパイヲサワッテクダサイ」
機械的に鳴り続けるアラート。
「シオリ、これは一体…。とにかく、手を治療しますね」
ソフィアが僕の手を触ってくれると、痛みがスッと引いていく。
「ありがとう、助かった……」
「この装置は……」
「エデモアが造ったやつで、実は──。」
◆◆◆◆◆
ミュウとスカーレットの喧嘩も一段落つき、僕は家に帰ってソフィアに痛みを緩和してもらっていた。
「──事情は理解したわ。で、その装置を解除するには誰かのおっぱいを揉む必要があるのね?」
「…そうなんだ……」
「なんでまたそんなものを…」
「それはエデモアに言ってくれ…。僕は一方的に付けられたんだ…」
「いくら知ってる相手だからといって油断しすぎよ。まったく……仕方ないわね」
そう言って僕の手を自分のおっぱいに持って行くミュウ。
「ほら、触って。早く装置を解除しちゃいなさい」
「ちょっと、なんでそこであんたが良いところ持って行くのよ!!」
スカーレットも負けじと僕の手を掴み自分のおっぱいへと持って行く。
僕は伸ばした腕を右へ左へと振られる形になる。大きさ、柔らかさが違う2つのおっぱいの感触が手の平全体を伝わっていく。
モミモミ、モミモミ。
なんとも贅沢な光景だ。だが、僕は背中に突き刺さるソフィアの視線に内心ビクビク怯えていた。
「シオリ、私の方が大きくて柔らかいでしょっ」
「あら、大きいだけなんて芸がないわね。こういうのは形と綺麗さが大事なのよ」
「…ペチャパイが何言ってるのよ」
「…デカパイは黙ってなさい」
2人の口撃は続く。
その時、
ガチャン!!
装置の端が開き、地面へと落ちる。
「と、とれた!!!」
腕が自由になり、解放された喜びを噛み締める。腕を自由に動かせることがこんなに素晴らしかったなんて…!!
「あら……案外早く取れたのね」
「なんだぁ、つまんないの」
早々に装置がとれたことに拍子抜けした感じの2人。顔を見合い、落ちた装置を拾う。
「シオリ」
「こっち向いて」
「え?」
ガチャン
再び固定される僕の腕。
「…もう少しだけ」
「ねっ☆」
「えぇぇぇー!!!?」
◆◆◆◆◆
結局、僕の腕が再び解放されたのは夕方になる頃だった。
優しく揉んだり強く揉んだり、2人に色んな触り方を指示され、満足するまで付き合わされた。
ソフィアはというと、表情にこそ出さないもののすっかり機嫌を損ねているようだ。
ミュウもスカーレットも帰り、今は家に僕とソフィアの2人。こんな時、シェイドだったらなんて言うんだろうか…。
「シオリ、夕飯にしましょうか」
「あ、ああ、うん…」
リビングに戻り夕飯の支度をする僕とソフィア。
少しの沈黙が続いた後、
「シオリは悪くないです」
野菜を切りながらソフィアがボソッとつぶやく。
「ソフィア…」
「装置を付けられた落ち度はあるかもしれないけど」
「ぐっ……」
痛いところを突かれて心臓が痛む。
「サキュバスって好きな人に一生懸命なんです……振り向いてもらいたいから。それはわかりますけど…今日のは、妬いちゃいます…」
「あの2人は、やり過ぎです…」
「ソフィア、ごめんな。僕が不甲斐ないばっかりに」
「…本当です」
グサッ。
「でも、それがシオリの良いところなので…(流石に自分から触ってもいいよとは言えません////)」
ソフィアは顔を真っ赤にさせながら料理の支度を整えていく。
「シオリは、その、おっぱいが好きなんですか?」
「えっ!?え、えーと、そうだなぁ」
ソフィアのたゆんと揺れるおっぱいを見やる。こういう時はどう答えるのがいいんだろうか、どれを選んでも地雷な気がする…。
「す、す、好きな人のだったら、触ってみたいとは思うかな、はは」
「そ、そうですか///」
お互い照れてそっぽを向いてしまう。
「…いいですよ」
「えっ?」
ソフィアが何か呟いた気がするが小さくて聞こえなかった。
「い、いえ、なんでもないです!シオリ、用意が出来たので一緒に食べましょう」
「あ、うん、そうだね」
◆◆◆◆◆
ソフィアの料理を食べ終え、片付けをした後ソファに横になる。
自分の腕を自由に動かせるありがたさ、それを再認識するように腕を上げる。
手首には痛々しい締め跡が残っていた。あの装置は放っておいたら手首を破壊していたであろう。躊躇というものが一切感じられなかった。エデモアの発明品には今後注意しないといけない。
手をグーパーさせていると、スカーレットとミュウのおっぱいの感触を思い出してしまい、慌てて意識を逸らす。
そこに片付けを終えたソフィアが戻ってきた。
お茶をテーブルに置く。
「シオリ、お茶を」
「うん、ありがとう」
身体を起こし、ソファお茶が入ったコップを受け取る。
ソフィアは僕の横にちょこんと座った。珍しい、いつもは少し距離をとったところに座るのに。僕は飲んだお茶をテーブルに置いた。
「…ミュウに言われまして」
「何を?」
「姉さまはもっと積極的になった方がいいって」
「あぁ、でもまぁ、ソフィアにはソフィアのペースがあるし」
「私もそう思ってたんですけど……」
ソフィアは僕に抱きついてくる。たわわな胸が僕の腕を挟み込む。
「2人を見てるとシオリをとられるんじゃないかって、怖くなってきて……心が落ち着かなくて……」
震えるソフィアを優しく抱きしめる。
「シオリは積極的な子の方がいいですか?」
「スカーレットとミュウみたいに来られるのは、それはそれで困るけど……」
「好きって言われるのは嬉しいかな、やっぱり」
「……好きです」
「ソフィア」
「シオリ、好きです」
「僕もだよ」
ソフィアの唇に軽くキスをする。
「触るのは、もう少し待ってほしいです…心の準備が…」
「う、うん、そんな焦ってるわけじゃないから」
「……」
「…………」
恥ずかしくて互いに黙る。
「サキュバスなのに…変ですよね…」
うつむくソフィアを今度は僕が優しく抱きしめる。
「僕は少なくともサキュバスだからっていうのは思ったことないよ。ソフィアは誰よりも優しい女の子だって」
「……」
僕の背中に回ったソフィアの腕がギュッと強くなる。
「シオリのそういうところ、ずるいです…」
ソフィアはそう言って、僕の唇にキスをする。
「もう少しこうしていて、いいですか?」
「うん」
僕とソフィアはソファにもたれかかってゆったりとした時間を過ごした。




