5.ハクリ・ラスタードと初テイム
今回もry(進みませんなぁ(遠い目))
「まだ戦えるか、少年?」
「・・・来い!!」
素手では勝てないと確信したのか、右手に握られた剣を前に出す。
律儀だなぁ、この子は。
「勝てる?」
「やれるだけやりますよ」
ニコッ
「まぶしい。・・・まあ、ハンデが有って丁度みたいな事
言ってたし、速攻潰す!!」
カッ!
「フッ!」
さてどうしよう。剣術や杖術は完全に専門外、対して相手はそこそこ
使い慣れた剣を使っている。・・・じゃあ、
「フン”!!」
ガキイィィ!!ガンッ!!!ガガンッ!!
杖を盾に使いながら接近しようとするが、中々どうして、片腕の割に
小回りの利いた良い剣だ。一合打ち合った結果出来た左頬のかすり傷に、
苦笑いが零れる。
「勝ち方に拘る事は無いから、安心してやられると良い」
「舐めるな!!」
ダッ!ドキャッ!
「君・・甘いな!!」
「――あぶっ!」
両手での攻撃は片手で防ぎきれるものでは無い。かと言って、寄るなら
こちらの間合いだ。本気で殴って体勢さえ崩せれば、続く
蹴り上げで吹っ飛ばせると思ったが、どうにか鳩尾への攻撃は
防いだか。勝てる。が、このまま終わらないよなあ、少年!
「ふぅ~・・・よし!」
ガキッ・・ギイィィン!
ああやって受け流されながら距離を取られて戦われるととても困る。
重心の使い方もなってないんだ。普通に戦われるととっっってもしんどい。
慣れられたらマジで勝ち目ないからなこの勝負・・っし。
「やらなきゃか、・行くぞ少年!」
「だから、名前で呼んでって・・ッ!!」
時間は出来た。手札の確認を終え、死ぬわけでも無いので、
一か八かの賭け事に出る。
《スキルの取得を確認:杖術》
「来な」
「ガッ!」
刃を受け流し、軸足に繰り出した杖を避けようとするあまり、
そこから派生した杖を支柱に加速する移動法にまで対処が回らず、
潜り込んだ側面に無理やり刃を割り込ませ、引き剥がそうと
押し出す。が、遅い。
タン!
「頭上に注意」
さらに回り込みながら空を覆う影に、ハクリは切り札を使用した。
「〈スラッシュ〉」
間合に関係なく飛んで行く斬撃、良い攻撃だ。惜しかった。
「残念、影だよ」
ガッ!・・ポン
声を餌に衣類の一部と杖を空に放り、その影と杖の位置を
誤認させたうえでの足払いと気道への攻撃、あと一歩、ほんの
数瞬待てば攻撃された時に対処出来た。焦って倒そうとし過ぎたのが
彼の敗因だ。と言うか、凄いな杖術、したい事を考えると体が勝手に動く。
・・・
「勝てる勝負だったのに!!」
「やはり心理戦は得手か、人相手ならば相応に戦えるではないか」
「視線がどうも、ね」
見て判断するのは悪い事ではない。んだが、やりたい事が視線で
全部わかっている敵なんぞ物の数に入らない。と言うのが今回の
総評だ。裏をかくなら全体を見続け、動作に誘いを入れれば
簡単な勝負だったのに、自分で難易度を上げてしまったと言う印象だった。
「ハクリ、今回の反省を対人戦闘における課題の一つとするのじゃ。
お主は・・、もう一度戦うかの?」
「じゃあ、はい。やります」
・・・
《チュートリアルクエストを再開します。現在の進行度3》
「有効打か、難しい事言うねぇ」
「グガッ!」
バキィ!
「あらら?」
《クエスト達成、ゴブリンを討伐しました》
呆気ない、と言うより・・・。
「さっきのとは別個体ですよねこいつ」
「はて、ステータスは同じ筈じゃが」
「さっきのを出してください。・・・その方が面白い」
「フハハハ!お主も狂人か。良かろう、戦ってみせい」
グッ!
(良い構えだ。リーチに差が有るなら地面スレスレの方が
却って攻撃しにくい。って、そこまで考えてはいないか)
「ググイ」
くいくい
「くぅ~、イラつかせるねぇ。中身人間なんじゃねえのお前?」
「グガッ!?・・・ガッ!!」
挑発に乗ると思っていたのだろう。出鼻を挫かれる形で始まった
戦闘だが、距離を詰めるのはちょっと無理だなぁ。
「もう寄らせね」
ガッ!パキィィ!!
横払いの一撃を避けるが、飛ばざるおえなかったその体勢で
振り下ろしは受け流せない。結果的に防ごうと半端に飛び出した
左手の小指が嫌な音を立てる。
「ッマジか!」
「グガイ!!」
バッ!ドスッッ!!
腕をクッションにしたとしても出来過ぎなほど衝撃を殺し切った
杖を掴み、左腕で引き寄せ、右手が肩を捉える。
「ッのやろ!」
ガンッッ!
「ッッ――!??」
続く顔面への打撃がレンを捉え、そのままもつれ合いになる。
「凄い、けど本当に下らない戦闘をしてる・・!」
「そう思うのはまだ未熟な証拠じゃよ」
もつれ合った数秒で肩口を嚙み切られたが、続く攻撃には
杖が応え、顎に受けた衝撃で口から血液が溢れ出す。舌噛んだか。
「クッ!」
ガキャッ、ドン!!ドン!!!
「グギャア!!?」
間合いを詰めようと一瞬焦ったゴブリンの側頭部に蹴りが飛び、
受け流そうとした瞬間、同時に振り下ろした杖がゴブリンの左足を捉えた。
「今度は折ったぞ・・、これで終わりかゴブリン!!!」
とは言ったが、ここまで来れば後はワンサイドだ。
倒れた生き物を殴る、殴る、殴る殴る。
「そこまで!!」
殴っ・・・
「っ・・はぁーーー。勝った!」
「グギギ・・ガア・・・・」
ドサッ
「何でこんなに疲れてるんだろこの人・・・」
「どちらもスキルを使わんかったのが大きいかのう。それに、どちらも
阿呆の様に自分で自分を縛っておった」
あ、そこバレてるんだ。ってかやっぱり向こうも加減してたか・・。
と言うかスキルは使い方分からなかったから加減じゃ無いんですよ・・・。
「だって、相手だけ加減して自分は全力とか、つまらないじゃないですか」
にしても、反射能力が高すぎて視界外からの一撃に弱い事が敗因になったが、
やっぱコイツ強過ぎ。
[現在のステータス:
Name:レン・コールマン LV0 Race.human
HP11/11 MP9/9 SP8
STR:12
END:8
AGI:10
INT:11
MIN:7
LUC:71
↓↓↓
Name.レン・コールマン LV.1(1/15) Race.human Total.1
HP11/12 MP14/14 SP10
exe:0/0
STR:13
END:11
AGI:13
INT:16
MIN:10
LUC:71 active 0/7 cost 0/12]
「ほほぅ・・・気に入ったか?」
「ぐあぃ」
「お主は預かりものなんじゃがなぁ・・、後で謝れば良いか。
どうじゃ、この子を一緒に連れて行く気はあるかの?」
「こいつを?」
「グアァ」
ふうむ、悪くはない。俺より戦闘向きな性質、反射神経から、レベルを
上げれば俺より強くなるのもほぼ確定している。しているんだが・・・。
「何故?」
「ついて行きたいと言っておる。それだけじゃな」
へぇ・・・良いね。
「では、テイムについての説明を下さい。提案を受け入れます」
「が~・・」
ゾクッッ!!
「お前、実は戦いたいだけだな?」
「ぐぐ~」
ある程度言葉も理解できると、これは・・・。外が怖いな。
「では説明を始めるぞ、一度しか言わんから良く聞いていなさい」
「えー、普通に何度か聞き返しますよ?」
「冗談じゃ、要点だけ伝えるので、後から聞きなさい」
全く分からないぞその冗談!?
・・・
《名前を設定して〈相棒〉登録を行ってください》
「登録するかは自由じゃ、他にお気に入りが出来ても、第二登録までは
時間が掛かるじゃろうからな」
大体の説明が終わり、登録したモンスターが死んでも休眠状態になり、
一定時間で復活する相棒登録の方法を教えてもらいながら、決定の1行程前で
一度注意を促される。と言っても、正直こいつで十分だと思うんだよなぁ。
「成程、えー、名前は・・・〈ノワール〉で良いか?」
「ぐが」
こくり
笑顔がどす黒いからノワール、ネーミングセンス無いなぁ俺。
受け入れてくれて良かった。ほかの名前思い付くまで時間掛かるし、
正味面倒臭い。
「じゃま、宜しくな相棒」
《相棒登録を完了、ノワールを固定対象として認識しました。
現在の登録数 1/1》
「で、お前のステータスは~・・・強くね??」
[ノワールのステータス(制限無し):
Name.ノワール LV4 (4/5) Race.リトル・ゴブリン TotalLV.4
HP35/35 MP5/5 SP30
exe:17/75
装備中アイテム:朽ちた棍棒,ボロボロの腰掛け
STR:38+2
END:20
AGI:24
INT:11
MIN:16
LUC:12
cost 7]
何これ既に超強い・・・。
「めっちゃ加減されてたのかさっき・・」
「そんな訳が無かろう。あの魔法陣に組み込んだ術式で
レベル差を±0にしただけじゃ。紛れもなくどちらも本気よ」
方法そんな事を、だから力の制限とか言ってたのか。と言うか待て。
「お前ダメージ受けてなかったの?」
「ググア(あの程度ではダメージになりません)」
「お!??」
「使役の効果じゃな。ある程度強くなれば、意思の疎通は
言葉にせずとも出来るようになる。精進しなさい」
と、もう数分の会話の後、少し時間を掛けすぎたと急ぎ足で
ギルドへ戻る克己であった。
・・・
「先程振りです、ギルド登録の受付はどちらでしょう」
「あ、はい、先程と同じ場所で大丈夫です。が、今は少々・・・」
「早く受付してくれよ!!」
入口右に立つ、先程会った青年に話し掛けるが、少々困ったお客さんが来たようだ。
当惑と困ったと言う感じの声がその人に向けられる。
「もう一度ご用件を伺っても宜しいで「だーかーら!戦士の推薦状と
クエストの受注だっての。話聞けよ!!」」
「申し訳ございません、そのクエストの難度についてお話をしたいのですが」
受付嬢であるクレアの声からして、この問答は既に数分
繰り返されているのだろう。何とも無駄な話だ。
「何やっているのでしょうか?」
「あんたも言ってやってくれ、俺は別に大丈夫なんだって!」
「仔細を聞いても宜しいでしょうか?」
「・・・はい、ご理解いただければ幸いです」
話を聞く限り、ギルドへの登録とクエストの受注は可能らしいのだが、
その難易度が高いため、現在のランクでは受けなれない。と言う内容だった。
普通に迷惑客かこいつ。
「難度の低いクエストを受けるか、ランクを上げてから受注していただければ・・・」
「だから大丈夫だって!」
「はぁ・・・あんたは馬鹿なのか?」
ガシッ!
「んだとテメエ?」
「信用が無いからクエストは受けられないと言われている。で、大丈夫が
担保かよ。ふざけるなと言われないのが不思議だと思わないか?」
ランクが信用度なのは、実績と言う形でそれなりに仕事が出来ると
分かるからだ。言葉が通じるなら押し切れると考えている辺り、
ソレが通用するゲームをしていたのだろう。だが今回は違う。
「押し切れると考えてるならそれは間違いだ。今すぐ手を放して
所定の登録を済ませてください。でなければ」
ギッッ!!
「此処にいる数名が貴方を追い出します」
此処は良い職場なのだろう。ちゃんと脅しに数名が呼応してくれる。
「分かった・・チッ、前の所じゃあ行けたんだけどなぁ・・・」
あー、β版登録者か。じゃあ推薦状何で必要なんだろ?
「一応登録と推薦状は書きましたので、このランクであれば最短で一日程
クエストを達成していただければ到達できるかと存じます」
「あ、はい、ありがとうございます・・・」
「なんだ、お礼言えるのか」
とぼとぼと歩き去る男を見送り、ぽつりと呟いた声に頷く動きが
ちらほら見える。暇かよおっさん共。さて・・。
「大丈夫でした・・か?」
「助かりました~」
「雰囲気大分違いますね。さっきと違って落ち着いてる感じがします」
元々端正な顔立ちとそこそこ大きな背丈、、何より座った状態でも分かる
胸部に視線がどうしても向かう。あーもう、男ってやつは(←しょうがないけど
面倒臭がってる奴)。
「そうです?あんまり自覚は無いんですけど」
「?・・・気のせいだったかも知れません」
なあんか対面すると子供っぽいんだよなぁ。さっきの大人感!は何処に行ったやら。
「取りあえず本登録お願いします!」
「えー、落ち着いてるって言ったじゃないですかー!?・・はい、登録はもう
完了しています。リジーさんからお話も聞いていますので、諸経費の
10Tだけお支払い下さい!ギルド発行の登録証を引き換えでお渡しします」
「払い方が分かりません!」
「あー・・・なるほど、では、手順を説明いたします。登録証で全て可能になるので、
次からは登録証を所定の場所でかざせば大丈夫です!!」
・・・・説明中
ほんと、滅茶苦茶優秀っぽいのに対面した時のポンコツ感すごいなこの人。
地味に見えないところでお礼してる男の子とか評価点めっちゃ高いのに
これとかマジですげえ。
「説明は以上となりますが、他にお聞きしたい事などはありますか?」
「大丈夫だと思います。・・・えと、一つ聞きたいんですが」
「はい?別に良いですけど・・」
「入口から右・・・今、入口から入って来た人に案内してる男の子なんですが、
ご親族か何かでしょうか??」
「良くわかりますね!!あんまり似てないってよく言われるのに!!!」
うわ、テンション高っ。
「一応なんですが、さっきあの人お辞儀してるの見えてました?」
「え、そうなんだ。良く分かりますね!全然気づきませんでした」
あ、やっぱポンコツだこの人・・。
「普通に厄介な客を撃退しただけと考えるなら、礼をされるのは不自然
なんじゃないかなぁと思いまして。対面でされるならともかく」
「へぇ~、良く気付けますね。真後ろだったのに」
「そりゃあ、彼の事気に入ってますから」
悪印象抱いてる奴にわざわざ話しかける訳がないだろう。
「あの子はマグナス、私はクレアって呼んでください!多分名前呼びの方が
喜ぶので!」
「努力します。クレアさん」
「・・・さん・・・っ!!」
何故にそこで喜ぶ・・・。まあ良いや。
「一応、持ってきたクエストに不備が無いか、確認と受注をお願いします」
「了承いたしました。少々お待ちください」
素が出なければ美人で出来る人感凄いのになぁ・・・。
・・・・街の外へ移動
「割と遠いわアホ!!」
「書類に不備は無し、通って良い・・・が、大丈夫かあんた?」
「あい、でも城門まで10分は遠いです」
「あー、ギルドから来たのか。お前達ってそんなに時間無いのか?」
「むしろあるから問題なんですよ。この場合」
「そう・・・なのか?良く分からんが」
コクーン型が一応でもまだ販売されている理由は、実の所、時間が
関係している。完全自動で生命活動を可能とするコクーン型が
好まれる理由として、こいつの中に入っている間、
現実とゲームの間に生じる時間が違うと言うのがある。簡単に言えば時間が増えるのだ。
しかも、何倍にも。
「寿命がが5倍に膨れ上がったらどうなるのか、とか考えた事ありますか?」
「・・・意味が分からん。だって、そんな事あり得ないだろ」
「もしもの話です」
「・・・・俺は、あんまり長く生きたいとは思わんな。長くなれば良いって
ものでもないだろうし。あんたはどうなんだ?」
「そう、ですね・・・むしろ、そうなれば素晴らしい、
と思います。実際には無理ですが」
だが、そう言う考え方も分かる。実際には娯楽を楽しむ時間が5倍に増えると
したら。と言う質問も、リアルを生きる時間が5倍に膨れ上がる。と言う
考え方ならまあ、一部を除いて辛い時間が増えるだけと考えるのも理解できる。
俺はそうでもないが。
「そう・・か、・・・・なら大切にしなさい。その一瞬一瞬をね」
ああ、この人は・・・。
「失うばかりが人生じゃないですよ。何処かのおねえさんからの
引用ですけど・・・いつだって、プランBはあるものです」
失ったのが誰なのかは分からない。けれど、俺はその感情を知っている
気がする。
「・・・ネズミ駆除の仕事は受けるな」
「え・・・それはどう言う・・・」
「交代だぁ。早く昼飯行っちまいな。お!お客さんかい?」
「・・いや、今出る所だ。それではこれで」
タッタッ・・・
(何だったんだ今の?)
ネズミ駆除、確かちょっとだけランクの高かった依頼の筈だが、
・・また今度聞いてみるか。
「早く通りな!次も・・・居ないけど来たら邪魔になっちゃうかもだからね!!」
「あ、はーい」
・・・街の外・緑の平原
「緑臭い・・」
夏の臭いとでも言うべきか、草の臭いがすっごくキツイ。が、
見渡す限りモンスターが一切居ない。・・・と言う訳でもないらしい。
「〈召喚黒〉」
ザッ!
「グガ(命令を)」
指定した言葉を用いて石の中からモンスターを召喚する。それが
このゲームでのテイマーと言う職業らしい。が、初めて召喚したのに
めっちゃくちゃ自然に命令聞くなこいつ・・。
「対象3名、おそらくPK、人間2名が応戦中、多分旗色悪い。助けるぞ」
「が(分かりました)」
ダンッ!!
「はやっ!!」
普通に二輪自走車並みのスピード出てるなこれ。追い付けん・・・。
「ッグギギ!(誰かが参戦しました!)」
「味方か?」
「グガア、グ・・ガガ!!(不明、ですが・・・敵です!!)」
「ぶっ殺せ」
ニイィ!
「が(了解)」
「・・・いや、ごめん撤回、多分大丈夫だわアレ」
「グ?(何故でしょう?)」
「あの動き方は味方だろ多分、しかもめっちゃ強い」
・・・Side???
「良いなぁお前等はさぁ、一緒にやるやつがいてよぅ・・・」
「誰です・・・ッ!!?」
ネットリした声を出す男に、その少年は狼狽し、切れた息を
どうにか整えようとして、後ろのゴブリンから攻撃を受ける。
「充実してる奴って、叩き潰して立ち直れなくしたいよなぁ、普通」
「ンな訳ねえだろぶっ殺すぞクソが!!」
ガンッッ!!!
「ッ!?」
「俺の目の前で当り前のようにPKを許す訳がねえんだよなぁ。なあ!!」
「早すぎるヨ君!!」
「追い付けねえお前が悪りい!」
「お前・・・ロプ――ッ!?」
ガガン!!バキィ!!!
「うるせえ、黙って死んでろ!!」
邪魔なハエを叩き潰す様に、武器すら持たない男の拳が
鉄の鎧を粉々に砕き、背後から迫るゴブリンの側頭部に蹴りを叩き込む。
「ッ―――・・・」
「二発喰らって死なねえか、まあまあな耐久力だなあ!!」
「待っ――」
「はぁ・・・で、お前敵?」
バキャッッ!!
じゃあもう良いや。と、抜刀した刃が綺麗な円を描き、気絶したフリで
生きながらえようともがいた男の首を切り落とす。あまりの事態に動けずに
2人組にやっとノワールが追い付き、質問にはゴブリンの脳天への
打撃で応える。
「そうか、じゃあ任せて良いか?」
「グガグ(応答致しかねます)」
「・・通じるわきゃねえか、お前の主人は?」
「ハッハッ・・!お前速すぎだろ!!?」
「こいつか、ヒョロヒョロの子供かよ。・・じゃあ無理だな」
〈ステータス看破〉での一覧によると、こいつはレベル1、小鬼が4だった。
二人組のが高いし、足手まといは一人が限界だ。
「ア”?(いま、侮ったのか?)」
グッ・・・
「・・・やんのかよ」
「いいや、戦うつもりはない。どしたノワール?」
割り込んだ男も困惑してる、か。表情に出したつもりは無いが、
少し・・・ミスった。
「・・・ぐが(なんでも)」
「そうかよ。チッ、ここから西には向かうな。強い奴が何故か
複数体湧いてる。お前等2人でも死ぬぞ」
「・・がう(感謝致します)」
「ありがとう。一応知り合いと待ち合わせ中なので、レイテ高原って
北であってます?そこに行きたいんだけど」
「北で合ってる・・が、あの高原は西の森に近い。出来れば早めに
移動しとけ。多分、その友達でも無理なレベルの敵が出る」
「そうします。本当にありがとう!!」
そう素直に感謝されるのは・・とてもむず痒い。別に、
話を拡散させる打算も込みで教えているんだ。あんまり嬉しそうな
顔をしてくれるんじゃねえよ・・。
「・・後で時間が有ったらうちに寄りな。初心者なら戦い方の指導もある。
ロプト・ネガロだ」
パシッ
「・・ども、レン・コールマンです!じゃ、時間無さそうなんで
行きます!今日ダメでも絶対後日行くので!!」
どうにも明る過ぎるなあ。表情に裏表の無い奴は弱者が多いもんだが、
こいつは何か・・・危ない感じがする。
「こっちはガチ初心者用の訓練場と狩場だ。ついてこい。こねえなら
もう助けねえ」
「あ・・はい!!」
「待ってよー!」
・・・Sideレン 場所:レイテ高原
「あい~、追い付いたぞ」
「やっと来ましたねー!普通に一時間位掛かってるじゃないですか~」
「面目ない。めっちゃ戦闘してた」
「・・の割にレベルが2なんですが、と言うかそちらのゴブリンさんは?」
「テイムしました、この子相棒です」
ガクッ・・
「て、テイマーって・・・ハズレじゃないですか!」
それは酷くないか?別に良いじゃないかよ。一人で色々出来そうで便利だし。
「い、一応聞いておきたいんですけど、ソロの予定だったりしてます?」
「あー、多分」
「じゃ、まあ良いですか。ちゃっちゃとレベル上げちゃいましょう!」
「あー、それなんだが」
オォォン・・・
「ん、なんだ今の鳴き声、遠くからだが良く響く・・・どした?」
「・・・いや、そんな訳無いか」
「どうしたの?」
「いえ、多分気のせ」
アオーン
「ッ逃げますよ、これは手に負えない」
あらら、忠告むなしく件の敵のお出ましか。