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36.主の素晴らしさ(デミトリアス視点)

作業の都合上、2話アップになっております。

話が飛んだと感じられる方は1つ前からどうぞ。

デミトリアス視点です。

よろしくお願いします。


「本来であるならば、主のお力を借りるほどでもないのですが。我が主はとても寛容で困りますね」


デミトリアスが物憂げに息を吐きだせば、震える声で正面にいた女が言葉を紡ぐ。


「何が望みなの、私が声をかければたいていのことは叶うわ。だから、私だけは見逃して」

「ずるいぞ、わしだって、それなりの権力はある。望みをいえ、悪魔」

「いや、俺にだって、それくらい!」


口々に騒ぎ出した人間を一瞥して、デミトリアスは微笑む。

主の至高性は、こういう虫ケラがいるから引き立つのだ。


自分の心を沸き立たせ、震わせることができるのは、彼一人だと実感できる。


「くくく、本当に。我が主は素晴らしい。『コール』、マルキダ、アスモデル、アム、バキ」


デミトリアスの召喚に、4体の悪魔が現れる。

白い羊の角と毛皮を持つ美女と、雄牛の顔をしている筋肉質な男、弓と竪琴を構えた4本腕の少女、二匹の魚だ。魚の胴体は1本の紐で結ばれており空中にプカリと浮きながら尾びれを左右に振っている。


「お呼びでございますか、デミトリアスさま」

「我が主の許可はいただいております。いつも館で働いてくれているお礼ですよ。思う存分楽しみなさい」


デミトリアスが使役している悪魔は普段は市長館でメイドや料理人や庭師として働いてくれている。

マルキダとアムはメイド服を着ているし、アスモデルはコック服だ。


たまには褒美を与えるのがよい主人だと、クロゥイン自身がよく言っていたので、自分も真似をしてみる。


『かしこまりました』


小さくうなずいて、それぞれが行動を開始する。

それを見送って、デミトリアスは最上階のガラス張りの張り出した部屋を見上げる。


クロゥインに魔法を放った輩は、彼自身が跳ね返した魔法で死んでしまったようだ。最大出力で放った魔法が戻ってくるとは想像もしなかったのだろう。

せっかくやる気になったというのに、この思いをどこへぶつければいいのか。


仕方ないので、この場を提供してくれた輩に礼を述べることにしよう。

怠惰で寛容で眠りが大好きな我が主をここまで引っ張り出してくれたのだから。


「こんばんは、良い夜ですね」

「な、な、貴様はなんだ?! 護衛はなぜ、こないんだ!」


椅子の隅で小さく丸まっている男は、ガタガタと大きく震えながら威厳を必死に保とうとしている。


「礼儀のなっていない者ですね、挨拶にはきちんと挨拶を交わすべきですよ。ああ、失礼。愚か者には理屈は通じませんかね」

「なんだとっ、わしが侯爵だと知っての狼藉か」

「虫ケラの地位など興味はありませんが。それほど偉いというならば、もう少し私を楽しませてはくれませんか?」


デミトリアスが得意とするのは、召喚魔法と幻術である。多少の攻撃魔法も使えるが、クロゥインに比べると児戯にも等しいためほとんど使わない。


「いい声で鳴いてくださいね、『イリュージョン』」


夜は長いようで短いものだ。

存分に楽しまなくては。

お読みいただきありがとうございました。

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