17話_サキュバスとデッドヒートデート1
ソフィアと仲直りをして数日経った頃のお話。
今日は珍しくソフィアはチャミュとお出かけ。
家には僕とフーマルだけ。
僕はソファに座りながら、なんとなくテレビを見ていた。
フーマルが僕の近くまで来て、僕の顔をペチペチと叩いてくる。
「いたっ、なんだよ」
「お前があまりにも不甲斐ないから、ワシがアドバイスしてやる」
「いきなりなんだよ」
「まぁいい、聞け」
「ぐふっ」
フーマルは僕に体当たりをすると、真正面に座した。
「前にお嬢を怒らせたことあっただろ。あの時、お嬢はお前と買い物に行きたいって言ってたんだぞ」
「ちゃんと聞いてたのか…だったら、その時教えてくれても良かったじゃないか」
「なんでワシがお前のミスをフォローせにゃならんのだ」
「ぐ、そうなんだけどさ…」
「いいか、お嬢の機嫌が悪いと警戒心が強くなる」
「警戒心ってなんのことだよ……」
「あ、あぁこっちの話だ気にするな」
あからさまな話題そらし。こいつ、絶対よからぬことを考えてやがる。
「とにかくだ、お嬢のために1日を使う。そんな日があっても悪くないだろう?」
「ま、まぁそうだけどさ…」
「今日お嬢が帰ってきたら誘うんだぞ、わかったか」
「…わかったよ」
まぁ、この前ソフィアをがっかりさせたことのお詫びはしたいと思っていたんだし、丁度よいのかもしれない。
「そういえば、お前秘蔵コレクション全然見せてくれないじゃないか」
「だれが無料で見せると言った。それは会員制だ。月額3980円から」
「高いな!!しかも、からってことは上があるのかよ!!」
「そうだ、ワシが厳選に厳選を重ねたお嬢他美女たちのセクシーショットだぞ。他では見れないアングルが満載だ」
「それって盗撮だよな……」
「失敬な!!ちゃんと敬意の念は払っておるわ」
「だから許可とってない時点で盗撮なんだって」
「とか言って、お前も見たいんだろう?」
ニヤリと笑いながらこっちを見るフーマル。本当ゲスな顔になると元の可愛さとのギャップが際立つな。
「見たくねーよ……」
「お嬢の着替えシーンなんかたまらんぞ。お嬢のダイナミックなボディは画面には収めきれない」
「やっぱ盗撮してんじゃねーか」
「むしろ撮らないと失礼にあたるというものだ」
出た、犯罪者のトンデモ理論。
「お嬢のHな写真は秘蔵コレクションにたくさんあるぞ、どうだ今なら入会手数料無料だ」
そう言って会員カードらしきものを2枚取り出し、眼鏡のように目の前で並べる
「楽○カードマンかよ……」
変態ポメラニアンとこの上ない低レベルな次元の言い争いをしていると、ソフィアとチャミュが帰ってきた。
「シオリ、今帰りました」
「あ、お帰り。ソフィア」
「フーマル、おとなしくしてましたか?」
「ハッ、万事滞りなく」
なにがハッ、だよ……裏表激しすぎなんだよな。
「シオリ、どうかしました?」
「いや、なんでもないよ。ソフィアも帰ってきたし、夕飯の支度をしようか」
「あっ、今日はチャミュと私がつくるので大丈夫です。そのための食材も用意したので」
「ソフィアがつくりたい料理があるらしくてね、それを私も手伝うことにしたよ」
チャミュが後ろからたくさん買ったであろう買い物袋を掲げてみせる。
彼女の姿を見た途端、フーマルはささっと僕の後ろに隠れた。
「そっか、じゃあ今日はお願いしようかな」
「はい、楽しみにしててくださいね。チャミュ、つくりましょう」
「うん。そういうことなのでシオリくんはゆっくりしていてくれ」
ソフィアとチャミュはキッチンの方へ歩いていった。
一体何をつくるんだろう?
最近は気になる料理雑誌があるからそれを買ってあげたらずっと読んでいたし、つくってみたいものがあるんだろうな。
「シオリ、ワシは飯時になったらいなくなる。お嬢にはそう伝えておいてくれ」
「チャミュがいるといつもいなくなるよな、お前」
「あの天使は苦手なんだ。察しろ」
と言われてもよくわからん。おそらく、過去になにかあったのだろう。
ソフィアの手伝いをしようとしたが、
楽しみに待っていてくれ、とチャミュに戻されてしまった。
仕方ないのでリビングでテレビの続きでも見ていると、巷で大人気の愛の無限プリンというのが紹介されていた。
カップが2つくっついた形で8を横にしたような感じだ(というか無限のマークだと言ってて気が付いた))。なんでも、それをカップルで食べるとずっと幸福が訪れるらしい。“幸福が訪れる”というのがなんとも曖昧な表現だが、実際美味しく連日売り切れてしまうらしい。
「これだな、シオリ」
「これって、ソフィアにってことか?」
「あぁ、ばっちりじゃないか」
「でもすぐ品切れって言ってるけど」
「だからいいんじゃないか。頑張ってお前がゲットする。それをお嬢に渡す。
お嬢は喜ぶ」
「まぁ、そうだとは思うけど」
「あら、いいじゃない」
「おわっ!!」
隣を見るといつの間にかソファに座ってテレビを見ているミュウがいた。
「いつの間に!?」
「扉開いてたわよ。不用心じゃないかしら?呼んでも誰もこなかったから上がらせてもらったわ」
足をパタパタさせながら、テレビを見ているミュウ。
「姉さまはどこ?」
「今キッチンで料理をしてるよ」
「そう」
ソファから立ち上がるとキッチンの方へと歩いていく。
「姉さま、来たわよ」
「あ、ミュウ。いらっしゃい。シオリ、今日は一緒に夕飯を食べましょうって私が呼んだんです」
「なるほど、そういうことだったのね」
「お、ミュウくん久しぶり」
「あんたもいたのね…」
チャミュとミュウの仲は相変わらずのようだ。
キッチンから戻ってきたミュウはまたソファの方に戻ってきた。
座り直すのかと思いきや、僕の膝の上に馬乗りになる。
膝の上にぷにっと可愛らしい感触が乗っかる。
ミュウはそのままゆっくりと僕の首に手を回す。
「ミュウ、これはなんだ」
「いいじゃない、私がサキュバスだってこと忘れてるみたいだから思い出させてあげようと思って」
「覚えてる、覚えてるから!!」
片手でスカートをゆっくりたくし上げるミュウ。
「あなたのために下着も新調したんだから。光栄に思いなさい」
スカートが上がりきらないよう僕の手で抑える。
「見たくないの?」
「いけないだろ、こういうのは」
なんというか見た目的に。
「何を言ってるのよ。サキュバスなんだから当たり前じゃない。雄の精を糧にするのがサキュバスなのだから」
「でも、ソフィアはこんなことしないぞ」
「姉さまは特別なの。サキュバスであってサキュバスではない。あなたに姉さまの苦悩がわかって?」
「いや、わからないけどさ…」
「まぁ完全なサキュバスと違って天使の面も持ち合わせているのだから、私も別に必要ではないけれど」
「なんだ、じゃあいらないじゃないか」
「あ、」
しまった、という顔をするミュウ。
賢いようで抜けているのが彼女。なので、らしいといえばらしい。
「そういうことではないのよ。あなたが私にドキドキしないのが癪に障るのよ」
キッと僕の方をにらむミュウ。ぐっと体を近づけてくる。
「と に か く、あなたを私の虜にしないと気が済まないの。ということで、ほら触りなさい」
ギュッと手をつかまれ、スカートの中へと誘導されていく。
薄々感づいてはいたことだが彼女の方が圧倒的に力が強い。華奢な体な癖して、僕程度の反抗じゃビクともしない。ミュウの柔らかい太ももの感触が手のひら全体に伝わる。
「待って!!ストップ!!ストップ!!ドキドキしてる、ドキドキしてるから!!」
僕を引っ張る手が止まる。
「どうドキドキしてるの?」
「どうって、えーっと……」
「……」
再び動き出す手。徐々に太ももの付け根への感触へと変わっていく。
「あーっと!!そう、ミュウってとっても可愛いなって。なんていうか、そう愛らしい、みたいな」
「じーっ………」
「………」
「全然ダメみたいね」
「あーっ!!!」
ミュウの心には全く響いていなかったらしく、手がミュウの太ももと太ももの間に挟まれたところでソフィアがひょいと顔を出して助け船を出してくれた。
「ミュウ、あまりシオリを困らせてはダメですよー」
ミュウの手が放されたところでパッと手を戻す。
「大丈夫よ姉さま、仲良くやってるわ。ねぇ?」
「あ、あぁ」
「シオリも遠慮しないでくださいね。ミュウははっきり言わないとわからないんですから」
「そんなことないわ、ねぇシオリ」
ギュッと手をつねられる。上目遣いに睨みつけてくるミュウ。
「だ、大丈夫。なにかあったら言うようにするよ」
「そうしてくださいね」
ソフィアはまたキッチンへと戻って行った。
「ふぅ、そういえば前から気になってたんだけどミュウはどうしてチャミュのことを嫌うんだ?」
この際なので疑問に思っていることをぶつけてみることにした。
「そんなの決まってるじゃない」
「なに?」
「知りたい?」
「あぁ」
「じゃあ、私をお姫様だっこしなさい」
「ハァ?」
ミュウの突飛な提案に戸惑う僕。質問に答えることとお姫様だっこ、どう関係しているんだ。
「私を満足させたら、答えてあげる」
「そうか……じゃあいいや」
面倒な感じになってきたので、お断り申し上げることにした。
「どうしてよ!!わかった、いいわ。お姫様だっこしたら話してあげるから」
急に焦り出すミュウ。こういうところはなんか可愛らしい。
まぁ、お姫様だっこくらいなら可愛いものか。腕を上げるミュウの腰に手を回し、
座った状態でお姫様だっこをする。また腕を僕の方に回すミュウ。
お互いがお互いを見つめる形になる。なにやら嬉しそうな顔をしている。
「悪くないわね、いいわ教えてあげる」
お姫様だっこされた形でミュウが話し出す。傍目から見るとだいぶシュールな光景だ。
「あの天使は私から姉さまを奪った元凶なの。たしかに天界で姉さまが大変苦悩されていたのは知っていたわ。けど、私だって姉さまが必要だったのよ。なのに、あいつが姉さまを連れてこっちに降りた。その話を聞いた時は耳を疑ったわ」
「その話は誰から聞いたんだ?」
「知り合いの天使よ。天界では姉さまがいなくなって大騒ぎよ。まぁ、大抵は姉さまを利用しようとしてたロクでもない奴らばかりだったから知ったことではないけれど」
「利用?ソフィアを利用しようとするやつがいるのか」
「そうよ。あっと、喋りすぎたわね」
「ソフィアってそんなにたくさんの人から狙われてたのか?」
「当然でしょ。はい、このお話はもうおしまい」
「サキュバスだからってのが理由なのか?それだけじゃない口ぶりだったけど」
「言ったでしょ、もうおしまいよ」
「少しだけでもいいから」
「じゃあ、ここを舐めて」
そう言ってシャツを少し広げて鎖骨を僕に見せる。
「ここって、鎖骨を?」
「そうよ、ゾクゾクするから好きなの」
「でも、それは……」
圧倒的犯罪の匂い……。
「甘くて美味しいわよ?」
「美味しいってそんなわけないだろ」
「失礼ね。サキュバスはどこを舐めても美味しいのよ。知らないの?」
「初耳だよそんなの」
「じゃあ自ら試せるいい機会じゃない。私はそう人には舐めさせないし、
なかなか名誉なことなのよ?」
とんだ名誉もあったもんだ。
「サキュバスは皆舐めると味がするのか?」
「そうね、その方が雄も喜ぶでしょ?」
「そういうものなのかな」
「そういうものなの。さぁ、舐めないなら姉さまのことは教えないわよ」
二択に一つ、ここでミュウの鎖骨を舐めるとソフィアの過去を教えてもらえる。
しかし、舐めると何か大事なものを失う気がする………。
僕が迷っていると、ソフィアとチャミュがサラダを持ってきた。
「ミュウ、あまりシオリを困らせないの」
「あら、別に困らせてはいないわ。シオリだって嬉しかったでしょ?」
「いや、嬉しいかって言われると……」
ドスッ。ミュウのボディブローが入る。
「うっ」
「素直じゃないのね、まったく」
「ははっ、ミュウくんはすっかりシオリくんがお気に入りなんだね」
「そうね、あんたより何百倍もマシよ」
チャミュの方を向かず辛辣に言い放つ。
「これは手厳しい」
苦笑いをするチャミュ。
「シオリ、ご飯ができました。食べましょう!」
あれ、この匂いって……。気付けばキッチンの方から凄くいい匂いがしてきた。
記憶に残っている匂い。
「ソフィア、この匂いって」
「ふふ、そうですよ」
ソフィアがお皿を運んでくる。お皿に乗っているのはロールキャベツだった!!
それは僕の大好物だった。
しっかりとキャベツが巻かれていて形のいいロールキャベツだというのがわかる(大好きなわりには語彙力がないので美味しく表現できない)。思わずよだれが出てくる。
「これをつくってみたかったんです。シオリが好きだって言っていたから」
「凄く美味しそうだ!!嬉しいよ!!」
ロールキャベツでテンションが上がっている僕の顔を見てソフィアも嬉しそうだ。
「ソフィアの自信作だな。私はソフィアに言われてまわりの手伝いをしただけだ」
「チャミュは料理するのか?」
「人並みに。いや、天使並にというのか、まぁ天使は料理はしないのだが」
「そうなんだ」
「天界では従者がほとんどやってくれるからね。自分で何かをするということはほとんどないよ」
「ソフィアもそうだったのか?」
「私の場合は特殊で、基本的にはいつも1人でしたね。さ、冷めちゃう前に食べましょう」
「おっ、そうだね。それじゃ、いっただきまーす!!」
ロールキャベツは箸で簡単に切れるほど柔らかく、口に入れたらキャベツの甘みと肉のしっかりした味が広がってきた。
「うん!!美味しい!!美味しいよ、ソフィア」
「喜んでもらえて良かったです。おかわりもありますから」
「ほんと!!それは嬉しい!!」
ロールキャベツが美味しくてご飯がどんどん進む。
ソフィアのご飯はいつも美味しいが、今日は自分の好物だったこともあり3杯もおかわりしてしまった。
たらふくご飯を食べて一息つく。
ロールキャベツの余韻がまだ残っていて、珍しくニヘニヘとした顔をしていた。
隣でお茶を飲んでいるチャミュがこっちを見ていたのに気付く。
「どうしたんだ?チャミュ」
「いや、君は不思議な奴だと思ってな」
「不思議って?」
「ソフィアがここまで君と打ち解けるとは思っていなかった。珍しく無害な人間もいるものだと思っていたが、それだけではないようだ」
最初の頃にディスられたのを思い出す。そう言えばそんなこと言ってたな。
「ソフィアがここまで笑顔を見せるようになったのは、間違いなくシオリくん、君のおかげだ」
言われてソフィアの方を見る。照れた感じで目線をそらしてしまうソフィア。
「そうなのか、まぁソフィアが楽しそうなら良かったよ」
「姉さまが人間界の男性と一緒に住んでいるなんて知れたら、天界では騒動になるでしょうね」
今まで黙々とご飯を食べていたミュウがようやく口を開いた。
「ああ、大騒動レベルで済めばいいが」
「そ、そんなに大事なのか…?」
ミュウもチャミュも、随分と大げさに言うので流石に僕も心配になってきた。
「なにも大げさではないよ、それにミュウくんはさっき知られたら、なんて言っていたが
もう既に天界の一部では知られている、という話を掴んでいる」
「!!?」
「えっ、それってソフィアが僕の家に住んでいるってことをか?」
「ああ、流石に家まではばれていないが、この街にいるということは伝わっている
可能性が高い」
「どこから得たのよ、その情報は?」
「天界の知り合いからさ。だからシオリくん、これからはソフィアを天界に戻そうとする奴らが君の前にも現れるかもしれない。その時はソフィアを守ってあげてほしい」
チャミュはいつになく真剣だ。
チャミュは小さい十字架のような剣型のキーホルダーを取り出すと、僕の前に差し出した。
「君にはこれを渡しておく」
「これは?」
「君とソフィアを敵から守ってくれるものだ。困ったときはこれに話しかけるといい。きっと助けてくれるだろう」
「よくわからないけど、ありがたく受け取っておくよ」
キーホルダーを受け取る。見た目以上にずっしり重さがあるものだった。
「今、私が聞いている情報だと輝光六天隊がソフィアの行方を探っているらしい。こいつらに出会うようなことがあれば私に連絡するか、すぐ逃げてくれ」
「そんなにやばい奴らなのか?」
「輝光六天隊、通称六天隊は天界の中でも思想が極端にクリーンな集団なんだ。クリーンというのは天使、それも上級しか認めないと言ったことを指す。私にとってもあまり出会いたくない存在だ」
「チャミュは上級じゃないのか?」
「まさか、私は一般の一般だ。中の中くらいといったところか」
「そんな奴らがなんでわざわざ人間界にいるソフィアを?気にしなくていいじゃないか」
「それが逆なのよ」
「ミュウ、どういうことだ?」
「六天隊は不穏な目があればすべて潰しておきたいの。トップがそういう奴だからね。
姉さまは六天隊にとって看過できないほどの異分子なのよ」
「サキュバスと天使のハーフ、ということがか?」
「そう、だから私にとっても六天隊は敵」
「まぁ、これはまだあくまで可能性の話でしかない。ただ、一応君たちには話しておかないと、と思ってね」
チャミュはお茶を飲み干すとテーブルに置いた。
「さて、私はここで失礼するよ。ソフィア、夕食ご馳走様」
「ええ、こちらこそ手伝ってくれてありがとう」
チャミュはソフィアを軽くハグしたあと、リビングを出て行った。
「さて、夕飯の片付けでもするよ。ソフィアは休んでて」
「え、そんないいですよ。私がやります」
「私もやるわ。姉さまは夕食つくったんだから休んでいて」
ミュウも立ち上がり、食器を運んでいく。結局、夕飯の洗い物は僕とミュウですることになった。
「ねぇ、そのお皿とって」
「あ、ああ。はい」
「ありがとう」
洗う物をミュウに渡し、僕は洗い終わった食器を拭いていく。
「ねぇ、シオリ」
「ん、どうした?」
「あの天使と同じことを言うのは癪だけれど、姉さまの嬉しそうな顔、最近よく見るようになったわ」
「ああ、うん」
「そのことについては、感謝するわ」
ミュウからお礼を言われると思っていなかったので少し面食らってしまう。
「なによ?」
「いや、ミュウから感謝って言葉が聞けるとは思ってなくて」
「失礼ね!!私をなんだと思ってるのよ」
「ああ、ごめんごめん。そういうつもりで言ったんじゃないんだ」
「じゃあどんなつもりだったのよ」
「あーいや、ミュウってソフィア想いなんだなって」
「言ったでしょ。天界にとって姉さまは私の心の拠り所だったんだから」
ミュウはすべての洗い物を終え、タオルで手を拭く。
「だから、はい」
今度はミュウから円筒形のホイッスルのようなものがついたペンダントを渡された。
「これは?」
「姉さまがピンチになった時、それを吹きなさい。駆け付けてあげるから」
「これで?」
「疑ってるのね?いい?冗談で使おう物ならあなたの精、すべて搾り取るわ」
「う、うん、わかった」
ミュウだと本当にやりかねないので、冗談では吹かないとかたく約束をした。
ミュウなりの姉を心配する思いを知り、またひとつ姉妹の絆を感じるのだった。
「姉さま、今日はありがとう」
「ミュウも来てくれて良かったわ。またご飯食べにいらっしゃい」
「うん、待ってるから」
「……考えとくわ」
ミュウは照れ臭そうに笑うと帰っていった。
「ソフィア、今日はお疲れ様」
「シオリもお疲れさまでした」
ミュウを見送ったあと、2人顔を見合わせる。
「あ、あのさ、今日テレビで見たんだけど、なんか人気のプリンがあるんだって」
「へー、そんなのがあるんですね」
「う、うん。それでさ、次の休みの日に、一緒に食べに行かないか?」
そう言って、ソフィアの方を見る。
少し驚いた顔で、こっちを見ているソフィア。
「ソフィア?」
「あ、はい。すみません、ちょっと驚いちゃって」
ソフィアはもう一度僕の顔を見てにっこり笑った。
「シオリからのお誘い、待ってました。嬉しいです」
満面の笑み、この可愛さならなんでも許してしまいそうだ。
「じゃあ」
「はい、次のお休みに行きましょう」
こうして次の休日、僕とソフィアは初めてデートをすることになった。




