有るのと無いの
二メートル四方の銀色をした装置がある。装置には様々なスイッチやダイヤル、何かを表示する為の画面や計器類が備え付けられていた。
しかし、問題はこの装置がいつ頃から存在して、一体何に使われる物で、誰が作った物なのかがわからない事にあった。
誰かが装置の前にやって来て、でたらめにスイッチを押した。装置は「ウィーン」ともっともらしい機械音を発し、複数ある計器類の針を小刻みに動かしたが、そもそも何に使われる装置なのかがわからないので、それで終わりである。
空気中の成分、はたまた、近くにいる人物の健康状態や心情を計る等々、装置の可能性ならいくらでも考えられたが、憶測や想像はそこで頭打ちとなり、やがて人々の関心は装置から薄れていった。
ある時、一人の若者が突然金槌で装置を破壊した。装置は修復するのも難しい程、見るも無惨に壊された。
だが、壊された装置に気を留める者は誰もいない。何の役に立つのかがわからないのであれば、無いのと一緒なのだ。