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202話_幸せの膝枕

レティに膝枕をしてもらっているシオリを見るのは、なにやら胸が凄くモヤモヤする。


そんなことをソフィアは思っていた。何気にシオリが気持ち良さそうなのも、なにか自分にとっては心がざわつくものだった。


怒りまではしないのだが、なにかモヤッとするものを抱えながらシオリを眺めるのは健康によろしくない。


「…姉様、あんな顔するのね」


不機嫌なオーラを出しているソフィアを、ミュウとシェイドは眺めていた。


「自分から機嫌を顔に出すことはなかったと思っていたが、やはり心境の変化はあるようだな」


「そうね。姉様があんなに不機嫌になるのって、記憶にないもの。妬けちゃうわね」


「当の本人は気付いていないようだがな」


シェイドの視線の先には、レティに耳掻きをしてもらっているシオリがいる。心なしか、気持ち良さそうな表情をしている。


「旦那様、痛くありませんか?」


「うん、大丈夫だよ」


「はい、綺麗になりましたわ。…ハァ、旦那様のお耳、とても可愛らしいですわ」


耳掃除が終わり、シオリの耳をクリクリと優しく指でつまむレティ。


「レティ、、くすぐった、、」


「旦那様、お耳、弱いんですね。……ハムッ」


レティがシオリに顔を近付け、耳の外側を軽く甘噛みする。


「ひゃうっ」


悶え声を上げるシオリ。


「レティ、それは、あぁっ、」


「はんひゃひゃま(旦那様)、ひゃんひへひらっひゃるほへふへ(感じていらっしゃるのですね)」


コロコロと舌を動かすレティ。それに合わせてシオリが弱点を狙われている小動物のような動きをする。


「青女、アウトー!」


減点札とレッドカードを取り出すミュウ。


「良いではありませんの、旦那様が気持ち良くなっているんですから」


「なにか性的なものを感じるのよ、あんたからは。ねえ、姉様」


「え、えぇ、今のは、流石に」


気付けば中腰で止めに入りそうになっていたところを、ミュウに声をかけられ所在なさげにするソフィア。知らないうちに鼻息が荒くなっていたようだ。


「まぁいいですわ。旦那様の弱点もわかりましたし、堪能させていただきました」


レティは満足そうにシオリの背中に回り込み、腕を回す。


赤面するシオリをジト目で睨むソフィア。完全に嫉妬の心がダダ漏れているが、彼女は気が付いていないらしい。


「それじゃあ、次、姉様いきましょうか」



◆◆◆◆◆



次はソフィアの番になった。なんだろう、レティの時より緊張する。


「よ、よろしくお願いします…」


「ど、どうぞ…」


促されるまま、ソフィアの柔らかい太ももに頭を下ろす。


「(あ、柔らかい。当たり前だけどレティとは全然違う。それに匂いも)」


リラックスして頭を下ろした後、ソフィアと目が合う。反対の耳をやってもらうために横になったのだが、間違えて、目の前にソフィアのお腹が見える方に向いてしまう。


「シオリ、こっち向きだと、恥ずかしくて、、」


「あ、ごめん。逆だったね」


慌てて反対に横になる。頭の中が軽くパニック状態だ。


「素で間違えてたわね」


「シオリの良さでもある。まぁ、ソフィアもまんざらでもないようだったし」


「結果オーライね」


まじまじとシオリの耳の穴を見つめるソフィア。シオリは気恥ずかしそうに、その沈黙に耐える。


「ソフィア?そんなに見られると流石に恥ずかしくて」


「あぁっ、ごめんなさい!人の耳の穴を見るのって今までなくて」


「誰かの耳掃除をしたこと、ないの?」


「初めてですね。なので、とても興味深いです。じゃあ、始めますね」


初めてなのか、やり方大丈夫かな、と僕が心配したのもつかの間、


ブスッ。


耳掻きが勢い良く、耳の穴に差し込まれる。


「アウチッ!!」


あまりの勢いに体がビクンと跳ね上がった。


「えっ!?シオリ、ごめんなさい……」


「ソフィア、それでは旦那様の鼓膜を壊してしまいますわ!!」


レティがやってきて慌てて耳掻きを引き抜く。


「旦那様、大丈夫ですか?」


「うん、聞こえてるから…(多分)」


「良かったですわ……。ソフィア、耳の穴はとてもデリケートなんですのよ。優しく触ってあげないと」


「そうなのね、ごめんなさいシオリ……」


「大丈夫だよ、ソフィア(一瞬心臓止まりそうになったけど)」


「私が見て差し上げますわ。さぁ、これをお持ちになって」


レティにレクチャーされ、耳掃除を始めるソフィア。こそばゆい感覚が耳の中に伝わる。


「シオリ、大丈夫ですか?」


「うん、気持ち良いよ」


ソフィアの安堵した表情が可愛らしい。僕は心地よさに、目を閉じて堪能することにした。


「なによ、良い感じじゃない」


「もう慣れたようだな」


「気持ちよさそうにしちゃってまぁ」


「ミュウもやりたいんじゃないのか?」


「いいのよ、今日は。姉様が嬉しそうなら」


「なるほど。そういうものか」


「そういうものよ」


シェイドとミュウは、気持ちよさそうにしている僕を見ながら軽く微笑んだ。


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