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鎧の英雄  作者: 玖火
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幼少・現状

子供の頃に見たテレビを、今になってふと思い出した。

しかしなにぶん3、4歳くらいの時に見たものだったので、それが所謂(いわゆる)ヒーロー番組だったということと、主人公が姿を変えたヒーローのビジュアルが軽く思い起こせる程度だった。


が、それでもその頃はその番組に夢中になり、また幼稚園なんかでごっこ遊びをしていたのだから(自分の配役はいまいちパッとしなかった気がするけども)、そのヒーローへの憧れはかなりのものだったのだろう。


加えて、魔法の苦手だった自分にとって、テレビの中のヒーローはまさしく「夢」と「勇気」を与えてくれる存在だったに違いない。




───────『大丈夫っ、ぜーったいヒーローが助けに来てくれるもん!』


幼い日に語った、星を掴もうと手を伸ばすようなそんな無邪気な言葉が、頭の中で反芻(はんすう)した───────。


睡魔に人が襲われる昼下がりの時間帯。


睦月大渡(だいと)もまた、睡魔に負け眠りこけていた。




「………………………………………と」


………あれ、寝てた…?


「………い…………………………と」


五限目の終盤から睡魔に襲われるとは、今日は運がない。


「……て、……………い………と」


さてどのくらい経った。まだ五限目が終わっていないといいのだけれども。

あと聞きたい、さっきから話しかけてくる奴は誰だ。大方わかってはいるけど。


「………………」


あ、止まった。まあいい、諦めてでもくれたんだろう。さあてもっかい寝ようか




「【バインド】」

声を掛けていた人物がそう唱えると、不意に自分の頭が机から離れる感覚がし、数秒とせずに机に叩きつけられた。

「…痛い」


もう少し気の利いた起こし方は無かったのだろうか。



鈍い音がした為に、クラスの一部がこちらを向く。がすぐに顔を戻したようだ。



「いやあ…ごめん。ぐっすり夢の中だと思っててつい…」

橋月(きづき)、頼むから止めてくれよ…脳にも健康にも悪い。多分だけど」

「そこは多分なんだな」

「うん、そこまでの医療知識ないしな」

「無くても胸張って言っていいと思うよ、さすがにさっきはやり過ぎた」


苦笑しながらそう言う魔法の主、如月橋月(きづき)

常々思うが、初めて会う人だとすごく言いにくいのではないだろうか、こいつの名前は。


「まあやりすぎたって自覚してくれてるならいいよ、うん」

「脳やら健康やらに悪いと言っているのにあっさり許してくれるんだね」

このやり取りの間にも数分睡眠が取れたのだろうけど、もう気にしないことにした。







伊澄碧(いずみあおい)学園高等学校。魔法が科学と並ぶほどに発達している現代、日本国内でも指折りの実績を持つこの学校に、俺と橋月は在籍している。


所謂難関の国公立・私立魔法科大学への進学率も言わすもがな高く、名の知れた学校というのもあって魔法技術関連企業等への就職にも非常に有利。


誰でも一度は憧れを抱き、巷では「ここの生徒は秀才か勝ち組」とすら呼ばれているとかいないとか。




だが。





…優秀な学校に在籍している生徒が、必ずその全てエリートか?秀才か?とそう問われれば「はい、その通りです」とは一概に返せはしない。


何故ならばこの俺、睦月大渡の魔法実技判定はA+からE-の五段階評価のC-とD+を行ったり来たり。Cは所謂凡人、つまり「凡人かそれより少し下」という事。

そんな事で卒業が出来るのか、と疑問に思うかも知れない。『一応』卒業は出来る。一応だが。




先刻話したことからになるが、実技判定は言わば技能・実践のカテゴリに入る。これは「魔導師として社会で活躍できるか」を判定する際のポイント。

A+からB+は第一線で問題なく活躍出来るレベル。B-からC+は余剰戦力と言ったところか。



しかし、ここでC-なぞ取ってしまっている俺はおちおち大丈夫とは言えない。そこで所謂内申点、魔法の知識理解関心やら部活動やらでどうにかバランスを保っている訳だ。



そんな自分にとって、授業中に居眠りするなど成績を脅かす脅威。だがまあ一限位ならレポート自主提出で巻き返せるだろう。




「なあ橋月、今何限目?次の教科何?」

そんな期待を込めて問う。


「ああ、えーっとね……







次、部活」



……………………………………ん?

今とんでもない事を言わなかったかこの親友。



「…あーっと橋月、もう一回頼めるかな…?」

「だから、次は部活。もう授業は全部終わったよ?」

「………ほんと?」

「本当だよ」




……………なんてこった……!!


実技成績の芳しくない大渡にとって授業態度は内申の重要な事柄。

故に、これだけの時間居眠りをしていたとなれば一気に内申はガタ落ち、成績に大きく響く事になる訳だ。


(不味い、非常に不味い。)

見れば誰でも分かるような絶望的な表情を浮かべ、冷や汗が頬を伝っていく。


「……ねえ、大渡」

「ハイナンデショウキヅキサン」

「…今からならまだ間に合うからさ、その…先生に、ちゃんと言ってきた方が良いよ?」

「ですよね分かりましたそうしますそうするしかありません」

「あ、それと今日一緒に帰れないからね。ちょっと用事が出来ち…」

「おう了解」




取りあえず会話の要点は掴めた為、大渡はその後一直線に職員室へと向かい居眠りの分の埋め合わせを掛け合った後、部の顧問に「急用が出来たので今日は休みたい」と相談して認可を貰い、急いで下宿先へと向かって行った。








『凶暴化した魔物による襲撃被害が通達されました、下校する生徒はなるべく速く、実力のある生徒と共に帰宅するようにして下さい』

という、校内放送も聞こえないほど急いで。

感想・アドバイス・御意見等お待ちしております。

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