約束のデート(魔王:イリアル編)
僕は今、グランデル王国の王宮、門の前に空を見ながら立っていた。
昨日の勝敗はイリアルの勝ちで今日はイリアルとのデートになった。
すると
「悠真ー!すまない...またせてしまったな!」
と言いながら後ろからイリアルが駆け足で僕に近付いてくる足音が聞こえる。
「いや...大丈夫!」
僕は緊張気味にそう言ってイリアルの方を向いた。
「...」
振り向いた瞬間、僕はイリアルの格好に目を奪われ、思わず黙り込んでしまった。
僕の目の前には、昨日の際どい鎧とは打って変わり。黒の膝丈まであるカーディガンに中は赤のVネックTシャツで、黒の長ズボンをはき、腰には少し大きめのベルトを着けて、靴は黒の革靴ブーツ、そんなヘソ出しファッションで大人の格好をしたイリアスがそこには立っていた。
「どうだ?可笑しくはないか?」
イリアルは顔を赤くして僕にそう言う。
「あっ...いや...全然!凄い似合ってると思う...よ?」
僕は言葉を詰まらせながらイリアスに言葉を返す。
「そうか!良かった...」
そう言いながらイリアスはホッと胸をなで下ろした。
「じゃっ...じゃあ...デッ...デート、はじ...始めようか!」
生まれてこの方、女の子と遊んだこともなければ無論デートなんてしたこともない僕は、ガッチガチに緊張し、手と足が一緒に出る。
「悠真?」
「はっはい!」
僕は緊張状態でイリアスから声をかけられ思わず敬語で返事をしてしまった。
すると
(フワァ!)
と後ろからイリアスが抱き付いてきた。
「緊張しすぎだ!もう少し肩の力を抜け!今日は記念すべき初デートなんだ!楽しまないとそんだろ?」
そう言ってイリアルはギュッと腕に少しの力を入れ自分の胸を僕の背中に押し当ててくる。
「ちょっ!そうされると余計に...」
(緊張する)と言おうとした瞬間、僕の背中から(ドクドクドクドク)と凄い速さで心臓が鳴っているのに気がついた。
(この鼓動は...イリアルの心臓?イリアルも緊張してるのか?自分も緊張しているのに、僕をなだめるために...?)
僕は深呼吸をして、心を落ち着かせる。
「イリアル、ありがとう...かなり緊張がほぐれた!そうだね!楽しまないといけないよな、せっかくのデートだからな!」
僕の肩に回っているイリアルの腕にそっと手をやり、僕はトントンと軽く叩いた。
「そうだぞ悠真!今日は私がこのグランデル王国のおすすめスポットに連れて行ってやるのだ!今日一日めいいっぱい楽しもう!」
イリアルは僕から離れて目の前に立ち、笑顔でそう言うと今度は僕の隣に立ち、僕の腕に自分の腕絡めてグイグイと引っ張る。
(イリアルの性格は強引で子どもみたいにはしゃぐ所がかなりある、だけど、それとは裏腹に、相手の気持ちを即座に察して相手を重んじてくれる、お姉さんタイプでかなり優しい一面ももっているんだな!)
僕は腕を引っ張るイリアルを見ながらそう思った。
そうして、僕らのデートは始まった。
僕らがまず最初に行ったのはイリアルお得意先の洋服屋だった!なぜ?洋服屋かと言うと、僕がユリーシャから買って貰って着ている服装では少し気に入らないらしい。
そこで
「私に任せろ!」
とイリアルに言われ服屋にやってきた。
「ここは、私の行きつけなのだ!沢山の種類の服があるからな!まぁ入ろうか!」
イリアルはそう言い店のドアを開く。
(カランカラン!)
ドアに下げられた鐘がなる。
「いらっしゃいませ!」
そう言いながら中から女性が出てきた。
「エルグ!」
イリアルはそう言いながらエルグと呼ばれた女性のもとへ近づいていく。
「あら?グランデル様ではないですか!今日はどういったご用ですか?」
エルグはこちらを見て笑顔で言う。
「あー...今日は私じゃなくて、この者に服を仕立ててくれないか?」
イリアルは僕を見ながらエルグに言う。
「グランデル様...この方は?あっ!もしかして?噂の婿方ですか?」
エルグはそう言いながら僕に近付いてきてふむふむと僕の回りをぐるりと回りながら頭から足先まで見る。
「エルグ?噂のとは、なんだ?」
「知らないのですか?今両国中の噂になっているのですよ?グランデル王国の魔王グランデル様とアルデルン王国の勇者にして姫のユリーシャ様がある一人の殿方を気に入り婿方として、取り合いになって激しいバトルをしておられると言う話を聞きましたよ?」
「なんだと?確かに、私とユリーシャが悠真を取り合っているのは事実無根だ!だが、激しいバトルはしていない...はず...だよな?悠真...」
「えっ?えっと...」
イリアルから突然話をふられた僕は戸惑いながら言葉を詰まらせる。
「ん?悠真?」
「あっ!うん、料理バトル以外は何もなかった!」
「やっぱり、バトルしているのではないですかー!」
エルグはニヤニヤしながらイリアルに言う。
「あっ...あれはだな...ゆっ悠真が、お腹をグルグル言わせてて、原因が私にあったからその償いとして、料理を作ると言ったのだが、ユリーシャが自分も作ると言って聞かなくてだな...そしたら、悠真が両方の料理を食べるからっと言ってくれて、その料理を悠真は全て残さず食べてくれた!それは、格好良かったぞ!」
イリアルの説明は最終的に僕の惚気になっているような気がした。
「惚気てますね!グランデル様...そんなに、凛々しく格好良かったんですね!悠真様は...やりますねー!二つの王国の勇者(姫)と魔王に迫られる悠真様!どちらを嫁候補に?いいネタになりそうですね!」
エルグはいっそうニヤニヤしながら僕とイリアルを見ながら言った。
「エルグ...あまり冷やかすな!お喋りはそこまでだ、悠真に早く服を仕立ててくれないか?せっかくのデートが終わってしまう!」
イリアルが少し不機嫌にエルグに言う。
「あー!今日はデートだったんですね?そう言えばユリーシャ様は?この国に来ているとお聞きしましたが...」
エルグが顔を傾げながらイリアルに聞く。
「あー、あいつは王宮で留守番中だ!今回のデートでは、相手の邪魔をしないと決めたからな!」
「そうでしたか!」
エルグは納得したようで首をウンウンと縦に振る。
(えっ?今ので納得したのか?)
僕はそう思いはしたが、今突っ込むとまた話が長くなりそうなので言わないことにした。
「じゃあ、悠真の服頼んだぞ!悠真!エルグはあー見えてかなりの職人だ!私は少し出かけてくる。数十分で戻るがいいか?」
「えっ?あ...うん!分かった!」
僕は動揺しながらも了承した。
「じゃあ、エルグ頼んだぞ!」
イリアルはそう言うと店の外へと姿を消した。
店にはエルグと僕の二人きりになる。
「さて、悠真様!早速服をお作りしましょう!」
エルグはさっきまでのおちゃらけた顔から真剣な職人顔になり、僕を別室へと案内する。
「悠真様は、今、お幾つなのですか?」
僕の寸法を測りながらエルグが聞く。
「16になったばかりですが....グランデル様とあまり変わらないのですね?悠真様は一体何者なのですか?」
「えっ?ただの人間ですよ?」
「嘘は感心しませんよ?」
「え?」
噓だと言われ僕は少し挙動不審になる。
「臭いでわかるのです!貴方様はこの世界の者ではない、違う世界から来たんじゃありませんか?」
「えっと...えっ...と」
僕はさらに挙動不審になり言葉が出てこない。
(普通に話せば良いのにあの時のことを何で隠すんだ?)
僕自身もそう思いはするが、中々言葉が出てこない。
僕が黙っていると
「話したくないのでしたら無理には聞きません。ただし、このままだと貴方様は殺されるかもしれませんよ?」
「えっ?」
僕は殺されるかもしれませんよ?と言うエルグの言葉に恐怖し、一瞬固まったがすぐに、
「どうして...僕は誰に殺されるの?」
とエルグに恐る恐る聞く。
「悠真様がこの世界の住民だったら、悠真様は殺されることはないだろう。ただ、貴方様は私たちの世界とは別世界から来た臭いがする、そこで不審人物にどこから来たのかと聞くが一向に答えようとしない。グランデル様は大丈夫だとかなり信用されておりますので私は貴方様を信用しますが、この世界には、グランデル様やユリーシャ様が言っても貴方様を信用しない人が沢山いるのです。だから、貴方様はこの世界中から警戒されて当たり前なのです!」
エルグは鋭いまなざしで僕を見る。
「確かにそう言われると殺される事は納得いく...でも、アルデルン王国の東、カーペルでは、皆から祝福を受けた、無論警戒なんてされていなかった!」
僕はエルグに言う。
「それは、貴方様一人で行かれたときですか?」
エルグは僕を見る。
「いや...ユリーシャと行った時だ...」
僕は正直に言う。
「それなら、歓迎されても無理ないです!カーペルの住民ならば特に...」
「特になんだ?」
「いえ...兎に角、警戒されていることは頭に入れておいて下さい!少し長話してしまいましたね?残りの寸法を測りますので、こちらに来て下さい!」
エルグはそう言いながら寸法測りに戻る。
寸法を測り終えたエルグは
「では、悠真様、早速洋服を仕立てますので、店の中に掛けてお待ち下さい!」
と言って店の奥に消えていった。
僕はイスに腰掛けてふと時計に目をやり驚いた。時計を見るとイリアルが店から出て、まだ三十分の時間しか経っていない。
僕はイスに腰掛けながら、エルグが言った殺されるかも?と言う、その言葉が僕の頭をグルグルと回っていた。
(逃げ出したい...)
正直にそう思い、不安に僕がかられているときだった。
(カランカラン!)
店のドアが開く音がする。
「悠真!すまない、遅くなった!服は出来たか?」
ドアを開けそう言いながら店に入ってきたのはイリアルだった。
イリアルの顔を見た瞬間、僕はさっきまでの不安が消え安堵の表情を浮かべ、イリアルを抱き寄せた。
「どっ...どうしたのだ、悠真?何かあったのか?」
その質問に僕は首を振る。
「何もなかった、訳がなかろう!エルグに何かされたのか?」
僕はイリアルのお腹に顔をうずくめながら唯々(ギュッ)とイリアルを抱きしめた。
僕の反応が可笑しいと思ったイリアルはデカイ声でエルグを呼ぶ。
「エルグ!エルグ!」
「帰ってこられたのですね?グランデル様!もう少しで、完成しますので...」
エルグは何事もなかった顔で店の奥から顔を出した。
「悠真に何をした!」
僕の腕を放し、イリアルはエルグの元に凄い剣幕で近づく。
「グランデル様怖いですよ?悠真様とは少しお話をしながら寸法を測っていただけですよ?」
エルグは後ずさりをしながらイリアルにそう話す。
「なんの話をした!」
イリアルは顔を変えずにエルグに掴みかかる。
「私はただ、悠真様がどこから来たのかを聞いただけですよ?そして、悠真様を警戒されている方も沢山いるから殺されないようにと話していたんですよ?」
「なっ!なんで、その話をした!」
(バシッ!)
イリアルは激怒しながらエルグに言う。
物凄い音がして僕は顔を上げ二人を見る。
「悠真を傷つけるな!」
そう言い泣きながらエルグを引っぱたいたイリアルがそこにいた。
「悠真は心に深く傷を負っている!臭いで分かる、先ほどまで少しの傷だったのに、今は傷が広がっている。頼むからこれ以上悠真を傷つけないで欲しい!私は悠真の笑顔が好きなのだ!悲しむ顔も傷付いた臭いも見たり嗅いだりしたくないのだ!私が初めて好きになった人だからな!だから、私は悠真自身が話す気になるまで待つ!私は悠真に寄り添い隣を歩いて行きたいから!」
そう言い、キリリとたたずむイリアルの姿は僕の目に焼き付いて離れなかった。
「やれやれ!グランデル様は本当に悠真様が好きなんですね?」
エルグはそんなイリアルの姿を見て、柔らかな笑顔で僕を見た。
「先ほどは大変無礼なことをいい、申し訳ありませんでした!お詫びと言ってはなんですが、今回の洋服のお支払いは結構です!それと、私がリーダーを務めるグランデル様親衛隊は今日からグランデル様&悠真様親衛隊として、グランデル王国にいる以上、お二人をお守りします!」
エルグはそう言うと、深々と僕に頭を下げてきた。
「え?」
僕は驚きの顔を見せていると
「こう見えて、グランデル様直属の親衛隊リーダーをしています!」
とエルグは言った。
「さて、私は服の仕上げと行きますね!」
エルグはそう言うと、奥の作業部屋に入っていった。
エルグが作業部屋に入っていったのを確信し
「悠真...さっきも言ったが、私は悠真の歩幅に合わせて隣を歩きたい!でも、歩幅を合わせるにはまず、隣に立たないといけない、だから、待っている、悠真が私の隣に立ってくれるのを悠真の世界のことを話すのを待っているから!」
イリアルは真剣な顔で僕を見てそう言った。
僕の中の小さな僕に色がついた瞬間だった!
それから五分...
「さっ!悠真様、出来ましたよ!試着室で着てみて下さい。」
僕はエルグから洋服を渡され試着室に入れられる。
僕は、渡された服に着替え試着室から出る。
「悠真...なのか?」
目の前にイリアルが立っていて僕の服装を見て固まっていた。
僕がエルグから渡された服、上は白いシャツに赤のジャケット、その上から黒の腰下まであるカーディガンを着ていて、下は黒のズボンにワンポイントアクセントがついてベルトをまいており、靴は黒の革靴といった格好だった。
「変じゃないかな?」
僕はイリアルに聞く。
(ブンブン)
と首を振りながら
「すごく似合っているぞ!」
とイリアルは言った。
「ありがとう!」
僕は照れながらイリアルに言う。
「エルグ、世話になったな!」
「いえ!グランデル様、悠真様、また洋服のオルートにお越し下さい!」
そう言い、エルグは僕に近づき
「大変な方々に好かれましたね?悠真様!」
と小さな声で僕の耳元に囁いた。
「ありがとうございました!」
エルグは僕とイリアルに一例して手を振る。
僕たちは手を振るエルグに手を振り替えし、エルグの店を後にした。
「もう十二時か!早いものだな!デートを初めてからもう、三時間がたった!」
僕の腕に手を絡ませて町を歩くイリアルが言う。
「そうだね!」
「悠真、お腹すかないか?」
イリアルがお腹を擦りながら言う。
「確かに...」
「じゃあ、あそこに公園があるのだが、そこで、休憩としよう!」
イリアルは近くの公園に行き、持っていたバックから敷物を出してひいきバックの中から重箱に入った弁当を広げた。
王宮を出るときに荷物が重そうだったから持とうとしたら、イリアルから断固拒否され、ずっとイリアルが持っていたバック、中には何が入っているのか気になっていた僕はようやく謎が解けてモヤモヤが消えた。
「弁当だったのか...イリアルが作ったのか?」
「あぁ!昨日、私の料理を美味しそうに食べてくれたからまたその顔が見たくてな!」
イリアルは笑顔で僕に言う。
「重かっただろうに...。なんか、ごめんな!」
僕はイリアルに謝った。
「私がしたくてやったのだ!さぁ、召し上がれ!」
イリアルは重箱を開ける。
相変わらず不気味な色をしている。
「いただきます!」
僕はそう言いながら食べる。
「やっぱり、美味しいなー!イリアルの料理は個性があっていいな!」
僕はほめながらも箸が進んでいく。イリアルも一緒に過ごしながら、昼の優雅な時間は過ぎていった。
僕はお腹いっぱい食べて少し横になった。
「そう言えば、この国は魔王の国なんだよね?」
僕はイリアルを見て言う。
「あぁそうだが?」
イリアルは(ん?)っとした表情を見せ僕の質問に答える。
「外側は想像通りの魔界みたいだけど、国に入ったらアルデルン王国と変わりがない明るさにビックリしたんだ!」
「あー!外のあれは、十年前に巨大なドラゴン、ランクルスが突如暴れてこの国の三分の一を焼き尽くして出来たとこなのだ!...本来あそこには緑が生い茂り、川が流れていたのに...私たちはアルデルン王国と同じような生活をしていたのに突如その生活を奪われたのだ!幸い前魔王(母様)が即座に国に結界を張りランクルスを魔法で眠らせ被害は少なくすんだ...。今まで一度も暴れた事のないランクルスが突如暴れた!今、母様達が調査をしているが、グランデル王国の大半とアルデルン王国の一部を除いてはランクルスが暴れたとき、この世界の者ではない臭いがしたと誰かが言いだし、異世界人の仕業だと言う噂が瞬時に広まったのだ!」
イリアルは淡々と話をする。
「だから、僕が警戒されるわけか...」
僕がそう言うとイリアルはコクリと頷いた。
「でも、カーペルで僕が歓迎されたのはなぜ?」
「あー!カーペルはユリーシャ信者が住んでいる街なのだよ!だから、ユリーシャがこの人を信用します と言うとカーペルの人もまたその人を歓迎する。と言うしくみなんだ!」
「なるほど!」
僕はイリアルの言っていることに納得すると心地良い、そよ風が吹き目を閉じる。
「んっ...」
いつの間に寝てしまったのか、僕は薄目を開ける。
目の前にはイリアルの顔がある。僕はいつの間にかイリアルの股に頭をやり膝枕状態になっていた。
「えっ?イリアル?」
僕はイリアルの名前を呼ぶ。
「んっ!悠真わ目が覚めたのか?よく寝ていたな!」
イリアルは僕を見てそう言う。
「あっ!ごめん!足痺れてない?」
僕はいそいでイリアルの股から起き上がる。
「大丈夫だ!そろそろ帰るか?」
見渡せば辺りは夕暮れ時で太陽が沈んでいっているとこだった!
「かなり寝ちゃったんだ...イリアルごめんな!せっかくのデートだったのに...」
「いや、こんなに一日をゆっくり過ごしたのは久しぶりだったからたのしかったぞ!強いて言うならば、これから私の穴場スポットに行きたいのだけれど、もう少し付き合ってくれるか?」
イリアルはそう言ってスクリと立っち、シートを片付け王宮からドラゴンを二匹呼ぶ。
一匹の背中には、シートなど荷物を載せ王宮に飛んで貰う。
もう一匹には、僕とイリアルが乗り、ドラゴンは空高く飛んだ。
「何処にいくの?」
僕は後ろからイリアルに聞く。
「着いてからの楽しみだ!」
イリアルはただそう言うばかりだった。
夕陽が沈み月明かりがグランデル王国を照らす。
ドラゴンはある森の中に下りていった。
「ここは?」
僕はイリアルに聞く。
「着いてこい!」
イリアルは僕の腕を引き森の奥に連れて行く。
「よし、ここだな!」
イリアルはボソリとそう言う。
「何があるんだ?」
僕は首を傾げながらイリアルに聞く。
するとイリアルがいきなり僕に近付いてきてキスをする。
「んっ...んっんぐ!」
「んっ...んっんはぁ!」
あの時、ユリーシャとした時みたいな濃厚なキス。
「プファッ!」
僕は息が出来なくなり、思わず口を放し息継ぎをする。すると、またイリアルが唇を近づけてきてキスをする。
「んっ...いっ...イリ...んっ...」
あまりの激しさに僕は力が入らなくなる。
ようやく、唇が離れ僕は深く息を吸う。
「はぁはぁイリアル?なんのつもりなんだ?」
僕は息を整えながらイリアルを見る。
「んな!」
向いた先にいたイリアルは服を半分脱いでおり、トロリとした目で僕に覆い被さり
「はぁはぁ」
と息を荒げていた。
「イリアル?ちょっと待って!僕らは友達でそう言うことをする関係じゃ...」
僕は必死にイリアルに言うがイリアルは僕の体に自分の胸を押しつけてきた...僕は我慢の限界でイリアルを押し返し地面に押しつけた、その時だった、雲に隠れていた月がいきなり顔を出し、辺りを照らす。
イリアルの上半身が月の明かりではっきり見えた。僕はその綺麗さに思わず見とれてしまったが、自我を保ち頭をブンブンと振る。頭を振ったとき、何かが視界に入った!
イリアルは僕の顔を掴みまたキスをしようとする。
「イリアル?ストープ!」
僕はそう言いながらイリアルの手を退かし辺りを見て驚愕する。
あたり一面、墓地で墓が建ち並んでいたからだ!
「イリアル!ここはなんなんだ?てか、これは、墓地でして良い行為ではないぞ!」
僕がそう言うとイリアルは首を傾げて僕を見る。
「グランデル王国では、デートの最後はここに来て身を一つにするってなっているが?」
「いやいや!可笑しいよ!墓地で身を一つにって、法律変えた方がいい!絶対!そもそも、両思いじゃない奴がこんな事したらいけないよ!」
僕は早口気味にイリアルに言う。
「駄目なのか?」
「駄目!」
イリアルはうつろな目で僕を見てくるが、僕は目をそらしながら着ていたカーディガンをイリアルに着せ服を着るように促す。
「ここに来れば、99%恋が叶うって話だったのだが...噂というものは、当てにならんな...」
イリアルはそう言いながら渋々服を着始めた。
(いや、ハッキリ言ってさっきのはヤバかった!墓が見えなかったら、流されて最後まで行くとこだった。)
僕はそう思いながら、(ドクドクドク)と早く脈打つ心臓を落ち着かせようと深呼吸をする。
「服を着たぞ!悠真?デートの最後に一つだけ私のお願いを聞いてくれないか?」
「なんだ?」
イリアルの質問に答えながら振り向く。
「もう一度キスをさせて欲しい!」
「えっ?いや...」
「お願いだ!」
必死に頼むイリアルに負けた僕は一回だけだよと約束をつけ了解した。
イリアルは僕に近づけてきて、(チュッ)と軽く僕の唇にキスをした。
「ふふっ!今日一日で私のポイントかなり高まったんじゃないか?」
イリアルは笑顔でそう言う。
「まぁ?確かに?」
僕は照れながらイリアルに言う。
「そうか...婿に少し近づけたかな?」
イリアルは照れながら下を向く。
そんな会話をしながら僕らはドラゴンに乗りグランデル王国の王宮へと空を飛んだ。
「あー、でも、まだ僕はイリアルの婿になる気はないからね!ゆっくり二人のことをしって行きたいし僕のことを知って貰いたいから!」
「分かった!私はいくらでも待つぞ!ゆっくり知っていけば良いさ!私も悠真のこと、ゆっくり知っていくからな!」
ドラゴンの背に乗りイリアルとそんな会話をしながら僕らのデートは幕を閉じた。
今日のデートで僕の中のイリアルは、一緒にいて落ち着く存在になっていた。




