あの宝石
ここは馬車の中、荒い馬の走りに揺れ動く中、レイは屈強な男二人組に挟まれて座っていた
「あの…」
「…………。」
レイは隣の男に話しかけるが返事が無い…再び重たい沈黙が続く…が、レイは諦めきらめなかった
「新聞見ました…? 昨日オーケン海で嵐があったんですよね……ここら辺近いですよね?」
「…………………。」
「漁業に影響が出てないか心配で、オタクらの街の魚料理って絶品ですもんね…!」
「…………………。」
何だこの地獄
───瞬間、馬車は勢い良く止まり、馬車の扉が開いた
「着きましたよお客さん、ようこそ…海と水の街、オルリア国へ!」
降ろされた場所はお城の真ん前、そのままレイは一緒に乗っていた屈強な男にお城の中へと案内され、ある扉の前で立ち止まり「ここだ」と言い残して去っていった
レイはノックを二度行う、すると「どうぞ」と女性の声が聞こえ、扉を開けて部屋に入った
「久しいですな、良く来てくれた! 北乃 冷殿! オルリア国の王女、ライト・エン・グレイシードが直々に…」
「.............おぇ」
「ちょっ! いきなり無礼だぞ!」
「緊張がほぐれた瞬間に馬車酔いが…あの馬気性が荒いぞ…」
「そりゃオルリア国で育てたからな!」
「この国気性が荒いのか…あ、もうそろそろ日課の時間だ、帰りは静な馬車を…」
「え、ちょ! ちょっと待って! レイ殿の日課に合わせてスケジュールを組んだんだぞ! 帰ろうとするな! オルリア国を嫌うな!」
「分かったよ…」
グレイシードはソファに座り、咳ばらいをして気を落ち着かせる
「ところでレイ殿、今日呼ばれた理由は分かっておられるか?」
「俺の討伐か?」
「違います! レイ殿への報酬の話だ…」
「別にいいって言っただろ」
「そうはいきません、オルリア国の経済崩壊を二度に渡って救ってくれた恩…返さなければ王族としての名折れ!」
「でも持ってないんだろ…『あの宝石』。 俺が望む物はそれだけだ」
「えぇ…前もそう言われて帰りましたよね。 確かに宝石はありませんが…」
机に勢い良く一枚の紙が叩き置かれた
「何の紙だ?」
「漁師達から届いた報告書です。内容は…『海底に光り輝く宝石を発見、種類はバラバラで大きさはそれぞれ15カラット』」
「海底に宝石…? 前に同じ報告を受けて行った事がある、『あの宝石』は無かった…悪いが報酬には…」
「まだ続きがあります」
「続き…?」
「えぇ…『海底で発見された宝石は道の用に続いており、オルリア海からオーケン海まで続いていた』…以前とは事例が異なりませんか?」
「確かに…アイツらの習性とは違う…妙だな」
「オルリア海から続いてたとして、オルリア海の見張り番からは船の通った報告はありませんし、海底から湧き出たとしても全てが新種の宝石…」
「理由が無いと湧かないな…」
「えぇ…念のために調べさせましたが、海底には異常は無かった…これはもう…アレです…アレしかありません……宝石は、空から降ってきた!」