表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/38

第16話:2002年4月12日(1)

かなり長くなってしまったので、2つに分けます。

まずは前半です。


「すいません。入会希望なんですけど…」



「はーい!じゃあちょっと説明するからこっちきてもらってもいい?

2人とも入会希望?」


「あ、いえ。私は入会希望で、こっちは見学してから考えるそうです。」


「そっか。えーっと、名前と学部聞いてもいいかな?」


「経済の今原美菜です。」

「本田朱美です。同じく経済学部です。」


「今原さんと本田さんね。僕は新歓担当をしている、大岩(おおいわ)です。ちなみに法学部の3年ね。」




金曜日の夕方。

約束どおり、美菜と朱美はサークルの部室を訪れた。

部室では、30人ほどの部員が集まってミーティングをしていた。


その部室の片隅に案内され、大岩と3人で向かい合う。



「まず、なにでこのサークルのこと知りました?ビラ?」


「えーっと、知り合いにすすめられて知りました。」


「あ、メンバーの知り合い?誰だれ?」


「すごい昔にやってた人なんで、わからないと思います。」


「そうなんだ。親とか?」


「あー、まあ。」


横で、朱美が何か言いたそうな顔をしていたが、笑って返した。


この団体の歴史は古く、自分達の親ほどの年齢のOBもいる。

もっとも、OB会で活動するのは30歳前後までという暗黙の了解があるようだったが。




「で、本田さんは?」


「私はこの子に話を聞いて、面白そうだなと思ったので。」


「そっかそっか。じゃあ、活動内容とかは2人とももうわかってるの?」


「だいたいしか聞いてないので、あんまりわからないです。」


「そうか。じゃあまずは活動内容から説明するね。

その前に、今日この後、飲み会があるんだけど参加できる?」


「はい。」


即答した美菜とは反対に、朱美は遠慮がちに聞いた。



「あの、まだ入るかどうかわからないんですけど、参加しても大丈夫ですか?」


「まったく問題ないよ!

今日のミーティングも来なくて、入会する気も全然ないのに、タダ飯だけのために来る新入生とかいっぱいいるしね。

もともと、多くの人にこのサークルのことを知ってもらうためにやるんだ。

うちはOB会っていうのがあって、こういう飲み会とか合宿の時には金銭面とかハード面でお世話になってるんだよね。だから気にしなくていいよ!」


「じゃあ、参加します。」


「よし。飲み会は7時からだから。」




そして、活動内容や、日程などの説明を受けた後、ミーティングに参加させてもらい、他の上級生とも交流した。





ミーティングが終わる頃には、見学希望や飲み会目当ての新入生が、30名ほど集まっていた。

上級生もいれると、かなりの大所帯だ。



「じゃあ、そろそろ飲み会の会場に移動しまーす!

歩いて10分ぐらいのとこだから、みんなで固まって移動してください。

自転車の人は、この男の人についていってー!会場に行ったら、OBが先に入ってるから。」




不慣れな土地の上、雅典の近くに家を決めた美菜は、大学周辺の地理がまったくわからなかった。

そのため、ミーティングの時から積極的に話しかけてくれている2年生の男たちに、はぐれないようについていった。





アットホームな雰囲気の居酒屋を、店ごと貸しきりにしているらしい。

店の中に入ると、スーツ姿の男性や女性が10人ほどいるのが見えた。

大岩が、その人たちに挨拶をしてから、新入生に向かって言う。



「この人たちが、今日のスポンサーのOBでーす!」



「よろしくー。OB会長の飯野(いいの)です。

まだ残業とかで遅れるやつもいるけど、所詮俺達はOBだから、今日は現役同士で交流を深めてください。」



OB会長の飯野は、雅典の1つ先輩で仲が良いらしい。雅典から話に聞いていた通り、人懐っこい感じの男性だった。





「ねえ、ミナちゃんの彼氏はどの人?」


美菜の隣にピタリとくっついた男達に聞こえないように、朱美がこっそりと尋ねた。

この男達が美菜狙いであることは、誰の目にも明らかだったからだ。



「まだいないよ。残業で遅れるって言ってたから途中で来ると思う。」





新入生と上級生がうまく均等になるように、席に着いた。

美菜と朱美が座ったテーブルには、やはり先ほどからずっと一緒にいる男子グループがやって来た。


この男達は、このサークルには珍しい少し派手なグループだ。

その上何故か、新入生の女の子4人と2年生の男4人という構成になってしまったため、美菜のテーブルだけがまるでコンパのような雰囲気になっていた。


美菜は他の上級生とも話をしてみたいとは思ったが、断るわけにもいかないので大人しくそこに留まった。





飲み物を注文するために、上級生が朱美にメニューを渡して聞く。


「飲み放題のメニューの中ならどれでもいいよ。何にする?」



朱美がメニューを見ながら首をかしげた。


「私飲んだことないから何がいいのかわからないや。」


「そうなんだ?じゃあなんか飲んでみなよ!チューハイなら飲みやすいんじゃない?」


その上級生に言われるまま、朱美は青りんごチューハイを選んだ。



「私は、ウーロン茶にする。」


美菜は朱美から回ってきたメニューを次の子に渡し、自分はろくに眺めることなく即答した。


「ミナちゃんも飲んだことないの?飲んでみなよ。」


ミーティングのときから一緒にいて、今も美菜の前に陣取った達哉(たつや)が勧めた。



「ううん。

そういうわけじゃないんだけど、私このあと車に乗る用事があるから飲めないの。」


「車持ってんの?すげーな。

てかもう免許取ったんだ。浪人?」


達哉の左側、朱美の正面に座った亮太(りょうた)が驚く。



「持ってないよ!ちょっと知り合いに借りるの。

免許は高校のときに取っちゃった。別に禁止されてなかったんだ。

…はやく決めないと、店員さんが注文待ってるよ?」


美菜は曖昧に話を流した。







乾杯を終えると、早速達哉が話し出した。


「とりあえず、全員の名前覚えようぜ!

じゃあ1年生から自己紹介。ミナちゃんとアケミンはもう覚えたから、その隣の子は?」



同じテーブルについたのは、佐喜子(さきこ)真希(まき)という女の子だった。


「じゃあ、さっちゃんとマッキーでよくない?」


亮太がそう言い、本人達が了承した。



「で、俺らはそっちからリョウ、タツヤ。で、俺がヒロで、こいつがコウジね。」


達哉の右側にいる弘樹(ひろき)が全員の名前を紹介し、最後に浩次(こうじ)が話し出した。


「うちのサークル、先輩後輩とか関係ないから、全員タメ口で大丈夫だよー。

俺も、コウジって呼び捨てで全然いいから!むしろそっちのがうれしいし!!」




男達の盛り上げがうまいせいか、緊張気味だった佐喜子と真希も、すぐに打ち解けた。



「さっちゃんとマッキーは出身どこなの?」


美菜と朱美は既にミーティングの際にその話をしていたので、残りの2人にそう聞いた亮太。



「群馬だよ。」


佐喜子がそう答えると、浩次がうれしそうに反応した。


「まじ?俺も群馬!どこ高?」


「北高っていうとこなんだけど…」


「俺東だよ!北高とか知り合いいるし。

えー、ヤマダカズキとか知ってる?学年違ったらわかんないか。しかも俺浪人だし。」



「あっ、知ってる!私、2浪なんだ。だから同じクラスだったよ。」


「まじでー?今度カズキに聞いてみるわ。」


その後も地元ネタで盛り上がりだした佐喜子と浩次。



それを横目に、美菜は残りのメンバーに向かい話し出した。


「すごい偶然だねー!」


「いいよなー。俺の地元が一緒の人なんて滅多にいないし。」


「ヒロくんは、どこ出身なの?」


「こいつ、佐渡島出身なんだよね。」


本人が答える前に、達哉がからかい口調で言った。

それに真希が答えた。


「それじゃあ、なかなか見つからないねー?」


当事者の弘樹以外の、全員が笑った。






次回に続きます。

ようやく雅典が登場です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ